昔、人から進められて読んだというか見るはめになったSFにこんなのがありました。はるか未来の銀河に広がった帝国の独裁者が、悪い遺伝子を排除しようという法律を制定した。そのくせこの独裁者の王朝は後に虚弱な皇帝を生み出した。
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( ‥)最初の法律は優生学をモチーフにしたんでしょうね。
(‥ )後のエピソードは、まあ近親婚が進んだ
王朝ではありがちな、、、というネタかなあ。
このSFのこのエピソード、かなりみょうちくりん。悪い遺伝子を法律的に排除しようというアイデア自体がそもそも非現実的で、そんなことをしたら我々全員が該当者になってしまう。
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( ‥)実際、近親婚で虚弱になっちゃう、ということ自体
結局そういうオチですよね。
(‥ )個人が持っている有害な遺伝子は、近親婚をすると
ホモ接合になって表に出る確率が増えるからねえ。
誰もがなにかしら有害な遺伝子を持っている。近親婚するとそれが表に出てくるし、だからこそ、有害なものを排除するってその発想はそもそもなにね? という突っ込みにつながる。
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( ‥)だから優生学って人道うんぬん以前に意味ないんでしょ?
(‥ )まあ、そういうことだろうねえ。
はるか未来の帝国で優生学が再出現するには、まじめに考えれば人類の遺伝に関する知識が今より駄目になっているってことが必要になるんだろうけど、、、、、、
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( ‥)でもこれは、単純に作者の人が知らないだけでは?
(‥ )まあ、たぶんそういうことなんだろうねえ。
だから人道とか倫理とか自由とか、そう言う理念で独裁者を皮肉ったわけかな。
しかし、理念でしか独裁者を否定できないというのはいささか痛いのではあるまいか?
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( ‥)でも、遺伝的な知識だけでは方法論は否定できても
目的自体は否定できないでしょ?
(‥ )理念も否定はできないよ。
その架空の独裁者だって、彼の道徳観からすればそれが正しいわけだし、彼の理念からすればまったく正当だろう。
そもそも理念は何かを正当化するための発明品なんだろうけども、理念それ自体は理念では正当化できないだろう。
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( ‥)でも人は否定する時も、肯定する時にも理念を使いますよね?
(‥ )使うが、理念が効果を持つ時は、
皆の利害を理念が代弁する時だけじゃねーか?
理念自体には何の意味も力もない。皆の利害を表現する手段として理念が代用される時にだけ、理念は力を持つが、結局のところ皆が支持したからといって理念それ自体が現実になるわけじゃないさね。