おっさんむけに本を売るとなると、例えばおっさんの、俺は人生の奥義を極めた! これをお前たちに伝えたい! 感に訴えるという手もある。
∧∧
(‥ )人間すぐに人生訓を思いついて
\‐ それを皆に伝えてあげたく
なるからねえ
(‥ )僕は素晴らしいことを
思いついたのに
なんで誰も
理解してくれないんだろう?
と思い込んでる
痛いおっさんに
あなたはコペルニクスです!
と言ってあげると
大喜び
こういう意識高いやつに適当な文言を売りつける。これ、本の常套手段。
∧∧
( ‥)おっさんどころか
がきんちょにも
こういう痛いのが
おりますぞと
( ‥)自分はコペルニクスって...
‐/ コペルニクスも
ずいぶん安売りされた
もんだな
天動説の時代に地動説を唱えた人は、初期のピタゴラス教団の奇妙な主張を抜かせば、記録に残る限り10人以下である。地動説っぽい? ものまで含めても
サモスのアリスタルコス、セレウキアのセレウコス、ポントスのヘラクレイデス、インドのアーリアバタ、ペルシャのアブー・マンスールとアルシージー、ポーランドのコペルニクス
ぐらいであろうか?
*ちなみにコペルニクスの体系がぱくりであるのは有名なので、彼の地動説がどこまでオリジナルなのかも議論の対象となりうるが、ここでそれは問わない。
*ちなみにコペルニクスの体系がぱくりであるのは有名なので、彼の地動説がどこまでオリジナルなのかも議論の対象となりうるが、ここでそれは問わない。
∧∧
(‥ )無名の人や賛同者を入れたら
\‐ もう少し増えるだろうけど
数世紀に1人
100年に一人とか
そんな頻度だよね
(‥ )そんな頻度でしか
登場しない人物たちに
自分を重ねるやつが
うじゃうじゃ
いるって時点で
どいつもこいつも
頭いかれてるぜ
自己評価高すぎよ
もちろん、これは恋愛映画や悲劇の英雄譚に涙を流すようなものかもしれぬ。
∧∧
( ‥)...自分のアイデアは
素晴らしいのに
誰も認めてくれない
俺はコペルニクスだ!
とか言ってる人の痛さは
そんな可愛いものでは
ないのでは?
( ‥)まあそうだろうね
‐/ 弁護のしようがねえよな
痛い、痛すぎるぞ。数世紀に一人、成功できたのは結果的に2000年に1人、そんな頻度の宝くじに自分を重ね合わせるとはいかがなものか。
∧∧
(‥ )しかも当時の物理学では
\‐ 地動説は支持できないからね
2000年の歴史の中で
地動説が失敗し続けたのは
合理的な根拠があるわけで
それを無視して結果論だけで
受け入れなかった
当時の人間は馬鹿ばっか
俺を受け入れない周囲の人間も
馬鹿ばっか!
みたいなことを
言われてもねえ
(‥ )しかもその困難を
突破したのは
コペルニクスじゃないしな
皆に認められないけど、僕はコペルニクスなんだ! コペル君なんだ! このありがちな主張、なにもかもが痛いのだ。
∧∧
( ‥)でもそういう本を書くと
売れるわけで
だから
そういう本を書くの?
( ‥)やだ
‐/ つまらな〜い
∧∧
(‥ )嫌な仕事すると
\‐ 心も目も死ぬからな
(‥ )人が痛い本を書く時
その人は痛さに
心を書かれているのだ
正気じゃいられないぞ
必ず発狂する
しかも悪い方向に
狂うぞな
ちなみにコペルニクス、司教であるおじさんの元で働いていたが、外交で辣腕をふるったおじさんが亡くなると、司教領の隣国であるチュートン騎士団が侵略戦争を開始してきたので、司教代理になったり、戦闘の指揮をとったり、騎士団が製造した悪貨が経済を混乱させるから、悪貨が良貨を駆逐してしまう! と貨幣鋳造の方法の本を書いたりと、仕事に翻弄される人生だったそうだ。
∧∧
( ‥)そっちの方が
よっぽど身につまされる
話だな
というか
目を背けたくなる現実
というか
目を背けたくなる現実
( ‥)それを考えると
‐/ 僕はコペルニクスだ!
と言ってるやつは
ほんとぬるいやつらよ
まあ、ぬるい人間相手にぬるい本を売りつけるから売れるのが道理。人は自分に都合の良い嘘を好み、金を出すものだ。とはいえこのぬるさ、いささか噴飯ものである。