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2019年12月1日日曜日

昭和の知識人は愛玩動物でしかなかった

 
 1980年代に世に出て、爆発的な人気となった小説、銀河英雄伝説。
 
 巨大ではあるが非効率な帝国と当初の新進気鋭を失った同盟(共和国)がえんえんと戦争を続ける世界。そんな最中、帝国に英雄が現れた。

 天才的な軍人である英雄は帝位を簒奪、自ら皇帝となって同盟に戦いを挑んでくる。そして同盟は敗北した。

 同盟にも英雄がいた。むしろ帝国の英雄より強かった。しかし英雄の天才をいかんなく発揮できる独裁制に対して、同盟が持つ民主制は非効率であり、英雄を法が縛り、国を守り切ることができなかった...
 
 ∧∧
(‥ )という物語だったから
\−  読者から
    民主制はくそだと分かった
    独裁制万歳!!
    という手紙が来て
    作者が頭を抱えたとか
    言われてるけど
 
  (‥ )そんな作者に対して
      そもそもあんたが
      小説の中で
      民主制の長所として
      選挙民が自己責任を
      取れるから...という
      根性論しか
      提示してないからだろ!
      と批判する人もいるな
 
 ∧∧
(‥ )なしてこうなってしまうん?
\−
 
  (‥ )その方が物語として
      面白いからだべ
 
 天才の軍人が独裁権を握って有頂天に攻めてくる。それに対していくらでも対抗策を打てたはずだが、よく考えずに大統領(同盟議長)を選んだばっかりに後手に回り、悲劇の最終回へ向かっていく。
 
 ∧∧
( ‥)ああ、あの時
    こうしていれば...
 
  (‥ )そういう心の葛藤を
      読者に生み出すもの
      それが物語よ
 
 このように銀河英雄伝説の欠点、説明不足とされるものは、悲劇の必然性として十分説明される。
 
 ∧∧
(‥ )しかし
\−  それだけではないだろう
 
  (‥ )あの小説は
      冷戦期の作品でな
      ついでにいうと
      2009ー2012年の
      政権交代時代以前の
      作品でもある
 
 冷戦期、あるいは昭和の知識人や文化人は政治家をただただ批判すればよかった。当時、知識人や文化人は冷戦と戦う政府に飼われた愛玩動物であった。

 政府の動機は単純である。政府を批判する知識人という人種をこうしてわざわざ飼っている、そんなことができる我々は民主政府です。
 
 ∧∧
(‥ )そういう風に飼育されていた
\−  冷戦期や昭和の知識人は
    なんら具体的なことを
    言う必要がなかったのである
 
  (‥ )銀河英雄伝説の民主制に
      中身がないのって
      物語としての動機以前に
      そういう理由もあるよね
 
 知識人や文化人の中身のなさぶりが露呈したのは、2009ー2012年までにおける政権交代であった。あそこで分かったのは、文句ばかり言われていた自民党は政治をしており、文句ばかり言っていた野党と知識人は何にもできないという冷酷な事実であった。
 
 ∧∧
(‥ )でも自民党の政治って
\−  ぱっとしない地味な政策を
    妥協しながら
    こつこつやってた
    だけなんだけどね
 
  (‥ )でもそれが野党と
      知識人にはできなかったし
      必要だとも
      思っていなかった
 
 そして銀河英雄伝説にはこんな場面、どこにもないのである。
 
  
   

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