自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2019年2月3日日曜日
確かにベネズエラ 一見すると優良案件だ!
二人の大統領が並び立ったベネズエラ。どちらの大統領を支持するかで世界は割れた。
そしてtwitterに踊る、これは石油をめぐる米露の代理戦争だ! 新冷戦だ! というつぶやき。
とはいえ、現実はもっとダラダラしたものらしい。
∧∧
(‥ )報道によると
\‐ ベネズエラの暫定大統領は
政権交代は中露にとっても
良いことだ
マドゥロ大統領は誰の投資も
守らない
ベネズエラ政府は債権者や
債権保有者に責任がある
と述べたとか
(‥ )さすが当事者
問題点をよくわかって
いらっしゃる
調べれば、現政権のマドゥーロ大統領が2017年に議会の立法権を奪い取ったそもそも原因、あるいは先駆けと言うべきか、それは、債権返済に困った政府が国家権益の一部をロシアの国営石油大手Rosneftに売り渡そうとしたことだったらしい。
国家利益を売却するには国会の承認が必要だ。しかし国会が賛成するわけないので、そこでマドゥーロ大統領は国会の立法権を奪おうとした。これが2017年4月。
この試みは一時頓挫するが、四ヶ月後の2017年8月、マドゥーロ大統領はついに国会から立法権を奪い、行政、司法、立法の三権を掌握したのであった。
∧∧
( ‥)借金返済に困って
国益を売却するため
独裁制を確立したのか
本末転倒も良いところだな
( ‥)要するにこの問題って
‐/ ベネズエラの内戦でも
米露の介入でも
石油争いですらないよな
債権者である米露中が
倒産まったなしの
会社を前に
これどうしよう? って
頭抱えてる状況だべ
一番分かりやすく、そして一番困った立場が中国ではなかろうか。すでに6兆円をベネズエラに融資していて、このままでは焦げ付き確実。
∧∧
(‥ )中国、しくじりましたなあ...
\‐
(‥ )んー 見た目は
すごい良い案件だから
融資した気持ちは
わかるけどね
我が国は産油国。しかも世界最大の原油埋蔵量を誇ります! これを担保にしますから融資をお願いできませんか? なに、いざとなれば原油を物納いたします!
いかにも素晴らしい案件ではないか。
だが蓋を開ければどうだろう? 世界最大の埋蔵量など真っ赤な嘘。あるのは原油ではなくコールタール。
なるほど確かに蒸留すれば使えるであろう。だが地下にあるコールタールなんて、高度技術を持つ欧米石油大手でなければ掘り出せぬ。さらに別の油と混ぜ混ぜして溶かさなければ運搬もままならぬ。
ところが欧米大手を追い出し、石油の売上金をばらまきに使ったせいで、採掘は破綻した。金づるの採掘がダメになれば予算も消えて、予算が消えれば運搬のための混ぜ混ぜ油すらままならぬ。
油井は次々に故障し、稼働率は下がり、担保であるはずの原油...もとい、原油とたばかっていたコールタールを中国に物納することすら困難になった。そしていずれ不可能になるだろう。
∧∧
(‥ )中露の石油会社では
\‐ 欧米大手の代わりには
ならないんだろうね
できるならとっくに
代替しているはずだからね
(‥ )もうこれ詰んだべ
少なくともマドゥーロの
おっさんのままでは
中国の600億ドル
6兆円は戻ってこねえよ
中国が際立っているけども、だいたいどこも同じらしい。ロシアも1兆円ばかし融資しているし、アメリカもベネズエラ国債や石油公社の社債を買った人が大勢いる。昨今は割合が減ったとはいえ、ベネズエラの石油を想定した設備や取引を持つ石油業者もいる。
∧∧
(‥ )債権をちゃんと
\‐ 支払ってくれるのなら
中露だって政権交代を
容認するでしょうからなあ
少なくともこのままでは
全員が損をする
暫定大統領がそこを突いて
説得を試みるのは当然だね
(‥ )まあさすがに暫定大統領
というか借金返済に
国の石油利権を
売り渡す
渡さないで
喧嘩してきた国会の
議長だからな
とはいえ、暫定大統領は、正当な大統領がいない間に国会議長がその仕事をする、というだけの話。つまり暫定大統領の約束は果たして信用できるのだろうか?
政権交代をして、選挙が行われて、そうして選ばれた次の正式な大統領が本当に中露や様々な債権者への債権を保証するのか、そこはまだ予断を許さない。
∧∧
( ‥)その確証と合意が得られれば
米露中でマドゥーロ退陣
ですかね
( ‥)それが最良の選択肢に
‐/ 思えるけどな
ともあれ、暫定大統領宣言からすでに2週間。状況が決しないまま、なんかダラダラやってるということは、みんなで色々と話し合っていることを暗示しているように思われる。
注:コールタールは本来、石炭から抽出したネバネバ炭化水素のこと。ここではピーナッツバター並みの粘りを持つベネズエラの超重質油を、あえてコールタールに例えています。
∧∧
(‥ )昔は木製の電柱を
\‐ 防腐するために
コールタールを塗った
ものだけど
今時はそういうの無いよね
(‥ )子供の頃は電柱の
コールタールの雫を
取って遊んだよなあ
しばらく前に住んでた
座間の公園には
まだそういう古い電柱が
あってな
懐かしい気分になれた
ものであるよ
そして、「ベネズエラが埋蔵しているのは石油じゃないよ、コールタールだよ」 こういう”間違った理解”の方がまだしも現状認識に役立つと思えるのである。
少なくとも、原油埋蔵量世界一! なんていう煽り文句よりはよっぽど現実的だ。
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