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2017年3月9日木曜日

帰還するか? それともすでに帰還していたのか?

 
 子供の頃に読んだ絵本にこんなものがあった
 
 ∧∧
(‥ )猟師が誤って猟銃を
\−  石に落としてしまい
    猟銃の先がひん曲がる
    そのひん曲がった猟銃を
    持って狩りに出かける
    そういうお話だね
 
  (‥ )ひん曲がった猟銃で
      撃った弾が
      ねじくれた
      事態を作り出す
      撃った弾が何かに当たり
      跳ね返り
      そのたびに獣と鳥が
      驚き慌て
      逃げ惑い仕留められ
      果実は落ち、芋は見つかり
      キノコがあらわになり
      次々に芋づる式に
      大量の山の幸が手に入る
      主人公は家族とともに
      手に入れた実りを
      大いに食べる
      そんな物語
 
 ところがこの絵本の後書きを見ると、これはどこそこの民話です。しかし絵本にするにあたって内容を少しだけ変えました、そういう但し書きがあった。
 
 子供心ながら思ったものだ。一体何を改変したのだろう? と
 
 それから20年あまり後、大人になって図書館で民話の本を読んでいた時、この物語に出会った。そうして読み進めていくのだが、特に何も変わらない。子供の頃に読んだ絵本のすべてを記憶していたわけではないが、思い出の通りである。

 あの絵本はこの民話を見事に絵として表現していたのだと納得しつつ、それにしても何もかも絵本の通りで、はて、一体、原本は絵本と何が違うのであろうか? そう疑問に思いつつ最後に行き着いた時、そこにはこう書かれていた。
 
 でな、全部、夢じゃったんだと
 
 ∧∧
( ‥)はいここで一言
 
  (‥ )死ねー!
 
 
 ∧∧
( ‥)もう少し穏便に
 
  (‥ )夢オチしばくべし!
 
 
 なっ、お前ふざんけんなよ。絵本の改正万歳! 夢オチにした原本しばくべし! そう思ったものである。
 
 
 しかし考えてみればこれはメディアの違い、つまり媒体の違いかもしれない。
 
 原本とはいっても、それは取材で聞き取った民話を活字にしたものでしかない。本来、民話とは大人から子供へ、こんなお話があったよ、と口語で語られるものである。
 
 でっあるから、語られた後で
 
 ∧∧
( ‥)聞いた子供から
    今の話は本当なの?
    と聞かれたら
 
  (‥ )まっさかあ
      これは物語だよー
      嘘のお話
      夢みたいなもんよー
      でも面白かったでしょー
      …と答えざるをえないな
 
 ∧∧
(‥ )民話だと
\−  どこそこの誰々
    いついつの誰々
    という言い様になるけど
    これを村という
    共同体の中で語ると
    物語の登場人物がまるで
    実在の人物であるかのような
    誤解をまねくからね
    否定しないといけないね
  
  (‥ )つまり本当だと
      誤解されそうになった
      物語を
      これは夢だよ〜と
      否定することで
      現実から物語へと
      つまり夢の世界へと
      押し戻す
      そう思えば良いかもな
 
 これを踏まえれば、夢だったんじゃと、という締めくくりは、断罪されるべき夢オチというよりも、

 本当なの?

 まっさかー、これはお話だよ〜 

 という程度のやり取りだと思えば良い。
 
 ∧∧
( ‥)ただこれを活字にすると
    創作では禁じ手とされる
    夢オチという罪に
    なってしまうのである
    だからこそ絵本は
    夢だったんじゃと
    という一文を取り除いて
    創作として成立させたのだな
 
  (‥ )絵本や小説は
     読み手が
     これは夢物語であると
     すでに分かって読んでいる
     つまり
     夢物語だと思って
     楽しんでね!
     これが小説や絵本なのだ
     そこで夢オチするのは
     根本の破壊だからな
 
 
 いわば絵本とか小説、漫画はテーマパークなのである。だからこの場合の夢オチとは

 あーはははははっ、このテーマパークはぜーんぶ詐欺でしたー、ひっかかったひっかかったwwww
 
 みたいなものなのだ。
 
 ∧∧
(‥ )まあそりゃ
\−  殺す!
   みたいな反応でてくるよね
 
  (‥ )夢オチってのは
      暴力行為に相当する
      そういうことだな
 
 
 さてもさてもそう考えると
 
 ∧∧
(‥ )けものフレンズは元が
\−  終了したゲームだから
    あれは仮想空間の話だとか
    主人公は終了したゲームに
    迷い込んで廃人になった
    プレーヤーだとか
    最後は仮想現実から目覚める
    オチだとか
    色々想像する人がいるよね
 
