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2013年8月24日土曜日

さあ、受け取れ、君を肯定する偽りの理論を

 
 日付も変わり、散歩に出たのはいいけども、こんなに降ったっけ? と違和感を持つほどに雨上がりの道はびしょ濡れで、冷えた分、大気は猛烈な湿度で渦巻き、森に入れば、通り雨のごとく水滴が始終垂れてくる有様。
 
 ∧∧ てっしゅー
( ‥)
 ‐( ‐ ‐)うおー
 
 さて
 
 以前、こんな人がいた。
 
 彼は家が嫌いだった。彼に言わせると彼の父親は暴君であり、母親はエゴの怪物だった。
 
 ∧∧
( ‥)でも実家住まいだと
 
  ( ‥)なぜ家を出なかったの
    ‐□ だろうな?
 
 何も出来ないくせに制作の現場に一枚噛みたい人は驚くほどいる。

 これはネットで見かけた言葉だけども、これを見て読んで、真っ先に思い出したのは彼だった。
 
 ∧∧
(‥ )絵も文章もいまいちで
\‐   僕なんかがやっても、と
     言って具体的な仕事を
     避ける割には
     企画の口出しは積極的に
     するんですよね
 
  (‥ )ご本人は参謀のつもり
      なんだけど、
      提案は理想論だけでな
      主張はもっともだから
      最初は聞いているけども
      だんだんみんなの目が
      険しくなるのよね
 
 彼は、マルクス主義者でもあった。いや、こう言うと不正確かもしれない。資本論を読んだ事はないが、マルクス主義が語る理想論に傾倒していた...
 
 ∧∧
( ‥)とっ、言うよりも
 
  (‥ )単にね、
      彼は社会が
      憎かったのだよね
 
 もしかしたら、もっと単純な話で、家庭が、親が憎かっただけなのかもしれない。でも行き着く先は同じだったのだろう。こんな性格、姿勢で社会を切り抜いていく事などできやしない。そうなれば彼が自分の家と家族を越えて、社会を憎むのは必然。
 
 ∧∧
( ‥)彼にとってマルクス主義は
    憎い現実世界にとって変わる
    ユートピアを与えるもので
    あったのだと?
 
  ( ‥)アメリカは親父の
    ‐□ ようだから嫌いだ、
      と言っていたし
      彼にとって資本主義は
      競争どころか
      自立を強制する
      悪魔の手先に
      見えたみたいだよ。
 
  彼の資本主義嫌いはなんのこっちゃない。現実がいやだ、というだけの話だったのだ。
 
 ∧∧
( ‥)金が無いなら無いなりに
    金がないなら金集めを
    時間が無いなら無いなりに
    時が無いなら時を集めよう
 
  ( ‥)しかし彼はそれが
    ‐□ 出来なかった。
      現実を制御できない彼は
      必然、恨みと挫折と
      怒りと不満と、
      そしてマルクス主義が
      保証する、かなわぬ
      夢に成り果てたのさね
 
 そうねえ、そういう意味では、現実に不満があるなら自分を変えろ、という主張はまったく正しい。
 
 ∧∧
( ‥)そういうことを言うと
    現実の欠点を変えねばならない
    はずだのに、自分を変えては
    現実の問題は永久に
    解決できないではないか!
    そう怒る人がいますよね?
 
  (‥ )それは現実を変える方法を
      すでに手にしている、
      そのことが前提になって
      いるよね。
 
 だが、そうでなかったら、どうする?
 
 いや、なお悪いことがある。
 
 現実を変える方法、とは、現実を妥当に記述している理論、ということなのだけども...
 
 ∧∧
( ‥)現実を記述する理論
    それ自体が
    自分が望む変化と道を
    許していない場合がある
    この時、どうするか?
 
  (‥ )二つしかね、
      道がないんだよ。
 
:理論が禁じている以上、自分を変えて理論が許す選択肢で打って出るしかない
 
:現実を記述する理論ではなく、自分にとって都合の良い偽りの理論を採用し、間違っているのは現実であると世間を呪いながら夢にすがる。つまるところ文句と口先だけで何もしない。
 
 ∧∧
(‥ )彼が選んだのは二番目の道
\‐   でしたか
 
  (‥ )そしてそのまま業界から
      消えたけどもね。
 
 まあ、そんなに悪い人生ではないだろう。親が死ねば遺産を手に出来るし、家も手に入る。実際、もうひとつの道を選んでがむしゃらに走り続け、社会を切り抜き続けても、疲れる時は疲れるし、死ぬ時は死ぬのだ。
 
 彼は確実な幸せを選んだ。世の理不尽を嘆くことで悦に至る道を選んだ。それだけの話で悪いことではない。
 
 そして思うに、そんな連中はいっぱいいるんである、特に、頭が良いと自画自賛、自負するが、本当の意味でのエリート、つまり国家官僚になれなかった連中。学歴はご立派だが実際には落ちこぼれである連中の中には、これがいっぱいいるのだ。
 
 ∧∧
(‥ )...あまり言いたくないですけど
\‐  あの人、韓国とか中国に
    強い親近感を持ってましたよね
 
  (‥ )単純にあの文化のここが
      好きだ、とかなら
      いいんだけどね。
      中国はおもろい国だし。
      だけどさ、
      そうじゃないんだよな。
 
 彼は家が憎かった。社会が憎かった。自分をほめてくれない日本が嫌いだった。

 だから社会と日本を否定する人がいる。これだけでも、ずいぶんと救われていたのだと思う。少なくとも、反日を語る彼の表情と言葉はそんな風だった。思うに、自分の独りよがりの復讐のため、反日に大喜びする人間はこれまたいっぱいいるんだろう。ただ、それは現実からの個人的な逃げでしかなかった、それだけの話であった。

 
 さあ、だから受け取れ、君を肯定してくれる偽りの理論を。さすれば幸せの世界に羽ばたける白き大きな翼を授からん。
 
 
 ∧∧
( ‥)つまりやるべきは
 
  (‥ )この世の幸せ、
      そのことごとく
      すべて滅ぼすべし。
 
 夢を殺し尽くさねば世界は破滅するだろう。
 
 

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