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2013年8月12日月曜日

自然数の比というイデアはどうすれば良いのか

 
 物理学は科学の中でもプラトン主義の影響を色濃く残した特異な分野である。
 
 そんなようなことを言った人がいる。
 
 まあ、実際のところは、
 
 ∧∧
( ‥)別にプラトン主義を
    受け継いだわけじゃ
    ないですよね
 
  (‥ )単純に、世界の背景には
      数学的な実体が隠れている
      そういう世界観が
      研究でも発見の上でも
      有効だったから、
      そういう考えが
      そのままだった。
      それだけの話だろうな。
 
 というか、これはプラトン主義でもなんでもなくて、むしろピタゴラス主義と呼んだ方がいいんだろう。
 
 ∧∧
(‥ )プラトンさんは
\‐  ピタゴラス学派の影響を
    強く受けてますからね
 
  (‥ )世界の背景には
      単純な数の比が隠れている
      自然科学において、これは
      長きに渡って有効で、
      今でも有効な考えなのだ。
 
 あまりにも自然な考えなので、伝統であるかどうかすらもよく分からない。
 
 ∧∧
( ‥)物理学、化学、生物学でも
    これは有効であった。
 
  (‥ )ただ、状況が複雑に
      なるに従って、
      ”きれいな数の比”という
      考えがあまり有効で
      なくなるんだよね。
 
 生物学だと、たぶんメンデル遺伝の発見が”自然の背景にはきれいな数の比があるはずだ”という信念が大きく貢献した例だと思う。だが、それ以外、それ以後では、さてどうだろうか?
 
 ∧∧
(‥ )そこで現れるのが
\‐  統計学ですね
 
  (‥ )それを考えると、
      ボルツマン、ダーウィン、
      フィッシャーという人々は
      科学史と人類史の転換点
      だと思うのだけど。
 
 言い換えると、知の歴史においてきわめて新しいこの考え、せいぜい2世紀しか歴史がない、は大部分の知識人には理解不可能なものだ。進化学を全然理解できない人は、まあその意味では自然だし、頭の出来が普通であるとも言える。
 
 というか、たぶん、人類の脳が認識できない考えだと言った方がいいかもしれない。
 
 ∧∧
(‥ )あなたたちお猿さんは
\‐  認識、定義、論理、
    無矛盾であれば、
    それは真理である。
    そう考える
    傾向がありますよね。
 
  (‥ )そこに数が侵入したのだ
 
 数を発明し、数を認識した時。リンゴも小石もパンもすべて共通の数で数えられる、それを知った時に、思い込んだのではないか?
 
 世界を数え上げる数は世界の普遍であり、世界の背景にある究極的な存在は数ではないか? と
 
 ∧∧
( ‥)文系、と呼ばれる人も
    そうであると?
 
  (‥ )数は認識だ。
      認識、定義、論理、真理
      この流れは文系であろうが
      理系であろうが人間なら
      ほぼ共通だろ?
      数が認識なら、数は
      以上のような理解、つまり
      ”真理という理解”に容易に
      組み込むことができるよね
 
 数を組み込むか、そうしないか、それだけの話で、その背後には認識、定義、論理、真理という流れがある。そう考えれば数を振りかざそうが、そうしなかろうが、結果は同じではないか?
 
 しかも、全員、誰もが、数えられるのだ。
 
 ∧∧
( ‥)数えられる以上、
    ”真理の理解”に対する
    数の侵入を
    人は容易に許す。
 
  ( ‥)たださ、悲しいことにさ
    ‐□ みんなが言う数って
      これは実は数そのものじゃ
      ないんだよね。
 
 みんなが言う”数”とは、これは実は自然数だよね?
 
