自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2016年7月20日水曜日
戦えガリエヌス
「ヒストリア・アウグスタ」
ローマ皇帝群像
キリスト暦4世紀後半に書かれたとされる古代の史書。
∧∧
( ‥)その分冊三巻を
読み終わりましたと
( ‥)なんかガリエヌス帝が
−/ 悪く書かれてるのなあ
キリスト暦235年にアレクサンデル・セウェルス帝が殺されて、いわゆる50年に及ぶ軍人皇帝時代に突入したローマ。ガリエヌス帝の在位は253年から268年。軍人皇帝時代とかミリタリー・アナーキー(軍事無政府状態)などと後代に言われることになる時代になってすでに20年。この時までに登位した皇帝は11人あまり。ここまでにおける平均在位は2年を切っている。
そしてガリエヌス帝は父親のウァレリアヌス帝と同時に皇帝になっていたけども
∧∧
(‥ )お父さんは260年
\− ササン朝ペルシャに敗北
捕囚になってしまう
(‥ )ローマ皇帝群像において
負けたお父さんは
旧家の名門であったせいか
良く書かれているけど
残された息子の
ガリエヌス帝は
”日夜酒と放蕩に過ごし
世界をおよそ20人の
僭称帝たちによって
破壊させるにまかせた”
pp280 と記述されている
*僭称帝:皇帝捕囚によってあっちこっちで有力者が皇帝を宣言したり、そこまでいかないが自立しようとしたり、反乱を起こしたりと大混乱。ヒストリア・アウグスタではこれを誇張して20人の僭称帝と言っている(ちなみに20人と言っているのに、この本はいい加減なもので、紹介する僭称帝が後で30人に増えるのである)
20人もの反乱者を押さえきれなかったガリエヌス帝は愚昧だ! と批判するヒストリア・アウグスタだが、どうにもなにやら話がおかしい。
本の訳者が、
”「ヒストリア・アウグスタ」ではガリエヌスは国事をおろそかにしていたと書かれているけども、実際には即位以来、ライン、ドナウ方面で帝国防衛に奔走しているよ”
と注釈していることもさることながら...
∧∧
(‥ )なんかさ
\− 本の記述自体がおかしいよね
ガリエヌスは快楽と欲望に
身を任せたと書かれている
その一方では
東方で反乱を起こした相手に
旗下の将軍を送り込んだり
ガリエヌス帝ご本人は
ガリアで反乱を起こした
相手に戦争を長く続けた
と書いてあるんだよね
なんだろうね? これ?
実働してるじゃん
つじつまが合わないよね?
(‥ )訳者の脚注とかを見ると
「ヒストリア・アウグスタ」
前後で矛盾したことが
結構平気で
書かれてるらしいな
例えば、侵入した蛮族相手にガリエヌス帝が将軍を派遣したこと、侵入したゴート人たちが抵抗にあって進路を変えて荒し回ったこと、こうした国家の災いにガリエヌス帝は心を動かされなかった...、と書かれている次の行で、ゴート人達がガリエヌス帝に撃破されたという記述が出てくる(pp276)
∧∧
( ‥)言ってることが
めちゃくちゃ
やがな
(‥ )なんかそういう本らしいよ
ヒストリア・アウグスタ、訳者による注釈を見ると、困ったことに他の文献からの引用を意図的にゆがめている箇所すら幾つもあるし、実在が確認できない人物による批評や論評、引用がごろごろ出てきよる。
だからこの本を読むだけでも、つまり他の文献を見るまでもなく、前後の矛盾や不整合からすれば、ボロクソに書かれていることと裏腹に、ガリエヌス帝は普通にまともな皇帝なんじゃないの? と思わせられる。
∧∧
(‥ )実際、現在の史家からは
\− ガリエアヌス帝は父親である
ウァレリアヌス帝捕囚で
空中分解しかかった帝国を
必死で防衛した皇帝
と見なされている
みたいですね
(‥ )では古代の史家たちによる
不評はなにゆえか?
