自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2016年5月16日月曜日
夢における最大の危機とは何か?
ひさしぶりにひどい夢を見た。
ここはホラー風のゲームです、という言葉があったようにも思う。
確かにホラーである。だが困ったことに、バッドエンドしかないようだった。いわゆるクソゲー?
それに登場人物の全部がなにかどこかしら異形で狂っている。
主人公がいた。自分ではない。その彼がこれまでのことを画像付きで説明してくれた。
ここでこのキャラに話しかけると殺されるのです。
ここでこういうことをすると別ルートに分岐するが、やっぱり殺されるのです。
殺されるのです。
あきれたことに、殺されるづくし、出口が無い無いづくしであった。
彼が見せてくれた画像は色々なものだった。ある場所で頭のおかしな警官にあることを言うと、ゴンドラの場面に分岐する。その時の画像は、主人公がゴンドラに乗って手詰まりの場面。あるいはさらに別ルートで手に入れた死体の頭を抱えてゴンドラの中でぼーっとしている姿を見せられた。
ゴンドラには幽霊が出るらしく、腕が無数に現れる。死体の頭を抱えていた場合、死体が無数の手を出して幽霊に応戦してくれる。
あるいは死体がふくれあがって布団のようになって、ゴンドラの中を半分満たし、主人公が死体と一緒に仲睦まじく、埋もれるようにして寝ている場面もあった。
それにしてもなんで主人公は貧相で眼鏡をかけたイギリス人なんだろう?
いずれにせよ、どうにもならないな、これ。
そう思っていると周囲から雲があらわれた。つむじ風のようなもの、あるいは入道雲のようなもの。
彼らと会話できるとイベントが良い方向へ向かうそうです。主人公がそう教えてくれるが。いやその、雲と話すってどうするの?
適当なでたらめ言語を話していると、どういうわけか効き目があった。雲が掻き消え、代わりにぞろぞろおかしな連中が現れた。大小様々、形も色々。人間そのものな連中もいれば、人より小さく、反対に人より大きく、ぞんざいなデザインの連中もいる。そいつらがめいめい勝手にしゃべりだし、そうして自分にも話しかけてくる。
いや、これイベント明らかに悪化してるよね?
もうめちゃくちゃだ。あるキャラに話しかけられると死ぬイベント発動、あるキャラに叩かれると死ぬ発動。あるキャラと関わりを持つと死ぬ。だから逃げる、しかしこちらが無視して逃げても追いかけてきて、強制的にイベントが発生する。
こんなものどうするんじゃい? と思っているのだが、自分はどういうわけか死なない。いや、死なないというよりはイベントが発生して、うお! 死んだー! と思っても、その瞬間に設定が適当になってイベント発生、でもイベント中断、ゲームを続行しまーす、になるらしい。
おかしな女もいた。とにかく他のキャラを見境無く殺すのだ。なんか熱線を放つらしい機械のようなものを背負ってこちらも狙ってくる。
キャラ全員がもう好き勝手だ。言って見れば新宿前のような過大な人ごみのすべてが異常なキャラで、互いに殺し合ったり、あるいは追いかけたり逃げたり、めちゃくちゃだ。勝手にどこかの誰かと戦争している迷彩服、というか全身緑の男もいれば、砲塔の無い戦車が走り回り、あるいはピカソやミロが描くような珍妙なキャラが燕尾服を着てかけ回る。
ともあれ、あの熱線だかなんだかを放つ女をどうにかして殺すべきだ。あれがどうも一番強いらしい。例えば背後に回って卑怯にも不意打ちを食らわしてやろう。そう思って回り込むのだが、どこへいってもおかしな連中にからまれる。
例えば売り出し中のお笑い芸人ですと派手なたすきを身につけ、マネージャーと共に名刺を配っている変人。これの名刺を受け取ると死ぬイベント発生なのだ。しかもしつこい、押し売り、ほぼ強制。
あるいはTシャツを着た小太りのおっさんが絡んでくる。これがうっとうしいことに、絡まれると、こいつをこちらが殺すイベントが強制発生する。
あるいは体の一部を欠損した怪物が恨み言をこぼしながら人を襲うために歩いている。
おおよかった。俺は足が無い代わりに足をもらった足無し男だ! 俺を連れて行け、というとそやつが途中まで運んでくれる。
そうかと思うと黒服で派手な化粧をした、しかしどこか男顔な女が口に含んだレモン水をあたりかまわず吹きかけてくる。そうして口の水が無くなると手に持った水差しで補給だ。
ともあれ、背後に回るために道に入ると、そこはいつのまにか木造の建物で、あちこちで宴会がもよおされている。
なにやらトイレに入りたいな、と思っていると手洗いがあり、しめたと思って扉を開けると、そこはトイレのようだが、畳は敷いてあるし、宴会の膳も並んでいるし、おまけに奥の個室から氷をかじるような、こもったボリボリガリガリという音がした。
これ、手洗いじゃないよね?
そこから慌てて飛び出て、さらに進むと先ほどのTシャツ男がまた現れた。例の接触するとこちらが強制的に相手を殺さなくてはいけないイベントを発生させる奴だ。全く同じように絡んでくる。そうしてこちらが相手の拳銃を奪う。おかしなものでそれは銀玉鉄砲なのだが、それを三発撃つ。するとTシャツ男は恨みがましい眼をしてこちらを見上げ…、どういうわけか身長は自分より低く、160センチ程度なのだが、妙にスタートレックのカーク船長のような顔をしている...そしてそいつがこう言うのだ。
なんで僕を殺すんですか・・・?
私だって殺したくはない。なぜ、あなたは私に自分を殺させるのですか?
自分はそう答え、眼に涙があふれる。
とっここで、急激に覚醒が始まった。これは夢だ、という自覚が起こる、現実の肉体の感覚が夢の世界に入り込んでくる。
あっ、やばい、俺は夢を見て現実の布団の中でも泣いてしまっているのか? と慌てたが、涙など流していないことに気がついた。
ああ、そうか、これは全部茶番だ。こいつを殺して悲しい、という感情も、流れた涙も、これは全部作られたものだった。すべてがまったく自分が作り出した幻。感情さえもまがいものなのだ。
そう気づいた瞬間。目の前の男を半分にしてやった。厳密に言うと胸部から上を削除した。もう夢が終わるから人体の切断面はよく見えなかった。多分、実際に知らないから詳細な夢の状態でも再現は難しかっただろう。それに夢から覚める途中で、風景は線画になっていた。それでも、切断した男の胸部とその断面に脊椎や肺らしきものがあるのは分かった。どうでもいいのだ。こいつらはすべてただの設定だ。
そう思うと一瞬だ。例の女も夢から目覚める前に始末しなければならぬ。そう思って走り出す必要もなく、影のようになってしまった女を頭部から股間までまっ二つにした。周りにいた人影はもう動かない。しん、として、流れたしずくのような形をした影になってこちらを注視しているらしい。
茶番は終わりだ。もうお仕舞い。そう言うと、眼が醒めた。
∧∧
(‥ )でもこの長い夢の
\− 最大の危機って
手洗いに入ったことだよね
(‥ )あっぶねーよな
あのボリボリ言う
きもい音は
警告だったんだろうな
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