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2011年4月13日水曜日

パニックもそれはそれで理解であったのだと

 
 少し前に話題にした/なった、日本気象学会、理事長によるお知らせ*と、これを言論統制/事実の隠蔽だと解釈した人々がいたという騒動。

 ∧∧
(‥ )色々な情報ソースが欲しい、
\-   そうであるのにこれは情報統制だ、
     開示しても国民はパニックには
     ならないのに、なぜ制限するのか。

   (‥ )いや、この反応自体がすでにパニックだろ。


 あの文面を見て選択肢が断たれた、と断じてしまった時点でもう脱出経路を見失っている。もし、これが非常事態であったればもはや致命的。

 ∧∧
( ‥)それはすでに軽く
    パニックであると。

   ( ‥)我れ先に逃げ惑うだけが
       パニックじゃないぜや。
        あきらめもパニックだ。
 
 道を見失ったら、それは死に一歩近づいている。

 だけども、こうも考えられる。


   (‥ )あれらの反応もそれはそれで
    -   理解であったのだ、と。
 ∧∧
( ‥)理解ですか。

 政府と東電は嘘をついている。官僚は嘘をついている。さほど心配はないと言っている研究者は全部御用学者に違いない。全員ぐるだ。

 ∧∧
( ‥)ただの陰謀論ですけどね。

    (‥ )陰謀という仮説に
        データを合わせていく、
        あるいは陰謀という仮説に沿って
         データを解釈する。

 これはこれで理解ではある。それは確かにそうだ。

 ∧∧
( ‥)理解ねえ。

    (‥ )言い換えれば理解ってのは
        しょせんはそんなもんだ、
         そういうことだろ?

 日本で地震学が成立してからM8以上の地震はなかった。ゆえにM8以上の地震は想定する必要はない。

    (‥ )理解ではあるだろ?
 ∧∧
( ‥) でも地質学者はそれを遥かに
   - 越える規模の地震がある、km単位で
    内陸に入ってくる津波もある。それを
     知っていたし、言っていたじゃないですか。
   

 ああ、だけど、地質学も地質学が明らかにした事柄も、それは地震学ではないよな。

 ∧∧
( ‥)まあねえ。

    ( ‥)同じ地震という現象を扱っていても
        片方は破壊物理だし、片方は歴史科学である
 
 異なる学問、異なるアプローチ。まったく違う時間スケール、まるで違う方法論。片方は1000年、1万年を射程に収めてそれを扱えるが、もう片方はそうじゃない。

 ∧∧
( ‥)無視したんだ、とも言えますけどね

    (‥ )そりゃあ無視するんじゃないか?
        自分たちと違う世界とアプローチの
        事柄は理解できないし、無視する
        のは当たり前じゃないか。

 今もっている仮説に沿って説明し、仮説に沿って理解し解釈するのは当たり前であるし、それが理解ってやつなのだ。陰謀論も理解だよ。

 ∧∧
( ‥)陰謀論が理解ですか。

    ( ‥)そりゃあ理解だよ。
        質がいいとは言えないけどね。

 ∧∧
( ‥)あなたはそれを責めますか?

    (‥ )責めやしないさ。

 M8以上はない、という前提と仮説も、政府も東電も研究者も全部ぐるだ、という仮説と前提も理解も別に責めやしない。


    ( ‥)役に立つの? それ?
        とは聞くけどね。
 ∧∧
( ‥)役に立たないでしょう。

 M8以上うんぬんはまるっきり役立たなかった。

 陰謀論もそうだ。疑うのはいいが、では情報をどうチョイスしたらいいのか? という肝心なことにはまるっきり答えていない。

 ∧∧
( ‥)自分で計測すれば
    いいんでしょうけどね。

    (‥ )疑うだけでは自分の
        座標は分からん。

 パニックもそれはそれで理解ではあるが、役に立っているとは思えない。

 ∧∧
( ‥)どうすればいいんでしょうね?

    ( ‥)自分で調べればいいんじゃね?

 ∧∧
( ‥)それで確信を得られますかね?

    (‥ )確信を得ても無意味だね。
 
 確信した=現実を正しく/あるいは妥当に把握できている、ではない。

 ∧∧
( ‥)じゃあどうするんだよ、と
    聞かれるでしょうね。

    ( ‥)マスコミはいい加減、政府が本当のことを
        言っているか確信できない。ネットでは
        いい加減なことを言う自称研究者が根も葉もない
        ことを言っていて、ツイッターでは
         デマが拡散してる。そう嘆いていた人が
         いたな。

 しかも自分が正しいと確信したことが正しい保証があるわけでもない。

 ∧∧
( ‥)八方ふさがりに見えますけどね。

    (‥ )でもあれだ、これで
        ようやくスタート地点に
        立てたわけだ。

 科学は神学から派生した側面があるけども、こういう疑問はもう何世紀も前から課題にされていることでもある。今手にしている知識が妥当であると判断するには一体全体どうすればいいのか? という終わりなき永劫の懐疑。

 ∧∧
( ‥)昔なら神様や聖書の文章を
    基礎にできたでしょうけどね。

    ( ‥)真実と前提させたことから立論する。
        しかし、その真実とやらが妥当で
         あることをどう論証するのか?

 神が仮定でしかないことがばれたこの世界では、もうこういう論証は使えない。

 M8以上が起きないという前提は真ではなかった。真でない仮定に立った立論は意味がなかった。

 陰謀論は疑うことを推奨するが、では何をチョイスすれば良いのかまるっきり教えてくれない、そもそも使える議論でもないし、立論がすべからく真であるわけでもない。政府が嘘をついた=すべてが嘘である、ではないのだから、陰謀論はそもそも前提が真ではなかった。

 ∧∧
( ‥)どうすればいいんでしょうねえ。

    (‥ )データからいかに妥当な結論を
        つまりグラフを導くのか?
         この手の問題はいつもいつも
          ここへ帰還する。

 答えは検証しないと意味がなく、検証方法それ自体が妥当であることを示せないといけない。M8以上うんぬんは破壊されてしまったし、陰謀論は検証のしようがなく意味がない。

 ∧∧
( ‥)言い換えればそれでも、
    ”理解”できていたって
     ことであると。

    ( ‥)しかし理解は何の保証にもならない
        実際、その保証はこのたびの
        地震で破壊された。現実のテストは
        恐ろしいものだってことだ。

 検証方法それ自体の検証方法は、まあ省略するにしても、次のことは多分、言える。

 理解して満足しては駄目だ。それはもう破滅だ。

 分かったは駄目だ。それはもうすでに破綻している。

 例えばの話

    (‥ )自力では自分の本に間違いが
        見つけられなかった時、
        これはやばいと”確信”したのだけどもね。
        →*
 ∧∧
( ‥)そして間違いがありましたね
  -□ →*     

 間違いがない、なんてことは少なくとも無い。

 
    ( ‥)あるいはこうだ。理路整然とすべてを
        説明できるとしたら、それはすでに
         破綻していると見るべきだ。
 ∧∧
( ‥)説明しているすべての事柄が
    すべからく正しいわけでは
    ないですからねえ。

 すべてを説明できるとは、”気づいていないだけで、実は間違っている観察や報告”を説明している場合がある。間違っている事柄を”説明できてしまっている”というのは、たぶん致命的。

 ようするに、

 理解した、説明した、問題が見つからない、間違いない、分かった

 これらはすべからく破綻をはらんでいる。そんな状況に陥ったらもう一度リサーチしないといけない。おそらくどこかに穴がある。

 


  

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