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2016年7月27日水曜日

無駄な理論武装よりは経済を

 
 ∧∧
(‥ )相模原の障害者施設で
\−  知的障害者19人が
    元職員によって刃物で
    殺されて
 
  (‥ )犯人が衆議院議長宛に
      したためた手紙とやらに
      第三次世界大戦とか
      フリーメーソンとか
      書かれているから
      なんかこう
      あれな人っぽいな
 
 
 さてもさても、障害者を排除しよう。これをかつて積極的に押し進めたのは優生学であったし、あるいはそれを体現したのがナチスであった。
 
 ∧∧
(‥ )あるいはそれに
\−  反対するかのように
    社会的弱者を守るのは
    遺伝的多様性を高めて
    進化の可能性を大きくし
    繁栄の道を選んだのが
    人間の生存戦略だから
    というお話がまたぞろ
    ネットで闊歩し始め…
 
  (‥ )ああ例のYahoo知恵袋の
      トンデモ話な
 
 =>弱者を抹殺する。不謹慎な質問ですが、疑問に思ったのでお答え頂けれ... - Yahoo!知恵袋
 
 
 進化は先読みして進むものではない。だから将来役立つからといって、いつ何のために役立つか分からない変異を生物がせっせと蓄積するなんてことはない。もちろん人間がそんなことをするはずもない。だからこの解答、明らかに間違いである。
 
 
 ∧∧
( ‥)だけど人間は
    未来予測できるせいか
    なんでも目的論で解釈する
    お前ら猿の悪い癖だ
 
  ( ‥)おまけに変異の蓄積を
    −/ 担当するのは弱者保護
       などではなくて
       メンデル遺伝だからな
 
 これはかつての優生学信奉者やナチスも理解していないことだった。
 
 彼らはこう考えたのである。有害な遺伝子をすべて排除してしまえば人類は健康で素晴らしい存在になるはずだ。それには障害者を断種、あるいは抹殺してしまえば良いと。
 
 ∧∧
( ‥)だが実は有害な効果を及ぼす
    遺伝子は全人類が持っている
    劣悪遺伝子排除なんて
    言い出したら
    それは全人類を抹殺することに
    等しい
 
  (‥ )これを理解させる
      一番簡単な説明は
      あれだよな
 
 1万人に1人の奇病がある。その人は父母の遺伝子をそれぞれ半分わけてもらい、それが対になって生まれたものである。ごく単純な理解として、メンデル遺伝では遺伝子は対になることで発現するわけだから1万人に1人の奇病とは100人に1人が持っている遺伝子である(100×100=1万)。
 
 しかるに1万人に1人の奇病、というのは100種類では効かない。ずっと多い。だとしたらあらゆる人が何かしら病気の遺伝子を持っているということになる。
 
 ∧∧
(‥ )さらにいうと死産の確率を
\−  踏まえて考えると
    発現すれば個体を
    死に至らしめる遺伝子や変異も
    人はまず確実に
    持っているのである
 
  (‥ )ナチスや優生学が
      意味を失ったのはこのせい
      なんだよな
 
 全人類誰もが有害どころか死に至るような致死性の遺伝子や変異を抱えているのだ。劣悪遺伝子を排除しようだの、人類を優秀な遺伝子だけにしようだの無理であること明白である。
 
 *これは以前したように小説「銀河英雄伝説」に出てくる劣悪遺伝子排除法が時代錯誤であるのみならず、作者も読者もこういう事実を知らない、ということの証明でもある=>hilihiliのhilihili: 劣悪遺伝子の排除とは無茶な設定です
 
 かように、メンデル遺伝が持つ冷酷非常な現実は、優生学やナチスが思い描いた美しい夢をあっさりと粉砕した。
 
 ∧∧
( ‥)しかしこれは一方
    有害な効果を持つ遺伝子は
    絶えず変異で生じる一方
    対になることで発現して
    排除され続けており
    その均衡で現状の割合が
    決定されていることも
    示していたのである
 
  (‥ )だから仮に人間が
      弱者保護とやらで
      有害遺伝子をさらに
      貯金しようとしても
      意味ないんだよな
 
 例えば100人に1人が持っている有害遺伝子(発現すれば1万人に1人の奇病)をせっせと貯金して10人に1人まで増やしたとする。
 
 ∧∧
(‥ )10×10=100人に1人
\−  が発現してしまう
    つまり発現の割合が
    一気に100倍に
    跳ね上がって
    変異は消え去ってしまい
    貯金はあっさりと
    消費されてしまいます
 
  (‥ )さらにだ
      村みたいに小さな集団だと
      致命的だろうな
      村だとどうしても身内で
      交配が起こる
      つまりコピーされた
      同じ変異が対になりやすい
      次々に発現して
      人が消えてしまって
      場合によっては
      個体群が全滅する
      だから弱者保護による
      遺伝多様性生存戦略なんて
      進化しないだろうね
 
 
 知りたい人は遺伝的荷重という言葉を調べればよかろう。
 
 これゆえ、弱者保護による有害遺伝子の貯金、というのは意味がない。

 そもそも変異という収入と、対になって発現し消滅するという支出が均衡状態になることで、変異の蓄積という貯金があるのだ。人間がそこに意図的にどぼどぼつぎ込んでも、それは対になる確率が増えて、どんどん出て行ってしまうだけである。
 
 
 ∧∧
(‥ )弱者保護による遺伝的多様性の
\−  確保が人間の生存戦略だ
    という意見は残念ながら
    これが分かっていない
 
  (‥ )だからたわ言なんだよな
      弱者保護は人間の生存戦略
      だって言ってる連中は
      ナチスと変わらんよ
      どっちも人間を
      一律にプログラムされた
      機械のように考えてる
      片方は遺伝が命じるように
      人に優しくしようといい
      片方は遺伝が命じるように
      遺伝子をすばらしくしよう
      と申し述べている
      対立するように見えて
      根っこは同じだ
 
 
 メンデル遺伝による変異の集積と弱者保護をごちゃまぜにするからこういう破綻が起こるのだ。
 
 人は人を助ける。それだけで十分だろうに。
 
 ∧∧
( ‥)お前ら猿共は
    無駄に理論武装したがる
 
  (‥ )なんでだろうな?
     セックスする時は
     こんな理論武装しないけどな
 
 もしかしたら、理論武装するってことは、内心実のところ、人助けが嫌で嫌でしょうがないからかもしれない。
 
 ∧∧
(‥ )でもむしろ問題なのは
\−  経済でしょうなあ
 
  (‥ )いつもここで思い出すのは
      あの話だな
 
 7世紀、爆発的に勢力を拡大し迫り来るイスラームの軍勢。そしてもはや風前の灯の東ローマ帝国。帝国はこの後、11世紀に再び大国として返り咲くのだが、当時は滅亡寸前だった。
 
 そこで皇帝は自力でパンを確保できない人々を都城から退去させたという。
 
 ∧∧
( ‥)人間の相互扶助はあくまでも
    今、生き残るための行動
    生き残りのためとあれば
    片っ端から削るのが必然
 
  (‥ )俺なんかはこういう場合
      明らかに削られる側
      なんでな
      それを見据えて生き残りを
      考えねばならぬわけよ
      経済だいじだよー
 
 というわけでだ、人間の弱者保護は遺伝的多様性を高めるためとか、そんなトンデモ与太話を信じるより先に、まずは経済のことを考えねばならぬ。
 
 そもそも理念で腹はふくれないし、腹がふくらまねば人を助ける余裕もなし。
 
  
     
 

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