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2022年11月22日火曜日

敵陣に支援無しで突撃せよ! 平均寿命2週間で8000死んでもかまわん

 
 2022年11月19日、バフムート南にあるOdradivka村。この村は10月には露軍に占領され、さらにここから露軍は2kmほど西へ進み、バフムートを包囲する動きを見せている。

 そうやって西進してくる露軍をウ軍が砲撃する動画があり、その場面を見るとこうであった。

 


 
 ∧∧
(‥ )畑の中の疎林に
\−  塹壕があって
    これは本来はウ軍の
    陣地なのかな?
    そこに露兵がやってきては
    砲撃されて死んでいく
 
  (‥ )動画を観察すると
      最初は正午
      次は朝
      その次が夕方なんだよな
 
 編集で順序がでたらめになっている可能性もあるが、素直に解釈すると、露兵は第一日目の正午に突撃、そこから翌朝まで砲撃を受け敗退。二日目の夕方に二回目の突撃をした。そういうことになる。
 
 ∧∧
( ‥)ウ軍が言ってたあれだな
    露軍は無謀な突撃を
    ただただ繰り返して
    ウ軍の攻撃で
    どんどん死んでいくって
    やつだな
 
  (‥ )バフムート近隣の動画を
      しばらく追っていたけども
      それがはっきりわかる
      最初の動画だね
 
 両軍とも本当に真面目に相手陣地を奪う時は、戦車など戦闘車両の援護を受けながら、随伴した歩兵が突撃する。
 
 しかるに、以上の動画にそういう場面はない。というか、バフムートの戦線において、露兵が戦闘車両の支援を受ける場面は見たことがない。

 露軍は敵陣に歩兵だけでただただ突撃して、機関銃と砲弾、ドローンからの手榴弾投擲で次々に死んでいく。

 こんな突撃をするから露軍は馬鹿だアホだと言われる。もちろん、実際にはこれ、有効な手だ。植民地の独立戦争などでは子供を突撃させて相手を消耗。次に熟練兵を突撃させて敵陣確保があった。

 ∧∧
( - -)でもそれ
    潤沢な人的資源が
    使える場合
    使っても味方に
    支持される場合だろ?
 
  (- - )今のロシアは
      そういう状況じゃ
      ないよねー
 
 だからバフムート方面において露軍、正確に言うとこの方面を担当している軍事会社ワグナーとその支配者プリゴジンは囚人を動員した。六ヶ月の兵役を務めたら無罪放免であると。
 
 ∧∧
(‥ )ところが囚人兵の平均寿命は
\−  2週間程度だそうですな
    支援無しで素人を
    突撃させたら
    そりゃあそうなる
 
  (‥ )平均寿命を半減期と
      解釈すると
      半年後には最初の
      8000分の1しか
      生き残らん
 
 2万、3万の囚人兵を動員したともいうが、半年後に生き残るのは4人ぐらいだってことになる。
 
 実際、すでに露軍はバフムートで8000を失ったとも言う。

 そしてこの画像


 
 元動画はバフムート市の東北にあるガソリンスタンドを、ウ軍がドローンで撮影したもので露兵の死体がごろごろ転がっている。その場面をつなげて復元。遺体の分布を見ると以上のようになった。60×20m程度の土地の中に少なくとも遺体が8つ。

 興味深いことに遺体はかなり均等に分布していた。多分これ、長時間の攻撃の中で露兵が確率的に死んでいったので、均等に近い分布になったように見える。つまり露兵の遺体の自然分布に近いものとみなせる。
 
 ∧∧
( ‥)1200平方mに遺体8
    平均すると150平方に
    遺体が1つ
    バフムートの戦線は
    およそ8kmだから
    戦線に150mの幅があれば
    8kmの戦線に8000の
    遺体が転がっているはず
 
  (‥ )実際には遺体分布に
      粗密があるはずだけど
     (以上の画像も露軍陣地の
      ものなので他より密なはず)
      その一方で
      戦線の幅は150mより
      ずっと広いのだよな
      多分、2kmぐらいある
 
 つまり、バフムートにおいて露軍、そして動員された囚人兵たち、その8000が失われたという話。これはおそらく本当であった。
 
 ∧∧
(‥ )いやはや21世紀に
\−  こんな戦争を目にできるとはね
 
  (‥ )観察せねばな
 
 
 *ちなみにバフムートでは半年後の無罪放免にかけて志願した露軍囚人兵が、わずか2週間後に戦死した、という話が以前あった。

 2週間は、あまりに短すぎて悲惨だからニュースになって伝わった数字であろうか?

 あるいは反対にありきたりだから、たまたま人の耳に入った数字であろうか?

