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2015年9月9日水曜日

体の隣で遊ぶ

 
 墓掃除のバイトをしていた時、仕事終わりに江の島の海へいくことがあった。
 
 ∧∧
(‥ )三浦半島の付け根は
\‐  路線が錯綜してて
    江の島を通って帰ることが
    できたからね
 
  (‥ )墓掃除の需要があるのは
      お盆前やお盆あけだ
      台風のシーズンであることも
      しばしばあった
 
 江の島は河口があるので、その海は砂と堆積した泥の世界。台風前後の海は荒れ果てて結構な眺めである。殺風景な曇天の空、煙る海岸。無謀な一部のサーファーと彼らを救うために待機しているライフセイバーの人たち以外にはほとんど誰もいない、果てしなくかすむ灰色と息も詰まる湿気。蒸し暑く、それでいて冷たい風が吹き付ける、げんなりするような光景。

 それが印象的で、台風の後、江の島へいくことがしばしばあった。そしてあれは夜中に東京を直撃した台風だ。本当は夜に見てみたかったが止めた。台風の時の波は圧倒的で、あれには恐怖しか感じない。夜に見るのはあまりにも無謀。過ぎ去った午後の空は明るく、波がまだ高い江の島の海をサーファーたちがさっそく泳いでいた。
 
 そうして警官と思わしき2人組みがサーファーに何か言っている。
 
 サーフィンを止めるように言っているのかと思ったが違う。何かを頼んでいるようだ。彼らはサーファーがいるとそのつど何か話しかけて、そうして海岸沿いに歩きつつ、鎌倉方面へ去っていった。何百メートル、そして何キロも歩いていって、その姿が点になっていく。
 
 そして空を飛び、周回するヘリコプター
 
 ∧∧  ああ誰かやられたんだ
( ‥)
 ‐( ‥)そういうことだね
 
 帰って調べてみると、夜、台風の波を見物にきていて、一人流されたそうだ。
 
 ∧∧
(‥ )要するに警察の人は
\‐  体が見つかったら
    教えてねって言っていた
    わけだね
 
  (‥ )翌日だったかな?
      鎌倉側に
      上がったみたいだな
 
 
 死体の隣で遊ぶ人がいると人は驚くが、実際には普通の光景である。
 
 いや、日常の隣に容易な死があると言うべきか。
 
 

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