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2012年12月26日水曜日

僕らが読み終えた本は、一体全体、何者だろう?

 
 
 
 ∧∧
( ‥)でっ?
 
  ( ‥)世の中にはな、巨大隕石の
    –□ 衝突で大噴火が起きて、
       それで大量絶滅が起きる
       そう考える人たちがいる
 
 はっ? なにそれ? そんなの初耳だよ? という人がいるとすれば、それはそうだ。一応、そういう主張を論文にした人はいることはいるが、普通、このアイデアは認められていないからである。
 
 ∧∧
( ‥)なんでかというに
 
  (‥ )世の中の人は地殻の下
      マントルはマグマで
      溶けている!! と
      しばしば
      思い込んでいるけども、
      まず、マントルは
      岩石であり固体だ。
 
 だから、地殻をはぎとればマグマがごぼごぼになるかというとそうはならない。数百度の岩石が顔を出すだけだ(そもそも今、研究者は地殻を掘り抜いてマントルを直接採集しようとしている最中である)。
 
 ∧∧
( ‥)以前の話題のように、
    地殻どころか、もっと深く
    はぎとって条件を満たせば
    マントルのもっと深い
    場所が減圧で溶融しうる、
    その可能性が出てくるわけ
    ですけどね
    この話題=>*
 
  
  (‥ )問題は、その掘削が地球で
      起きる条件がどうもしびあ
      すぎるのだよね。
 
 ざっくりいって50キロは掘削しないといけないようなので、多分、そんな天体衝突が起こったら、地上はすべて焼き尽くされてしまうだろう。大量絶滅どころの騒ぎではない。地上から生物が根こそぎ、バクテリアに至るまで消滅してしまう。
 
 ∧∧
( ‥)でも、某掲示板で、いや
    マグマがごぼごぼになるのだ
    クレーターの中央丘は
    火山噴火の証拠だ、と
    まくしたてる人がいて
 
  (‥ )まあ、参考文献を読んで
      いないし、英語で検索も
      かけていないし、日本語の
      文献すら読んでいないのは
      あからさまだったけどね
 
 *減圧によるマントルの溶融は実は2つばかしストーリーが提案されているのだけども、そもそもそれに言及していない時点で、まともに調べていないことは一目瞭然であった。ということ。
 
 しかし、その後、かつて日本で出されていた本を古本屋で探し、調べていくと、めんくらうことがあった。
 
 70年代に出されていた本などを見ると、月のクレーターは隕石衝突ではなく、火山噴火の痕だ、そう強固に主張しているものが幾つかあるのである。
 
 ∧∧
( ‥)それも著者はアマチュアで、
    しかもソ連寄りの立場
    であるのだと
 
  ( ‥)70年代、80年代はな
    –□ 左翼やマルクス主義の
       信奉者が科学、というか
       左翼科学というべきかな
       アメリカの学説は悪い
       ソ連の学説は良い、
       そういう態度をとった
       連中がさかんに活動を
       していたのだよね
 
 一部の左がかった研究者が、自分の傘下に教師とかアマチュアを従えて、草の根的に普及活動をしていた、そういう時代。
 
 
 ∧∧
( ‥)でっ、あなたは疑って
    いるのだと
 
  (‥ )あの、まくしたててた奴
      残党じゃねえだろうな?
 
 ∧∧
( ‥)まあ、そんな証拠は
    ないですけどね
 
  ( ‥)いや、恐ろしいのはね
    –□ 本人にその気がなくても
       自分に教えてくれた人
       自分が勧められた本、
       それらがそれだと
       無自覚のうちに
       その影響下に入る
       そういうことさね。
 
 例えば、ある人物は、ダーウィニズムでは進化は説明できない。ほら、グールドの「ワンダフル・ライフ」をご覧なさい。進化はダーウィンの言うようなものではないのですっ! というのだが。
 
 ∧∧
( ‥)グールドさん、
    マルクス主義者でね
 
  ( ‥)あの人はなあ、遺伝的な
    –□ 決定論と生存競争から
       自由になりたかったの
       だよな。
 
 だから歴史を繰り返しても同じことは再現されない。つまり世界は生存競争と自然淘汰による収束ではなく、偶然とチャンスという自由が大きな意味を持つのだ、その根拠として彼はカンブリア爆発を高らかにうたいあげたわけだけど。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、出版の翌年に、
    それはあっさり否定される
    というね。悲しい結末でね
 
  (‥ )グールドの本や主張は
      しばしば創造論者にも
      都合良く、
      引用されるけども、
      それは当然なんだよね。
 
 遺伝的決定論、社会生物学、生存競争、これらから自由になりたい! と個人的に願うのは、ツンデレで幼なじみな巨乳の彼女が空から落ちてこないかな〜、と願うのと同じようなもんだ。
 
 同じようなものだからこそ、そういう妄想は禁止だ、したら死刑、とは言わないが、それを願って、しかし同時に唯物論的な進化論者でもありたいと、どっちつかずの立場で都合良く色々なへ理屈こねたら、そりゃあ、つけこまれるような事態に陥るだろう。
 
 *注:遺伝的決定論 ここではこの単語はざっくりいって、”環境の影響はそりゃああるけども、人間も動物で生物で、教育によっていかようにでも作り替えられる粘土のようなしろものじゃないよ”という程度の意味。
 
 
 ∧∧
(‥ )学問、思想、アイデアの
\–   系譜って根っこは、
     とんでもないものに
     根ざしていることが
     ありますからねえ
 
  (‥ )マルクス主義者なら
      全部駄目だとはいわん
      しかし結果的に理想に
      おもねって失敗した、
      そういう駄目な理論は
      やはり駄目なんだ。
      そして、
      おいしいからといって
      好きな本ばかり読むと
      なかにはこんなものが
      混じっているという
      ことさ。
 
 ゆえに思う。
 
 さあ、僕らが読み終えた本、それは一体全体、何者だろう?
 
 
 少なくとも、これを良かれと勧めたおっさんは誤っていたのであるし、この危険性についてまったく無自覚だったことは明らかである。=>*
 
 
 
 
 

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