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2019年12月13日金曜日

セレモニーとは根回しの一種である

 
 Vtuberというものが世に出て3年。最初のキズナアイ1人から始まったその数は今や数千人にまで膨れ上がり、当然、様々なトラブルが起きるようになった。
 
 ∧∧
( ‥)そりゃあ新規事業は
    初期は手探りで零細で
    収入も少なく不安定
    だからな
 
  ( ‥)それとVtuberは
    −/ ネットの特性上
      自分で発信できるから
      自分の不安定さを直接
      消費者に
      お届けしてしまう
      これは不安要因だよね
      夜桜たま騒動も
      そういうものだな
 
 事務所に対する不満を直接、消費者に配信してしまうことはトラブルの元であった。
 
 ファンは事情も知らぬまま、無条件にアイドルの味方になって事務所を弾劾するし、そうなると事務所も同僚アイドルも態度を硬化させるだろう。
 
 ∧∧
(‥ )仮に話し合いの余地があっても
\−  トラブルを表立たせたために
    提携先やコラボ先や
    取引相手に悪影響を及ぼすはず
    当然、同僚Vtuberにも
    大きな迷惑をかけるはず
 
  (‥ )妥協できたはずのことでも
      こうなるともう無理だ
      全部壊れてしまう
      夜桜たま騒動も
      そういうものだったろうね
 
 人間根回しが大事だよ。こんなこと、社会人なら誰でも知っている。
 
 いや、そうでもないな。社会人でも下っ端は会社の悪口を言っていれば良いし、社会人でなければ会社が悪い、社会が悪いと言っていればよかった。
 
 悪というものがこの世にあって、自分が認められないのはそのせいであり、我こそ悪と戦う光の勇者である。中二病というものは一部の痛い人間の特権ではなく、実のところ普遍的な現象なのであった。
 
 なんにせよ、Vtuber夜桜たまの配信から始まった騒動は、彼女の契約解除という結果で終わった。
 
 ∧∧
(‥ )そしてファンは残された
\−  同僚Vtuberアイドル部の配信を
    荒らしまくったのでございます
 
 (‥ )たまちゃんそういう配信は
     ダメだよと苦言を呈した
     花京院ちえりに噛みつき
     ちえりを擁護した
     カルロピノに罵声を浴びせ
     私もほぼ同意見だと述べた
     神楽すずたちを悪く言う
 
 なるほどね、なにいってもこれはダメだわ。当然のことを言うと後ろから刺したと言い、それを擁護すると、お前も裏切り者かという。なるほどなるほど、夜桜たまの配信は悪手であった。ファンに向けて直接不満を配信すると、こういう事態を引き起こし、本来なら友好的であるはずの同僚でも友好的ではいられなくなる。

 総大将であるばーちゃるがファンをモンペと言ったり、事務所がことさらファンを無視するような姿勢を示すのも、こりゃ当然だろう。
 
 ∧∧
(‥ )と...思っていたら
\−  アイドル部に後から加入した
    個人Vtuberメリーミルクさんが
    契約解除されて去っていった
    夜桜たまさんたちにむけて
    たむけの絵と言葉と
    エンディングを配信したら
    これがなんというか
    非常に好評だったらしく
 
  (‥ )...なんだよ??
     つまり
     みんなが望んでいたのは
     お葬式だったのかい?
 
 お葬式ではキツすぎるから、もっと穏便に言うと、お別れのセレモニーが必要だったということらしい。
 
 ∧∧
( ‥)夜桜たまのファンは
    夜桜たまが帰ってくることは
    もうないと
    とっくに理解していたわけか
 
  ( ‥)んー そうだなあ
    −/ 確かにそう考えると
       整合的ではある
 
 
 例えば夜桜たまに本当にいて欲しかったら、ファンドを作り、資金を集め、イラストレーターと3D処理ができる人間を雇い、がわをつくり、機材を貸し、そうやってみんなで彼女に配信を続けさせたはず。
 
 ∧∧
(‥ )でも実際のファンは
\−  この騒動をだしに荒らしするか
    夜桜たまさんありがとう
    とさよならするだけであった
 
  (‥ )人間楽なことを好むし
      カロリー消費を嫌うし
      金なんか出さないし
      だからだと思っていたが
      それだけではなかったか
 
 もちろん、人間は生物である以上、余計なカロリー消費を極力嫌う。即物的に言うと動くことと金を使うことを極端に嫌う。だからファンとは言っても金は出さないし、見ているだけだし、騒動をだしに荒らしをしても、それは救済ではなく、ストレス解消であって、本来守るべき夜桜たまにはなんの利益も与えない。肝心な夜桜たまは、ファンにも見捨てられてただ消えゆくのみ。
 
 ∧∧
(‥ )そういう即物的な打算で
\−  行動している一方で
    だがしかし
    夜桜たまがあのような配信を
    した以上
    彼女が帰ってくることは
    もうないとみんな理解して
    いたのであると
    なんだよ社会的にあの配信は
    悪手ですって最初から
    分かってたのか?
 
  (‥ )人間ってやっかいだな
      いやまあ知ってはいたよ?
      人間の心と意識は
      脳が計算する
      打算の影でしかない
      そういうことは
      知ってはいたけどさ...
 
 人間の心と意識は、存在物ではない。人間の魂に実体などないのだ。
 
 あるのは脳であって、脳がはじきだした計算と打算。
 
 心と意識は打算の影でしかない。

 しかも困ったことに、心とは打算の影でありながら、打算そのものの形をしていない。
 
 ∧∧
( ‥)打算を巧妙に隠した
    自分をも騙す
    きれいな嘘
    それが心という影
 
  ( ‥)そんなことは知っては
    −/ いたけども
       まさかここまで
       露骨とはね...
 
 人間の心は打算の影。しかし人の心は打算の本質を隠すように振る舞う。打算の影でありながら、打算そのものを隠そうと偽りの形を見せる。それが心であった。
 
 だからその人が本心から言っている言葉であっても、その人が心の底から信じている言葉であっても、それは信用してはいけないのである。本人自身も知らない打算がその奥にある。信じる心。それ自体が嘘、偽りだ。
 
 ∧∧
(‥ )とはいえしかし
\−  まさかね
    全員、夜桜たまさんが
    帰ってこないことを
    理解していたとはね
 
  (‥ )だから
     本当に欲しかったものは
     夜桜たまを送り出す
     セレモニーだったとはな
     正直驚きだ
 
 
 ああ、しかし考えてみれば確かにそうではあった。人がいなくなる時、人はセレモニーをするのである。根回しが大事であると同時に、セレモニーもまた大事だった。考えてみればセレモニーとは根回しの一種だ。
 
 なるほど、どうりでこだわるわけだ。
 
 確かに、根回しをおこたった結果、去っていく人であっても、それでもその人に対する別れのセレモニーは必要ではあった。あまりにもファンが騒動を起こして、それすらできないほど状況が悪くなってしまったが。しかしそのくせ、こうしてセレモニー開催の余地をなくしたファン自身がセレモニーを望んでいたとは。これはまた、矛盾で滑稽で、そして悲劇的な話ではなかったか。
 
 
 ∧∧
(‥ )...できればもう少し
\−  素直に言っていただかないと
    これわかりませんぞ
 
  (‥ )まあその
      本人たち自身が
      分かってないからな
 
 
       

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