自己紹介

イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック

2022年4月12日火曜日

マリウポリの台地を見よ おそらく、まだ踏みとどまっている

  
 都市マリウポリ(Mariupol)は町のど真ん中に蛇行して流れる川がある。4月10日。その河口にロシアのメディアが入った。
 
 ∧∧
( ‥)とうとう台地から
    河口まで降りたか
    ロシア軍
    よく進撃できたな
 
  ( ‥)西の大通りから
    −/ そのまま市街地中心へ
       突入して
       市役所を制覇
       そこからさらに東へ進み
       ついに台地を降りた
       なかなかにやりよる
 
 失態続きで馬鹿にされまくりではあるが、さすがユーラシア最強の陸軍国。むりやりでも、なんでも、ロシア軍はここまでやりとげた。
 
 町を守備するウクライナ軍はどうやら三つに分断されているらしい。北部の工場。東岸の製鉄所。そして西岸の台地の一部、それぞれに部隊がたてこもっている。

 北部は状況がよく分からない。それらしい動画があったが、場所の同定ができなかった。

 東岸は状況がほとんど進んでいない。ロシア軍が東岸市街地の北で西へと動く行動を示したが、それが橋頭堡を確保するようなものであったのか、ウクライナ軍に迫る結果をもたらしたのか? それはまだ分からない。
 
 ∧∧
(‥ )進捗あったのは西岸で
\−  衛星画像で見る
    戦火分布からすると
    ウクライナ軍は
    三方を包囲され
    台地から
    追い落とされそうな
    感じだけど
    実際どうかね?
 
  (‥ )11日にロシアの
      メディアが
      ドローンで空撮してな
 
 
 その画像を地図と照らし合わせるとこうなる。
 

 
 ∧∧
(‥ )ふむ 河口から
\−  850mほど西へいった
    海岸での空撮ですか
    見えているのは
    西側で
    マリウポリの駅方向
    その向こうに
    戦火があるね
    これは衛星画像には
    なかったものだね
 
  (‥ )戦火がある
      つまりそこには
      ウクライナ軍が
      いるんだよ
 
 当たり前だが、ロシア軍は危険な場所にメディアを入れない。メディアが入ったとは、そこは安全な場所。つまりマリウポリの河口から1kmぐらいまではロシア軍が制圧した。このことがわかる。

 しかし言い換えれば、そこから西側、マリウポリの駅とその大通りから西。おそらくは台地も含めて、その領域は今もウクライナ軍の制御下にある。そう解釈できる。実際、戦火は台地上にある病院からも上がっている。
 
 以上を踏まえて西岸の状況を地図にすると、こう。



 
 さて、こういう地図では地形の高低が分かりにくい。
 
 地形から状況を理解すると、まず、マリウポリの町は台地にある。西岸市街地は周辺を蛇行する川とその河川敷に囲まれている。さらに、台地には侵食で出来た谷がいくつもある。
 
 ∧∧
( ‥)僕らは軍人ではないけど
    こういう地形の厳しさは
    理解できるよね
 
  (‥ )ここは面倒くさい地形だよ
      動き回るのは大変だ
 
 地形は人間の行動を絶対的に規制する。これは訓練された軍人だって同じことだ。
 
 googleを見るとマリウポリの台地を一望できるすばらしい画像があった。そこから東を見た画像はこれ。



 
 オレンジに色塗りしたのが、ロシア軍が制圧した領域(Russian Territory)。

 見れば理解できようが、台地は奥(東)へ進むにつれて低くなり、ややなだらかに河口へ降りる(*実際にはそれでもかなりきつい傾斜や段丘がある)。

 町の中心と市役所は画面の左にある。つまり、そこを取ったロシア軍はそのまま東へ進み、台地を降りたわけだ。
 
 そして、戦火があった場所からすると、11日におけるロシア軍の進出は以上までであろうこともわかる。台地を降りたロシア軍は次にここから西へ進んでくるのだろう。
 
 一方、11日、ウクライナ軍はロシア軍が戦闘車両を隠していた街区を攻撃して、幾つかの車両を破壊した。画像に添付した場所がそこ。
 
 ここは確実にロシア軍の領域であることがわかる。そして反対に、ウクライナ軍の攻撃がそこまで届くことも理解できよう。
 
 
 以上に続き、西を向いた画像はこれ。



 手前にある白い建物は病院で、これは11日の動画で燃えていたものだ。奥にあるのはSportkompleks(多分 sport complexの意味で総合スポーツ施設)というもので、このあたりが台地の最高点であるように見える。
 
 ∧∧
(‥ )背後は壁になる集合住宅
\−  周囲は侵食された谷
    さらに木々が生えた公園に
    囲まれている
    人の動きも車両の動きも
    制限されるから
    防御するには
    なかなかによさげな
    場所ですなあ
 
  (‥ )ここにウ軍がいるか
      どうかは知らんけどな
      防衛するに
      良さげな地形であることは
      理解できるよね
 
 画像のずっと奥には、わかりにくいが台地の西を縁取る大きな侵食谷がある。戦火の分布からすると、現在、ロシア軍はこの谷を抜けようとしているらしい。そしてウクライナ軍の反撃にあっている。
 
 *この谷のもう一つ向こうにも侵食谷がある。そこで4月7日。ウ軍のBTR-4が、その機関砲でロ軍のT-72を損傷させた。画像に添付したのはそれ。この地域では、10日にウ軍の迫撃砲によってロ軍の車両が破壊されている。
 
 ∧∧
(‥ )要するに
\−  ウ軍は健闘し
    有利な場所に
    今も陣取っているわけだ
 
  (‥ )もちろん
      これらは証拠に基づいた
      解釈だ
      本当に正しいのか
      それは今後の証拠で
      検証しなければならん
 
 とはいえ、次のように言える。マリウポリに立てこもるウクライナ軍は、西岸に限っても東西4.5km、南北1.5kmほどの領域を占めているように思われる。

 もちろん、ロシア軍の領域がもっと広い可能性もある。例えば数百メートル広いとか。

 しかし、それでもウ軍は、4km x 1kmぐらいの領域を支配していることになる。

 だからロシア軍の言う、マリウポリは陥落寸前、マリウポリの9割はロシア軍が支配した! という宣伝文句はふかしすぎであった。
 
 ∧∧
( ‥)まあプロパガンダだからな
 
  (‥ )本当のところ
      ロシア軍の損失は
      甚大らしいよ
 
 
 あまりの損害に耐えかねて、毒ガスを使う誘惑にロシア軍が負ける。これはありうる話であった。12日、マリウポリで毒ガスが使用された。多分、サリンではないか? という報道が流れている。
 

 
 

ブログ アーカイブ