自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2016年8月2日火曜日
転倒した地球人は白黒保護を行う
遺伝的弱者保護はなぜ必要なのか? それは子孫繁栄をもたらすためである.進化とはどれだけ子孫を残せるかにある.つまり弱肉強食ではない.そして子孫を残すうえで何が有利かなにが不利になるのかはあらかじめ分からない.だから有害な効果をもたらす遺伝子の持ち主でも,それを保護することで人間は変化する環境の中で適応し,生き抜いてきた.つまり弱者保護とは遺伝的多様性を保持し,弱い人間が生き残るための生存戦略なのである.
...という見解があるが,これはどこから突っ込んで良いのかとまどうぐらい,間違いが多い.
例えば,進化は淘汰という結果論でしかない.だから進化は将来のことを考えて変異を蓄積したりはしない.
そもそも変異の蓄積は人間の生存戦略などではない.実際,それを行っているのは雌雄一対で生殖をおこなうという有性生殖であり,メンデル遺伝である.
さらにいえば,人間が仮に弱者保護で有害遺伝子を蓄積しようとしてもそれは無駄だ.
そもそも有性生殖とメンデル遺伝によって有害遺伝子が蓄積されるのは,有害遺伝子(多くの場合これは劣性である)が対にならないと発現しないことにある.このことは,みんな学校の授業で習ったであろう?
つまり,有害遺伝子は数が少ないからこそ保存されているのである.これを意図的に増やせば,発現の確率が倍々で増えてしまう.例えば2倍に増やせば2×2で4倍だし,10倍に増やせば発現の確率が一気に100倍まで跳ね上がる.
当然,発現すればそれは不利になって淘汰されて消えてしまう.つまり増やそうとすると,それが減ってしまう方向で淘汰が働くのである.だから有害遺伝子の意図的な蓄積などできないし,無理やりにそんなことをすればその負担が過大になってしまう.村のように小さな個体群だと絶滅さえ起こるだろう.
というわけで,冒頭の主張,人間の生存戦略は弱者保護による遺伝的多様性の保持と環境への適応力の維持だ,という説明は完全なたわごとだ.
だいたい,種に生存戦略なんてものはない.そんなこと,現実を見れば明らかであろう? 例えばアフリカ一部地域ではアルビノの人に魔的能力があると信じられている.このためにアルビノの人は殺されたり,売られたり,ばらばらにされたり,あるいは食われたりお守りにされている.人間の生存戦略は弱者保護である.これがまっかな嘘であることかように明白だ.
=>albino african cannibalism - Google 検索
∧∧
(‥ )でも反対にこれが成立する
\‐ 条件を考えてみよう
というのが本日のお題ですか
(‥ )生存戦略自体は正当化
できないけどね
生物にあるのは,行動を支配する遺伝子だけで,しかもそれにも当然変異がある.そうして行動の変異が淘汰されて現状,有利な行動が集団中に広まる.これは一見すると冒頭の言葉が言う,”生存戦略”のようだが,実際には違う.種が持つ生存戦略という言葉には,すべての個体が一律に同じ行動をプログラムされているという神様的発想が感じられるし,これは非自然的かつひどく固定的な世界観だ.
実際の生物は統一された意思も意図ももたないし,行動自体にも変異があって,それはいくらでも変貌するものである.生物は進化の産物なのだ.人間の生存戦略は弱者保護による遺伝的多様性の保持,などという人は,人間も生物もプログラムされた工業製品だと思っているってことだろう.
∧∧
( ‥)つまり生存戦略などという
非自然的な単語を放棄し
その代わり
有害遺伝子を積極的に
保護する変異が
有利になって集団中に
広まる条件を考えよ
と言いかえれば良い
(‥ )生物は機械ではなく
進化の産物なのだからな
さて? では有害遺伝子とはこの場合,どんなものか?
例えばこう考える.
肌の白い人は熱帯の強くて紫外線の多い日差しのもとでは不利だ.
一方,人間は太陽光を浴びることで一部ビタミンを作っている.これゆえ,肌の黒い人は高緯度の弱い日差しのもとでは不利になる.
∧∧
(‥ )高緯度では白い肌は有利になり
\‐ 低緯度では有害遺伝子となる
反対に
黒い肌は高緯度で有害となり
低緯度では有利となる
(‥ )まあだから高緯度の
人類は肌が白く
低緯度の人類は肌が黒い
わけなんだけどな
例えばここでこう考える.地球の地軸が横倒しであるとしよう.この場合,地球からみると太陽は1年間の間に,東から上がり,西へ沈みながら,天の南極から北極星まで南北を,忙しくいったりきたりすることになる.
例えばこのような地球にある日本から太陽の運行をみると
∧∧
(‥ )秋分の日を過ぎて
\‐ しばらくすると
太陽は地平線から上がらず
ずっと夜が続く
(‥ )春分の日の少し前に
地平線から
姿を現すようになる
それから
みるみるうちに高くなり
直上から猛烈な日差しが
照りつけるようになり
そこからさらに北へ進み
夏至のころには
北極星のあたりでずっと
沈まぬまま
太陽が大地を照らす
そこからは以上の逆だ.夏至に一日中大地を照らしていた太陽は再び南へ動き出し,そうして昼と夜が来るが,昼の日差しは熱帯と同じく強烈だ.だがそれもつかのま,太陽は南へ急激に移動し,日差しも紫外線も弱くなり,やがて夜が続く冬が来る.