 数全体のほんのわずかな領域でしかない。
 
 ∧∧
( ‥)そこに致命的な
    誤謬の余地があると
 
  (‥ )おそらくね。
 
 あるサイエンスライターさんはこんなことを言った。
 
 系統学も分岐学も真理ではない。
 
 もし、すべての素粒子なり原子のベクトルが分かれば、
 
 もし、そのベクトルをすべて演算することが出来れば、
 
 量子コンピューターがそれを可能にすれば、
 
 世界のすべてをシミュレーションできる
 
 未来も過去もコンピューター上で再現できる
 
 絶滅した生物も、化石として残らなかった生物も再現できる
 
 この時、古生物学も進化学も真の科学になるであろう
 
 ∧∧
( ‥)たわ言だと
 
  ( ‥)まずこんな考え役に立たん
 
 そんなコンピューターどこにもないからだ
 
 まあ、それは置いておこう。
 
 こんな考えは役にたたん。なぜならすべての原子のベクトルを正確に測る機械なんてどこにもないからだ。
 
 まあ、これも置くとしよう。
 
 こんな考えは役に立たん。なぜなら、仮に地球を構成するすべての原子のベクトルを測定しても、太陽や月や、太陽系内部の天体をすべて把握しないと、地球の進化は正確に再現できないからだ。隕石ひとつの落下で大量絶滅が起こり、太陽の活動が気候に影響を与えるわけである。再現するには太陽系全体を把握しなければいけない。
 
 まあ、これも置くとしよう。
 
 こんな考えが役に立つ訳がない。仮に太陽と太陽系のすべての原子、核融合もあるからすべての素粒子のベクトルを正確に測定し、それを演算できる機械があっても、まるで話にならない。仮にひとつの宇宙線が地球に突入してきて、それが生物の遺伝子に当たって変異を起こしたとする。
 
 ∧∧
( ‥)宇宙的な規模で加速された
    アルファ粒子や電子やら
    これらは太陽系外からくる
 
  (‥ )観測できるすべての
      範囲の宇宙を再現しないと
      計算は確実に狂う。
 
 いや、これも脇に置くとしよう。
 
 それでもなお、この話はおかしい。
 
 なにがおかしいか?
 
 得られた数値が自然数じゃなかったらどうするつもりだい?
 
 ∧∧
( ‥)無理数だったらどうする?
    無限に割り切れることがない、
    数の比では示す事ができない
    無理数が入ってきたら
    どうするつもりか?
 
  (‥ )というか確実に
      無理数が入ってくるだろ
 
 物理定数とか、循環小数になってるかい?
 
 物体のベクトルが自然数に必ずなるという保証はどこにある?
 
 無限に続く数を便宜的に途中で切って計算して、それを大規模に演算した時、”正確な値”とやらが出るのは演算の何回目までかね?
 
 まあ、以上、これ自体もどうでも良い話なのだ。コンピューター上で世界を正確に再現できるだなんて、そんなことを考えてシミュレーションをする研究者なんて、そもそもいない。
 
 ∧∧
( ‥)それよりもむしろ
    注目したいのは
 
  (‥ )人間はさ、自然数しか
      理解していないんだよ
      これはそういうことだよね
      注目すべきはここだ。
 
 そうなのだ、たった130年前、数学者クロネッカーはπは実在しないと言ったし、無限の無限を研究したカントールの業績をつぶそうとしたのだった。
 
 =>hilihiliのhilihili: πは存在しない byクロネッカー 1882
 
 ∧∧
( ‥)たぶん、クロネッカーさんの
    世界には自然数しかなかった
    そういうことですね
 
  (‥ )クロネッカーが
      おかしいとかなんとか
      じゃなくて、これは
      人間の脳の問題だよ
      おそらくはね。
 
 世界の背後には自然数の比がある。
 
 ∧∧
( ‥)だが、数には無理数がある
 
  ( ‥)世界の背景に自然数がある
    ‐□ それは確かに有効な
      考え方だったのだ。
      事実、それで大きな成果を
      上げてきたわけだよね。
 
 だが、数には無理数があり、物理定数が循環小数になった、という話も特に聞かない。
 
 ∧∧
( ‥)この世界とは何か?
 
  (‥ )なんかさ、これを考えると
      ギリシャ時代から
      連綿と問題が引き続いて
      いるのな。
 
 世界の背景には自然数の比が隠されている。この信念、これ自体は有効であったのに、この状況は一体全体なんだろうか?
 
 
 ∧∧
( ‥)ピタゴラス主義、
    統計学、
    自然数と無理数
 
  ( ‥)やべえな、
    ‐□ これどうすればいいんだ?
 
 一体全体、これをどうまとめれば良いものか。
 
  
 
 以下へ続く=>hilihiliのhilihili: 私たちは自然数主義者でした
 
 

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