どうも
元老院議員を軍隊勤務と
軍隊の役職から
閉め出したことが原因で
ガリエヌス帝は
ぼろくそに書かれた
と述べている本が
あるんだよな
なんでどうしてそうなるのかは良く理解できないが、他の資料を読むと、どうもそんなことが書かれている。
∧∧
(‥ )いずれにせよこれって
\− 怖いよね
資料を残し記述する者達が
意図的に
あるいは主観的な価値観で
熱心に
しかもご本人は
善意でもって
物事をゆがめて伝えて
しまうっていうね
(‥ )現在のマスコミも
同じことをやってるからな
実際、現在のマスコミが
書き記したことから
未来人が今の日本を
再現したら
独裁者アベ・シンゾーに
よる暗黒時代ってことに
なるかもだからな
∧∧
( ‥)記述には歪みがあるから
歪みをどう補正するのかが
大事ということですか
( ‥)それにしても
−/ 軍事の役職から
閉め出されることが
どうしてそこまで
不評だったんだろうね?
軍事の役職から元老院議員を閉め出す(ガリエヌス勅令)。これは4世紀後半の史家の記述にあるものだそうだが、困ったことに見つかった碑文資料と整合しないのだそうである。
∧∧
( ‥)何が不評だったのか以前に
どんな勅令だったのかが
そもそも問題だと
( ‥)「軍人皇帝時代の研究」
−/ という本があってだな
これを読んでみるか
*追記:ちなみにどうもガリエヌス勅令は存在しなかったようである=>hilihiliのhilihili: ああ、これは今の我々がしていることだ
ブログ アーカイブ
-
▼
2016
(661)
-
▼
7月
(54)
- ピーマンの好き嫌いで命のやり取りを行う
- 夢見る人間は他人を過大評価する仮説
- 2016年7月30日 2:00 気温30度 湿度42%
- 後ろ向き発言
- 夢は崩壊するその瞬間に大量の価値を放出する
- 2016年7月29日の青空とムシヒキアブ
- 観客席でやじっていた人間がマウンドに降りる理由は謎
- 正しさに固執するとは不毛な計算である
- 無貌の神に耐えられなかった人はロボットであることを望んだ
- 無駄な理論武装よりは経済を
- 日本は駄目だユートピア論はただのラノベですね それも最悪の痛い意味で
- 昆虫を愛でる人間が思想統制とは
- ユートピア主義者は愚痴まで厚化粧で飾りよる
- 僕が考えた最強の政治家を望む人は品種改良を理解できていない
- ぽけもん号
- 正しいことでは筋が通らない
- 民主制とは死合いでなければならぬのだ
- 外れこそがデフォルト、基底状態
- ああ、これは今の我々がしていることだ
- 戦えガリエヌス
- うまい絵のピカソ回答は生涯地を這う
- サイエンスライターの仕事は終わりました 解散 解散
- お前の否定は逃げかそれとも発見か?
- 確かに40代はすでに時代遅れのモデルになっていた
- 創作の世界史
- 論理的な人間は他人の話を聞かない
- 漫画は位置情報でふやけている
- 漫画を圧縮すれば4分の1
- すでに蚊帳の外という可能性
- これは絶対に甘柿なのになぜ皆は食べないのか? という問い
- リテラシーなるもの滅すべし
- 棄権できるっていいことよ
- せめて華麗なる失敗を
- 戦争も軍事も政治ですよね
- 日和見で心変わりすることこそが演算
- 直上の太陽は猛烈
- 民主制に自由で挑もうなど笑止
- マニアックだとじり貧な航路
- 投票せずとも構わぬ なにもかも自由でそれこそが演算
- 投票? そんな時に考える必要はねえ
- 真の民主制論者は侵犯する思想犯罪者
- これが本当の民主主義者は格好つけ過ぎ
- 人は論理という+−×÷に魔力を見いだしている
- 出てけってことはすでに支配者がいるってことだよね
- 正しさとは必ず間違いの道
- 独裁を指向しているから独裁者批判
- 徹夜明けの企画会議のような...
- 7月4日17時の夕立予測
- 7月3日の夕暮れと暑い日々
- 過労死もできない国 こじらせた君
- 自由往来の帝国は崩壊し、そしてまた戻ってきた
- 生活ぶった切り
- 民主制とは死ぬことと見つけたり
- 人を模造しながら再現していないものの倫理とは?
-
▼
7月
(54)