自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2016年2月1日月曜日
まるで箱船がカレバンのビーチボールのように
現実の歴史において、人はアポロ計画で月へ人間を送り込むことに成功した。
これはそれとは違う世界線の物語。
人類が宇宙へ行こうとしたその時、地球に宇宙人がやってくる。
天へいくのではなく、天がやってきた。
宇宙人の技術力、科学力は圧倒的であった。人間ではまったく歯が立たない。
宇宙人は人類を征服した。しかしそれは侵略ではなかった。少なくとも暴力を従うものでも、洗脳を従うものでもない。圧倒的な力を背景とした無言の圧力による忠告とでも言えば良いのか。
宇宙人の統治によって地球から国家は消え、戦争は無くなり、人類は黄金時代を迎える。
なぜ宇宙人たちはこんなことをするのか?
実は宇宙人はより上位の存在から派遣された存在だった。
人類が次の進化の階梯を上がることを手助けするための、いわば助産婦。
神にも等しい上位存在では人間に直接働きかけることはできない。だが宇宙人なら神と人の間を取り持つ事ができる。
宇宙人は神の御使い、つまり天使。そして人類は進化して神になる。だが御使いである天使たちは神にはなれない。
天使たちはこれをはるか太古より、様々な種族相手に幾度も行ってきた。そしていつか自分たち自身がこれを模倣するために、そのたびに観察を続けるのだ。
今回もそれが起きる。
まず一人の子供に変化が起きる。それが連鎖反応的にすべての子供に広がる。大人には影響しない。つまり人類という種が一気に分断され、異なる二つの種族になってしまう。
親である旧人類にはもはや子供がいない。絶望だけだ。
一方、新人類になった子供たちはいわば超能力者だ。そして個体を失う。人体としての実体は残しているが、いわばテレパシーのようなものによって、全体でひとつとしてつながっている。もう、服を着る事は無い。髭も髪も伸ばし放題だ。その姿は無個性な顔をして一心に踊りふける裸の野蛮人であり、あるいは裸のまま樹々の間で立ち尽くす人間のような何かであった。
そして子供たちはついに神の元へ旅立つ。残された人類も地球も滅びて消える。天使は太陽系を去る。
∧∧
(‥ )これが傑作SFとされる
\‐ 「幼年期の終わり」
あなたがこれを読んだのは
中学生でしたよね?
どう思いました?
(‥ )これヨハネの黙示録の
ぱくりだろ?
それにこれって
進化論じゃないよね?
それに超能力...
なーんだ
SFは科学だとか
言ってるけど
ただのやばい
非科学集団じゃんよ
だったな
今風に言えば、なんだこのトンデモ? であった。
∧∧
(‥ )考えてみれば
\‐ SFの古典である
火星人が地球に攻めて来る
「宇宙戦争」だって
進化論ぐだぐだですからね
(‥ )ウェルズ頑張ってるけどね
あのめくるめく未来世界は
すばらしいけど
進化の理解は
駄目だめなんよなあ
どうもSFっていうのは分類、定義、演繹で成り立っているから、似非科学描写はうまいのだけども、生物学レベルになるとぼろが出るらしい。
言って見れば、科学は理解できていないが、方程式を覚えれば解けるから物理学はおいしい、みたいな受験生思考と言えば良いか。
こういうSFに対する自分の感想は、後に、ダーウィニズムは学会で否定されている! 今や進化論は百家争鳴! 今西進化論は断続平衡説の走りだった!! と本気で信じ込んでいるSFマニアを見た時に確定した。
∧∧
(‥ )あなたがSFとSFマニアを
\‐ プラトン主義者と呼ぶのは
そのせいだよね
(‥ )もっと平たく言えば
悪い意味で受験生思考
というべきだろうなあ
方程式を覚えれば良い。
彼らはそう考える。だから方程式にあるものは理解できているように振る舞えるし、方程式から外れたものをトンデモと叩く。
彼らは方程式を真理と考えているのだ。
中には、いや、方程式は仮説なのだ、そう笑ってうそぶく人間もいるけども、それだって言われたことをおうむ返しにしているだけである。これは方程式ではないという方程式が入力されているにすぎぬ。
実際の科学とははるかにインチキ臭いもので、経験とデータからえいやっ! と状況を単純化する方程式や理論を導きだして、さらにそれを現実の中でがんがん振り回して、どうも壊れないから取りあえずはこれで良いっぽい...と運営しているものだ。
∧∧
(‥ )それを
\‐ 方程式を覚えれば良い
演繹すれば答えは絶対だとか
そういう風に
受け取られては困りますね
(‥ )硬直した思考
いわば方程式至上主義
そして暗記と論理
SFのこういう
悪いイメージはあれだ
クラスで一人はいるような
鼻持ちならない上に
成績が微妙に伸び悩む
秀才って感じだよね
それを考えるに、エヴァンゲリオンは幼年期のぱくりだ、とかすべての創作は幼年期に収束するとか、そういう感想、いささか食傷気味な上に的を外しておる。
∧∧
(‥ )エヴェンゲリオンと
\‐ 幼年期の共通項って
”皆がひとつになりました”
だけだからね
(‥ )しかも幼年期だと
個体の肉体は残ってるけど
エヴァンゲリオンだと
オレンジジュースになって
一緒になるからな
ずいぶん違うよな
しかしこれもまた手がかりである。共通項はひとつなのに、その共通項に過剰な重み付けをして、異なるものをひとつに分類し、それを系統と誤認する。
∧∧
( ‥)これって人間の認識論
だよね?
(‥ )陸上脊椎動物は魚から
進化したけども
人間は
魚と獣を分けて考える
人間は猿の一種だけども
猿と人を区別する
鳥は恐竜で爬虫類だけど
区別して認識してしまう
人間の分類は
内部が分からない
ブラックボックスなんだが
人間自身はこれにまったく
無自覚なのだ
無自覚だからたったひとつの共通項で、エヴァンゲリオンと幼年期を同じだと認識してしまうのである。
根拠がブラックボックスなのに、それを疑わない!!
そしてしかし、この分類こそが、進化論の理解をはばむ最大の障害なのであった。
∧∧
(‥ )エヴァンゲリオンと幼年期を
\‐ 同じと認識するSFマニアが
進化を理解できず
トンデモ進化論をテーマにした
幼年期を傑作とみなし
その一方でSFは科学だといい
ダーウィニズムは終わったと
事実と正反対のことを本気で
信じ込む
(‥ )はい
全部一つにつながりました
すべては、脳内の分類思考で起きている出来事で、夢まぼろしでしかなかったのである。まるで箱船がカレバンのビーチボールの中の出来事でしかなかったように。
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