つまり,地軸が横倒しになった地球では,どこでも北極になり,そして赤道にもなるのだ.
∧∧
( ‥)つまり地軸が横倒しになった
地球では1年の間に
白い肌が有利になったり
不利になったり
黒い肌が有利になったり
不利になったりするわけだ
(‥ )ここまで極端に短時間に
環境が変動する世界なら
黒い肌と白い肌が
同じ地域で両立しうる
さらにこう考えてみる.
実際の人間の肌の色は,グラデーションになっていて,白黒には分けられない.これは肌の色を支配する遺伝子の数が多いためらしい.
だが,もしもだ.人間の肌の色がたった1組の遺伝子で決まっていたらどうなるか? ようするにメンデル遺伝でいうエンドウ豆の緑と黄色の関係のような状態である.
∧∧
(‥ )白が劣性で黒が優性
\‐ 白黒のカップルからは
黒い子供が生まれるが
白黒カップル同士の
子供同士を掛け合わせると
黒3:白1で分離する
(‥ )こういう状態だと
夏の強烈な紫外線の中で
不利になっている
白い子供を守ったり
反対に冬の弱い光線で
ビタミンが欠乏した
黒い子供のために食事を
取り分けたり
そういうことをするように
なるかもな
もし日差しと紫外線の量が極端に変動しない世界,それは要するに我々の地球のことだが,そこではその場で不利になる遺伝子は単純に淘汰されてしまうだろう.そして不利になる相手に対して積極的な保護を加えることもないだろう.実際,我々の地球では保護するどころではない,白人は黒人を人間と認識せずに奴隷化したし,アフリカでは前述したように,アルビノの人が殺されたりお守りのように売られたりしているのである.
∧∧
( ‥)でも日差しと紫外線が
強烈に変動する
転倒した地球では
今は不利でも後で有利になる
白い子供を紫外線から守ったり
あるいは黒い子供用に
特別な食事を用意して守る
ことになるだろう
(‥ )もちろんこの場合は
肌の色を支配する遺伝子の
有様も地球人とは
違う設定にしているわけ
だけども
この条件なら
遺伝的に不利な弱者を
積極的に保護しようとする
行動が進化するかもね
もちろん,これが本当に成立するのかはもっと厳密に計算しなければいけない.もしかしたら地球の公転時間を長く設定する必要もあろう.だが以上の考察だけですくなくとも次のことは明白ではなかろうか?
進化は結果論なので,過去,実際に有利なことがあったからその行動が進化する
なれば,有害な遺伝子を持つ人間を積極的に保護する行動が進化するには,有害な遺伝子が目に見えて分かるようなものであることが必要だ.
さらに有害遺伝子の持ち主を保護した人には,かなり即座に保護による利益が得られなければならぬ.
つまるところ,環境が短時間で変動する世界でなければならぬだろう.
∧∧
(‥ )転倒した地球では
\‐ 有害遺伝子の保護という
行動が実際に進化するかも
しれない
(‥ )でもそれも生存戦略など
ではないのだ
単に保護行動が有利だから
そういう行動をする変異が
集団中に広まった
というだけの話だからな
だから条件が変われば,こういう保護活動はあっさりと放棄されてしまうはずである.実際,それが我々の地球ではなかったか? 地球人は生存戦略として遺伝的弱者を保護する性質を持つ,というたわごとが本当であったら,白人も黒人も,肌の色はもっと様々であったはずであろう?
∧∧
( ‥)でも白人も黒人も肌の色が
ほぼ固定されている
これはつまり
肌の色の弱者を
保護しなかった
あるいは保護しきれなかった
結果に他ならない
(‥ )転倒していない
地球の人類は
遺伝的弱者を
保護するようには
進化しなかったということさ
人間に保護の性質があるとしたら,それはもっと単純な動機だ.それはかつて,人類が苦しい環境に進出してしまったことに端を発しているという説がある.
∧∧
(‥ )お前ら人間は本来なら
\‐ 熱帯雨林の中で果物を食べて
生活するサルだったからな
(‥ )乾燥した草原に出て
これまでの食事を
取ることができなくなり
そういう苦しい過程で
どうも助け合いの行動を
進化させたみたい
なんだよね
チンパンジーも人間も,仲間を助けるが,チンパンジーは相手からこわれないと助けない.だが人間は自分から相手に”助けがいるか?”と手を差し伸べる特徴があるそうだ.
∧∧
( ‥)人間はおせっかいなサル
なのである
(‥ )それでも肌の色の固定を
妨げるほどの慈善行為は
不可能だったけどね
人間が遺伝的弱者を保護するのは多様性を高める生存戦略などという主張は,かようにまったく完全なたわごとである.人間は確かに助け合いの行動を進化させたが,それは遺伝的弱者を保護するには至らなかったし,そもそも助け合いの動機はそういうものではなかった.
それでもなお,人が助け合いをするおせっかいなサルであることは事実だ.
だからこうである,私たちが助け合いをするのは遺伝子に命令されているからだ,などというくだらない正当化など必要ない.一体,いつからお前たちは遺伝子を神とし,その神託を信じるようになったのか? そして神託が得られなければ助けることすら正当化できないのか?
助けたいなら助ければよい.望むがままを行え.
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