自己紹介

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2017年3月17日金曜日

崩れた場所 崩れ行く場所

 
 夜の散歩へ出かける。
 
   今の住まいは以前と違い
 ∧∧ 緑がないのが痛いですな
(‥ )
 −( ‥)最近は山まで足を
     伸ばしているけども
     本格的に登るわけにも
     いかんからなあ
 
 
 ましてや夜である。山登りなんて無理な話で、そうして街を縁取る山の斜面をかける道路を歩くのだが、ここが意外と通行量が多いのだ。
 
   考えてみればこの道
   市街地の4分の1を
   囲む一方で
 ∧∧ 信号がないからね
( ‥)
 −( ‥)斜面を登ること
     市街地の外周を
     回ることしかできないこと
     そういう制限はあるけども
     抜け道ではあるからなあ
 
 一方、こちらもぐるっと市街地の縁を回るのも面倒な部分がある。途中で抜けて市街地へ下る道が幾つかあるが、どれを使おうか? 

 この道は山道ではあるが遊歩道ではないから結局、眺めは退屈だ。そして知った下り道まで歩くさらに1kmの道のりはいささか飽きた。

 そこで今日は初めての下り道を通ってみたのだが
 
   犬がぎゃんぎゃん
 ∧∧ わめいてるぞ?
(‥ )
 −( ‥)ああいう家あるよな
     やたらと吠え癖がついた
     犬を何頭も飼ってる家
 
 それにしてもこの道は一体なんだろう? そこそこ大きな家が点々と並ぶ荒れた畑と斜面の道だが、斜面があまりにきつすぎて、しかも狭い。

 街灯がほとんど無い暗闇の中、それでも家々に自動車があることは分かるが、本当にこんな道をここの人は自動車で通るのか?
 
   ここはこの道以外
 ∧∧ 他に出口ないよね?
(‥ )
 −( ‥)googleで見ても
     そんな風ではなかったし
     実見してもそうだよな
     これ他に道ないよな?
 
 今住んでいるこの街ははるか太古、湖であったという。それが干上がった後に出来た扇状地が都市になった。自分が歩く山は、本来はそここそが平野面であったという。実際、山に登ればかつての河原石が転がっているのを見る。
 
   つまり山は隆起し
 ∧∧ 市街地は沈下している
( ‥)
 −( ‥)だから市街地と山の
     境界線は時として
     非常に急なんだが…
     それにしても
     この道はひどいなあ…
 
 降りるのさえ難儀するような急勾配。斜面から湧き出た水が道をしたたるように流れている。氷点下だったらがちがちに凍りついていたはずだ。こんなところに家を作って、本当に車で出入りしているのか?
 
   このあたりは所々
 ∧∧ 崩落した箇所があるみたいね
(‥ )
 −( ‥)ここに来る
     登る手前の平坦部は
     昔、地滑りがあって
     山を構成する凝灰岩が
     押し流されてきた場所
     みたいだよな
     その跡に笹が生い茂って
     それが地名になったとか
 
 そういえば、その場所の上り坂は、この下り坂よりもっと傾斜がゆるやかだった。
 
   今、我々が降りている急坂は
   崩落したことがない
 ∧∧ 新鮮な斜面ですかな?
( ‥)
 −( ‥)そういうこと…かもな
 
 そういえば、暗闇で今ひとつ分からなかったが、一件あった石垣のある大きな家は、あれは凝灰岩ではなかった。多分、ここらでよく使われる石材、安山岩である。
 
   来る途中のゆるやかな場所
   かつて崩落した場所は
   凝灰岩の石垣を持った
 ∧∧ 古い家が幾つもあるよね
( ‥)
 −( ‥)あれは…かつて崩落した
     からこそ供給された
     石材なのか?
 
 およそその理解で良いように思われる。
 
 もちろん、状況が今ひとつ分からないところもある。

 凝灰岩の中には斜面を降りた反対側の丘に埋まっているものがあるのだ。谷を挟んで反対だ。人間が運んだにしてはちょっと無意味に大きすぎるから自然に運搬されたと思えるが、そうだとしたら、崩落して運搬されてから、その丘が隆起したことになる。
  
   だとしたらあっちの
   凝灰岩は何万年も前の
 ∧∧ ものかもしれないね
(‥ )
 −( ‥)ふむ
     何万年もあれば
     それから隆起が続いて
     こちらの斜面が
     また崩落するか…
 
 はるか前の崩落で運搬されたもの。それから最近になって崩落して運搬されて人に利用されたもの。そして街が出来てからはまだ崩落していない箇所。そういう違いが斜面の緩急に反映されている、ということであろうか?
 
 夜の街をそそくさと歩いて帰る。先ほど吠えていた犬達は、自分が斜面を降り切って街路を歩き出した時もまだ吠えていた。

 
  

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