自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2018年11月22日木曜日
監修=安心ではない
∧∧
( ‥)あなたが研究者を
軽蔑するようになったのって
取材した相手が資料だと言って
wikiを打ち出した紙を
あなたに手渡してからだよね
( ‥)広報まで同席する場で
‐/ これだもの
研究者や科学者は
信用ならんよ
まあこれは言い過ぎだ。それに一応付け加えると、これをした奴は若手の下っ端だ。同じ組織でも部長クラスになると広報が同席するという意味をよく理解している。
そりゃそうだ。若手は俺こそが現場を知っている! という自負にあふれているが、実際のところ現場を知るとは局所しか知らないということなのだ。全体を動かして先を見ているのは部長クラスとかであって、所詮、下っ端は下っ端なのである。
下っ端の慧眼は愚かな自己満足に過ぎない。
そしてまた、論文それ自体は主観で切りそろえた商品でしかない。研究者であれば、論文とはそういう側面を持つものであることを自覚しているだろう。
論文を読む者もこれは念頭に入れねばならぬ。
例えばある研究者はこう言った。
データを取ったがばらばらの値しか出なかった。
ではどうしました? そう尋ねたらこう答えた。
都合が良いようにデータを揃えて論文を書いたんだよ。
∧∧
(‥ )あなたはこれを是とする
\‐
(‥ )データってのはな
多分こうだろうという
主観に基づいて
整理したものでないと
役に立たんのよ
そして彼は続けた。これに不満がある人は、俺と同じ場所からデータを取って反論すればいい。
彼の言っていることは正しい。科学ってのはそういうものである。
実際、データの取り方が主観的だろうがなんだろうが、こういう過程を経ることで理論や結論は検証され、その妥当性なり頑健性が確かめられるのである。
∧∧
( ‥)反対に言うと
いかなる論文も
そういうものだと考えて
確認しないといけないし
可能なら自分で見に行く
ぐらいは必要だ
( ‥)だからさ
‐/ 研究者の監修とか
もう無意味なんだよ
なぜかというにそのような確認作業。もはや研究者の手にもあまる。
というか、そもそもそれが分かっているから研究者自身からして、こうした確認作業を避けたがるのである。
以上を踏まえれば、文系、理系を問わず、その分野丸ごとを一人で解説した本がなかなか見当たらないことが了解されよう。
∧∧
(‥ )要するに安全パイを
\‐ 選んだってことだな
(‥ )だからこそ
自分の研究していることを
詳細に書いただけの
本なのに
これは”入門書”ですと
たばかって売る
研究者が多いのよね
日本入門と名乗った本なのに、渋谷の道玄坂のことしか書いてないみたいな感じ。正直、詐欺である。
そしてさらに言うと実のところ研究者の皆さん、本を書くとき、案外に参考文献を読んでいない。
例えば19世紀後半の物理学者マックスウェルが導入した変位電流を見てみよう。研究者は次のように説明する。
絶縁体を挟んだコンデンサーでさえも一見すると電流が流れるように見える。磁界さえも生じる。このことから仮想的な電流、変位電流を導入する。
これ自体は現代の説明においては十分だ。
そして研究者の中には、マックスウェルの主張とはこういうものであった、と書く人もいるのだが...
∧∧
( ‥)でもマックスウェルさん
そんなこと言ってなーい
変位電流はもともと
そんな概念ではなーい
( ‥)研究者も案外と
‐/ 知った気になって
というか
知った気になって
いるからこそ
調べないで
思い込みを書いちゃう
のだよ
要するにこうだ。
研究者の論文は主観的で恣意的。それ自体は当然だとしても、その検証作業を研究者は案外にしていない。というか分野外だからという理由で諦める。
だがしかしこれも言い訳なのだ。
なぜなら、自分の本業のところでさえも、研究者は、調べない、確認しない、思い込みで書いているからである。
∧∧
( ‥)つまり研究者の監修を
受けていては
まともな本は
原理的に書けませんよと
少なくとも
監修を受けた=安心
ではまったくない
(‥ )言い換えれば監修を
受けた結果が
今の出版界の結果なのだ
分野丸ごとを書ききって見せた本が事実上ない、という現実。
そういうわけで、もしあなたが本を書きたいのなら、相談などは誰かにするにしても、基本、自分一人で書くことだ。
そして、そうして書かれた本の不備を指摘する自由は誰にでもあるが、不備を指摘しているだけでは、自分は負け犬なのだ。その現実を自覚するべきである。
例え相手がwikiのコピペを使っていても、指摘しているだけでは負けである。同じ土俵には立っていない。
*一応書いておくと、監修を受けた=安心、ではないが、自力で確認した=正しい、でもない。そんな保証はどこにもない。というか大抵の場合、自力で確認したは俺様理論で破綻する。
とはいえ、監修を受けるべき、そうすれば良い本になるはず...という楽観論が自殺行為であることもまた確かだ。あいにくだが、研究者は私たちや、あるいは研究者自身が思い込んでいるほどに万能ではない。というか自分の今から離れたら全員まったくの素人である。それは変位電流の一件を見れば明らかであろう。
そして、そもそもその結果が以上の現状なのであり、これは直視しなければいけない。
2018年11月23日以下追記
ちなみに冒頭の話。取材先の研究者がwikiを打ち出した紙を資料ですと言って出してきた件。何が腹たつって、こちらの下調べ以下の情報しかなかったからだ。おまけにそれ以上の情報を相手からえぐり出すには、相当、根掘り葉掘り質問を重ねなければならなかった。
∧∧
(‥ )でっこれ以来
\‐ あなたは研究者を
白い目で見るようになり
軽蔑するように
なりましたとさ
(‥ )全部自力でやらねば
ならんのさ
尋ねたり聞いても
意味なんかもうないね
いやまって欲しい。研究者の論文を見て記事にするのなら全てが自力ではないのでは?
まあそれは正しい。
∧∧
( ‥)とはいえ論文はどれだけ
客観的な作りになっていても
それは作りが客観的な
体裁に作られているという
だけの話でしかない
( ‥)いやもうほんと
‐/ 論文の妥当性は
本人に聞いても
どうにもならないからな
まあ正直で出来る切れ者の研究者とはいるもので、僕のこの論文(その業界ではかなり有名なもの)ね、この計算は恣意的でねえ....と正直にこぼしてくれることもあることはある。もっとも、そういうわずかなほころびを意図的に頼るわけにはいかないのが現実であり、取材に意味などない。
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