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2012年6月27日水曜日

あまり高く売りつけなさんな



 夢を見た。どこかのオフィスのような事務所のような、しかし倉庫のような。書類だらけの机が並び、ひしめき、壁はすべて鉄製のラックで覆われ、所狭しと書類が突っ込まれていて、働く人がいる気配がするが、しかし誰もいなかった。人が働く時間と誰もいない時間を一緒に投影したような妙な世界。しかし、触ってみると、書類はすべて陶器であり、固く、不滅ですべすべとしていた。
 
 
  ( ‥)起きたら、前頭葉の
      あたりがぴりぴりする
 
 ∧∧
( ‥)徹夜で1枚、絵を描いた
    それでこの有様ですか
 
 やれやれ、体が年齢に浸食されていく
 
 ∧∧
( ‥)陶器の書類。情報の保存には
    理想的な媒体ですけど
    実用的ではありませんね
 
  (‥ )500年後、人類が存続
      していても、僕らの時代の
      記録はほとんど残って
      いないだろうな
 
 電子媒体やCDでさえ、いやむしろ、固有の読み取り機械に依存するゆえにこそ、時の流れとメディアの変化には対抗できない。今の記録はほとんど全部消え果てて、ひとつの書棚を埋める程度の本が残るかどうかすら怪しいもんだ。
  
 ∧∧
( ‥)紙の本が電子よりも保存に
    おいては信頼できますけど
    それにも限界ありますからね
 
 ( ‥)例えばだ、500年どころか
   –□ 30年後でさえ、
      おいちゃんが書いた本は
      残っていまい。
 
 ∧∧
( ‥)平均寿命がつきるまで本を
    書き続けたら、30年後でも
    新刊があるはずですけどね
 
  ( ‥)今までに出版した本は
    –□ その時にはみんな
       消えているさね
 
 
 本ってのは読まれて、そしてゴミ箱行き。それで終わりだ。
 
 ∧∧
( ‥)それでもなお
 
  (‥ )情報は貨幣のように
      流通し、受け継がれて
      残るのだ。
 
 今、僕らが知っている最新知識は30年は遅れた骨董品だ。例えばグールドを見て進化が理解できたと得意げに言う人は多いが、あんなもの、当時からしてまともに受け入れられなかった代物で、今となっては雲散霧消して果てた。悲しい夢の末路である。
 
 ∧∧
( ‥)しかし、そんなことすら
     知らぬ人たちがいると
 
   ( ‥)やっかいないもんさ
     -□ 最新知識のつもりで
       一般書籍を手にしても
       それはすでに骨董品
       なのさね
 
 どこぞの掲示板の連中を見て衝撃を受けたように、地殻のすぐ下はマグマでどろどろに融けていると思っている人がいまだにいる(<=これは100年前に否定された知識)、マントルが岩石であり、固体であることも知らないし、固体が流れる、ということも知らない。氷河が融けると地殻が上昇すること、しかし地殻が上昇すると同時に海水の量が増えるので水位が上がるが、しかし一方、今度は海底が沈下すること、海水準の高さと変動は、これらの作用を考慮せねばならぬこと、これを知らない。
 
 鳥の進化や脊椎動物の上陸がいかに起きたか、人類がどう進化したのか、過去を推論する方法が確立した現在においては、きっとこうだったに違いない、とか、このように進化したはずだ、とかそういうお話先行で歴史を語る時代は前世紀に終わった。今は解析し、計算して歴史を算出する時代。それを拒否した人々はいまやトンデモに成り果てた。だけどもそういうことすら知らぬ人もいる。
 
 
 ∧∧
( ‥)伝えるのだと
 
   (‥ )例え100年、30年前の
       知識でも、伝えるべきは
       伝えるさ。
 
 ああ、悲し哀れ。最新知識を知ったつもりでも、その時すでに僕らは時代遅れの骨董品。知識も理解も穴だらけのぽんこつで、次の世代にこんなできそこないを伝達するわけにはいかぬ。
 
 僕ら自身はまったく無価値なのだ。自分に価値があると思うと、まあ、地を這いずるありさまになる。
 
 ∧∧
(‥ )自分自身が骨董品でも
\–   伝えるもの自体は
    妥当でなければいけない
    という矛盾
 
  (‥ )ああ、だけどな、現金輸送車
      のドライバーであれば、
      あるいは偽金やメッキされた
      コインの識別方法さえ分かるの
      ならば、最低限の義務は果たせる
      
 
 
 僕らの時代は終わっても、バトンを受け継がせることぐらいはできる。
 
 ∧∧
( ‥)ただし
 
  (‥ )そこには僕らはいないのさ
      必要なのはバトンだからな
 
 そうなのだ。自分を大事に思うのは良いけども、自分なんて他人からすればまったく無価値なものでしかない(自分にとっての他人がどんな価値かを見てみるが良い)。
 
 お願い!! 私を、僕を見て、と願ったとき、そこにあるのは無価値な通貨を高く売りつけようとする無様な姿だけである。
 
 
 

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