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2019年4月9日火曜日

なぜタキトゥスは黙っている?

 
 紀元1世紀。古代ローマ帝国の政治家タキトゥス。現在でいう国会議員に相当する彼は歴史家でもあった。

 あったのだが、なんかどうでもいいことに記述の重点を置くし、彼の筆致はかなり現実を歪めているようである。
 
 ∧∧
(‥ )ネロ帝の貨幣改鋳には
\‐  まったく触れていないとは
    いかなることか?
 
  (‥ )タキトゥスが書いた
      年代記
      ネロ帝の治世後半は
      原典が欠落
      要約や他の文献しか
      残っていないから
      かもしれないけどな
      貨幣改鋳にはまったく
      触れておらぬ
 
 ネロ帝は貨幣の質を落としたそうだ。つまり価値の切り下げを行なった。

 通常、こうした行為はインフレをまねく。あるいは悪貨が良貨を駆逐する混乱を引き起こす。
 
 しかしタキトゥスは書いていない。
 
 もしかしてタキトゥスは経済に興味がなかったのか?
 
 ∧∧
(‥ )そうではないね
\‐  ティベリウス帝の時代に
    法律の制限を超える利子で
    高利貸ししていることを
    禁止したら
    経済が大混乱に陥った話を
    書いてる
    *年代記(上)p348~50
 
  (‥ )んー つまり
      タキトゥスのおっさん
      経済に興味がない
      わけではないか
 
 ではなぜ書かない? よもやと思うが、国会議員(元老院議員)たちはネロの貨幣改鋳で得をしたから、黙っていたのではあるまいな?
 
 貨幣の改鋳で価値の低い金貨が出回る。すると同じ額面でも金の含有量が高い古い金貨はその分価値が上がる。古い金貨を資産として持つ金持ちにとって、それは資産の増加を意味するだろう。つまり得だ。
 
 タキトゥスは皇帝ばかりを批判するが、所詮それは国会議員のわがままでしかなかったろう。批判される皇帝以上にせっせと蓄財にいそしんだのが国会議員たちなのである。ネロに自害させられた悲劇の哲学者・・・と称えられるセネカも、年代記において、彼は3億セステルティウスの蓄財をしていたと批判される場面がある。

 これは当時の金貨300万にあたり、金貨の金含有量を単純に現在の金価格へ換算すると1200億円の蓄財ということになる。

 こんなとんでも蓄財をする国会議員たちだ。ネロの貨幣切り下げは実にありがたい話ではなかったか? しかしそんなことは書けまい。だからあえて黙っていたのではないか?
 
 ∧∧
(‥ )ところがどっこい
\‐  ネロ帝の貨幣改鋳では
    悪化が良貨を駆逐する現象は
    起きなかったという
    見解が出てきましたぞ
  
  (‥ )これは一体??
 
 
 さて? ではなぜタキトゥスは沈黙した?
 
 
 
    




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