  (‥ )でっ、そういう想像を
      皆がひどく毛嫌いしていて
      そうなったら許せないと
      確定してもいない未来に
      勝手に怒りだしちゃう人や
      自分でそういう夢オチを
      想像してから
      そんなの嫌だ嫌だと
      自分自身で大ダメージな
      人がいたりとか
      なんかもう
      めちゃくちゃだな
 
 おかしい。

 たーのしーと知能が溶けるアニメだったはずなのに、一体全体なんでこんなことになっているのだ?
 
 いや、たーのーしー、というのはほぼコツメカワウソのせいだからそれで全体を評価されても…という意見は重々に承知しているが、それでもこの傾向、おかしいだろ。
 
 ∧∧
( ‥)みんな
    あの楽園が壊れてしまうことを
    ひどく恐れているんですな
    恐怖するから脳が回転して
    知能指数が急上昇ですよ
    えらいこっちゃですわ
 
  ( ‥)創作ってのは
    −/ 冒険に旅立った主人公が
       異世界に永住する場合と
       元の世界に帰還する場合
       とがあるんだけども
 
 どっちが多いのか、どっちが正当なのか? 正確には知らないが、多分、異世界に永住してしまう物語の方が多いと言えば多いのだろう。

 例えば、白雪姫もシンデレラも、王子と王宮での生活するという異世界に旅だって現実世界には帰ってこなかった。

 多くの民話も同じようなものである。末永く幸せに暮らしましたとさ、と語られるように、彼らは帰ってこなかった。
 
 ∧∧
(‥ )でもその一方で英雄は
\−  姫を手にいれるけども
    最後は全てを失って
    立ち去るというのもパターン
    なんだよね
 
  (‥ )姫と王国を手に入れた
      主人公は
      成功のテーマパークから
      無惨な最後をとげる
      という形で
      現実世界へと帰還する
      これも
      物語の王道なのよね
 
 ∧∧
( ‥)どっちがいいの?
 
  (‥ )そうさのう…
      物語とは..
 
 物語とは、

 自分は夢のテーマパークにいくことができない。だから自分の代わりに主人公がそこにいってほしい。そして主人公の視点でテーマパークを楽しみたい。
 
 
 物語とは大体においてそういうものだ。
  
 そして物語の世界にいつまでもいてはいけない。そう考えれば、読者の分身である主人公は無惨な最後を遂げねばならない。あるいは楽園を離れて現実世界へ帰還しなければならぬ。これを選択した物語が多いこと、皆が知っていよう。
 
 ∧∧
(‥ )でも反対に
\−  自分は現実世界でこれからも
    苦闘するのだから
    主人公は...
    せめて主人公だけは
    夢の世界でずっと幸せに
    過ごしていて欲しい
    そう考えることもできるよね
 
  (‥ )そちらを選んだ物語も
      多いこと
      これも皆が知っての通り
 
 ∧∧
( ‥)けものフレンズは
    どっちですかね?
 
  ( ‥)んー? 主人公は
    −/ 記憶を失い
      空っぽの鞄を背負っている
      これは
      何かを持ってきたけども
      記憶を奪われ
      鞄の中身を落とした
      そのように見えるから
      主人公は記憶を取り戻し
      使命を果たして
      帰還すると
      思っていたのだけど...
 
 どうもなんかここにきて、主人公がヒトの遺物から再現された存在である可能性が急上昇。
 
 ∧∧
( ‥)この企画の設定や
    物語上での言及から
    その可能性は当初から取りざた
    されていたけども
    ここに来てまさかの本命浮上
 
  (‥ )おっかねえ展開だけど
      でもあれだ
      この選択肢だと
      主人公はすでに
      帰還を果たしていた
      ことになるんだよな
 
 ∧∧
(‥ )その場合だと
\−  主人公は楽園から
    出る必要が無くなるのだね
    それはそれで魅力的な
    選択肢だな
 
  (‥ )どっちだろうねえ?
 
 
 帰還するのか? それともすでに帰還していたか? さて、どうなるか。

 そして皆はどっちがいい?
 
 
 
  
       
     

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