自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2019年2月9日土曜日
工作船カムチャツカ
極東で戦われる日露戦争。大陸で戦う日本軍と、日本本国とを遮断せよ。
その目的を果たすべく1904年10月11日、バルト海から出撃したロシア帝国バルチック艦隊。
しかし妙な噂があった。日本の水雷艇がバルト海、北海に潜んでいて、バルチック艦隊を狙っているというのだ。
水雷艇。
魚形水雷、すなわち魚雷で武装した小型の軍艦。その武装ゆえに原理上、より大型の艦船に接近、撃沈が可能。
それにしても、日本の軍艦が地球の反対側の海に潜んでいる!! とはなんとも信じがたい怪情報。真面目に受け取ることすら馬鹿馬鹿しい。
だがしかし11月21日夜、遅れていた工作船カムチャツカから国籍不明の水雷艇に追跡を受けているという無電が入る。
果たしてその深夜、艦隊は奇妙な光を見た。探照灯を照らしてみるとそこには紛れもない水雷艇たちの姿! 戦闘命令が下され艦隊は発砲開始。
∧∧
(‥ )しかしいたのは
\‐ 日本の水雷艇などではなく
イギリスの漁船30隻
この攻撃で2名が惨死し
1名が重傷 後死亡
大勢が重軽傷を負った
これが
ドッガーバンク事件ですか
(‥ )初めて聞いたけど
なんとも奇怪な話だな...
イギリスの世論は激昂し、英露開戦の間際までいった。そして戦争にこそ至らなかったものの、英国の態度はにわかに強行となった。
それまでは品質の良い英国産無煙炭をバルチック艦隊が買い付けるのを黙認していた英国。それが途端にいやがらせをするようになった。艦隊で追尾する。あるいは中立的立場であるはずのスペイン、フランス、ドイツに激しい圧力をかけて、とにかくバルチック艦隊に石炭を積み込むことを妨害するのである。
安全な湾内や港内で作業もできず、赤道の炎天下の中、突貫で石炭を詰め込む重労働に水兵は倒れ、ひとりの大尉は心臓病で亡くなった。
こうして余裕のないバルチック艦隊は安全な太平洋側ではなく、日本海側を強行突破することを決定。しかし疲れ果てた艦隊は待ち伏せていた日本海軍に発見され、全滅の憂き目に会う。
∧∧
(‥ )この奇妙な事件さえなかったら
\‐ 戦況は変わっていた
でしょうな
(‥ )「石炭で栄え 滅んだ
大英帝国」って本を
読んでいて
初めて知った話だけど
一体全体なんだこれ?
「石炭で栄え 滅んだ大英帝国」の著者は、水兵に混ざっていた反体制派や共産主義者の流言やサボタージュではないか? という解釈を示している。ぎょっとする話だが、当時のバルチック艦隊の記述に、自分の水兵仲間が休憩中にマルクスの資本論を書店で購入しているところに出くわした、という話があるのだそうだ。
祖国を守る戦いに向かう最中に資本論を買う兵士!
バルチック艦隊 参加人員1万2000名。一体どんな連中がどれだけ紛れ込んでいたか、確かにわかったものではない。
他、著者が紹介するように実はドイツの水雷艇がいた、という説を推す人もいるようだ。
∧∧
(‥ )一応 日本のwikiを
\‐ のぞいてみたけど
ロシアが雇ったエージェントが
報奨金目当てに嘘情報を送った
とか
実は
日本側が偽情報を流していた
という話が引用されてるけど...
本当ですかね?
話が出来すぎじゃね?
( ‥)Dogger Bank incident...
‐/ 英語のwikiだと んー
例の日本軍に追われてる!
と無電してきた
工作船カムチャツカは
日本の軍艦3隻と
交戦したと
あいかわらず
主張し続けたけども
それらの船は
スウェーデンの商船
ドイツの漁船
フランスの2本マスト帆船
であったと書かれてる...
wikiを信用するしない以前に、話が各人ばらばらであることはよくわかった。
さて、この怪事件の真相はいかに?
バルチック艦隊は海も知らない農民兵まで動員した要員であったというから、噂話からパニックが広がった...というのが一番簡単な説明であろうか?
あるいは本当にサボタージュがあったのか? カムチャツカの乗員に日本の水雷艇を見た! と虚偽の申告をしたものがいて、それが発端であったという記録もあるという。
いずれにせよ、聞こうにも聞き出せぬ。日本海海戦でバルチック艦隊は参加人員の3分の1を喪失し、工作船カムチャツカも撃沈されている。
*ちなみにドッガーバンクは北海に広がる広大な浅瀬で、もともとは氷河期に氷河が運んだ堆積物モレーンとされているそうな。浅いので優良な漁場だそうである。
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