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2012年8月25日土曜日

夢の物語

 
 
 夢を見た
 
 時々、夢に出てくる駅があった。都会の中にある、路面電車の小さな、しかしにぎやかな駅。何度か見た場所だ。ただいつもとくらべて駅と町並みは広く、駅前の小さな古本屋も妙に間延びした感じで大きく、しかし何もかも手抜きでもしたかのように希薄になっていた。入ってみたがめぼしい本は何一つなかった。
 
 夢を見た
 
 修学旅行のような感じだが、どう考えても自分がいてよい場所ではなかった。おかしなことに旅館から外に出ると、もう部屋には戻れなかった。業務用の小さなエレベーターしかなく、しかも外からは反応しないのである。ああ、しかしちょうど良い、置いてきた荷物には大した物は何も入っていないはずだ。そもそも荷物なんて持っていただろうか? 財布はポケットに入っていて、そのまま帰ろうと歩き出した。針葉樹がまばらに生える高原のような場所なのに、どういうわけか海辺でもあって、夕焼けの中、小さな工場のような開けた港の施設で、ばかでかい何かが解体されて吊るされているのを見た。誰かが耳元で、あれはクジラだ、と言ったが、誰もいないはずだ。それに、それはクジラではなく、明らかに魚だった。それもクジラウオではないだろうか? 標本にされてぺしゃんこになったクジラウオとよく似ていた。違うのはそれが5メートルはあることで、肉をあらかた削ぎ落とされて解体されて吊るされて風にゆられ、もともと水気が多いせいなのか、あるいは塩をなすり付けられたせいのか、夕闇の中でぼたぼた水をとめどもなく垂らしていた。
 
 夢を見た
 
 遠い田舎に引っ越していたが、田舎とはいえそこは駅前でにぎやかだった。冬は寒いと人が言う。丘から降りる途中に神社と墓地と保育園があって、ごちゃまぜになっていた。帰った家は暗く閑散として空っぽで、思う。おかしい、オレは本をどこにやったのだ?
 
 
 ∧∧
( ‥)なんか悪夢っぽいですけど
    珍しいですね、夢を見る
    なんて
 
  ( ‥)立て続けに見るなんて
      めったにないんだが
 
 ∧∧
( ‥)疲れてます?
 
  (‥ )もう1週間近く前の話
      プリンキピアのせいかもね
 
 事実、夢を見た、いや、寝ているのに明らかに考えていた、ニュートンが何を言っているのだろうと
 
 ∧∧
( ‥)起きてみると
 
  ( ‥)やっぱり分かりません
    –□ でしたとさ
       物語だったら分かる
       展開なんだがな、
       そうはいかん現実ね
 
 ∧∧
( ‥)でも基本は難しくは
    ないのでしょ?
 
  (‥ )該当する箇所は
      高校レベルかなあ
      出来の良い学生なら
      すぐ分かるはずだけども
      自分はそうじゃなかった
 
 起きてから考えて、そして分かった。
 
 思うに夢は役に立たない
 
 ∧∧
( ‥)そりゃあそうでしょうよ
 
  ( ‥)夢のようにはいかぬ
      というより、夢まで
      浸食されるとは
      業が深い
 

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