 見守っていると、後にウ軍が、露軍の平均寿命は2週間ぐらいだ、そのように広報したのである。多分、平均寿命2週間は正しい値。

  

2022年11月9日水曜日

2022年11月8日の月食と天王星食

  
 2022年11年8月。皆既月食。

 そして月食中の月が天王星を覆って食を引き起こすという珍しい出来事。


 
 ∧∧
(‥ )入るところは
\−  観察できたけど
    出るところを
    見逃しちゃったね
 
  (‥ )いやーうかつ
      ちょっと勘違いしててな
 
 ともあれ、スケッチすると以上のようであった。

2022年11月6日日曜日

バフムート 東へ1〜2km押し返す

  
 ウクライナに侵攻した露軍は思わぬ抵抗と損害によって、その進軍速度を低下させた。そして8月に到達したバフムートを11月になった今でも落せていない。
 
 ∧∧
( ‥)というか
    そもそも市街に
    取り付くことも
    できていないのである
 
  (‥ )町の東部にある
      アスファルト工場で
      ずーっと一進一退しててな
 


 10月9日 工場に侵入した露兵が砲撃を受ける
 
 10月12日 工場を奪還したウ軍がT64戦車支援の下、迎撃する
 
 10月25日 再び工場に近づいてきた露兵に砲撃
 
 10月27日 露軍、再度工場に侵入...
 
 ∧∧
(‥ )しかしその後
\−  露軍はウ軍の砲撃を受けて
    工場から叩き出され
    さらには
    2km近く後ろへ
    押しやられてしまうのである
 
  (‥ )それを加味すると
      次のような画像に
      なるのだ
 

 
 町の東部はどこもおおむね似た状態。アスファルト工場の近辺には採石場がある。22日、この採石場の水溜りに逃げ込んで、追い詰められ、ウ軍のドローンから投下される手榴弾で倒された露兵がいる。

 彼はバフムートの市街地まで1.5kmの地点まで近づいたが、それまでだった。現状、彼が一番突撃できた露兵。

 *確実な記録が1.5kmなら、もっと近づけた者が確率的にいたはずだが、それは当然、未確認である。

 以上を踏まえてバフムートの郊外東の戦況を描くとこうなる。ちなみに中央の白っぽいのが採石場。その右上にある長方形の構造物が両軍が一進一退していたアスファルト工場(小規模で機械も小さく少ないが、それでも敷地が東西300mある)。




 
 それが11月4日までに次のようになった。



 
 ∧∧
(‥ )町の南東に疎林地帯があって
\−  そこからぞろぞろ露兵が
    やってきて
    再び採石場に近づくけど
    もっと手前で砲撃されて
    吹き飛ばされてたよね
 
  (‥ )それが11月4日の動画
      採石場よりずっと後ろ
      露軍が1km以上
      押し返された証拠だなあ
 
 バフムートに関してはいろいろな動画があるが、露兵が吹き飛ばされたり、露兵の死体がごろごろ転がる中を必死で匍匐前進しながら逃げていく兵隊やらで、もう露軍の気持ちは第一次世界大戦。
 
 ∧∧
(‥ )戦線を担当する
\−   戦争会社ワグナーが
    投入するのは
    使い捨ての囚人兵
    半年勤めれば
    刑期を帳消し
    無罪放免だそうですが
 
  (‥ )平均寿命が2週間
      つまり
      兵士の半減期が
      14日だそうだから...

 
 半年、180日後までの間に半減期を13回繰り返すことになるので、半年後の生き残りは最初にいた人員の8192分の1ってことになるのだが...
 
 ∧∧
( ‥)一人でも生き残ってたら
    わりかし奇跡的な値だな
 
  (‥ )まあ片足切断とかで
      戦線離脱できて
      生き残れたやつが
      死者よりも
      多くいるはずだから
      全滅ではないだろうけどね
 
 
 

    


2022年11月1日火曜日

バフムートの話

 

 ∧∧
(‥ )...しばらくblogを
\−  書いてなかったけど
    バフムートの戦況に
    見入ってしまってたね
 
  (‥ )いやーバフムートな
      めちゃくちゃに
      なってるからな
 
 正確に言うと、バフムートではなく、バフムート攻略に突撃する露軍がめちゃくちゃ。
 
 バフムート(Bakhmut)はウクライナ東部の町。

 2月24日。東からウクライナに侵攻したロシア軍は思わぬ大損害を出した。制空権は奪えず、最新鋭機を次々に撃墜され、空挺部隊による首都攻略作戦は失敗。孤立した空挺部隊は全滅。第二都市ハルキウに侵攻した最精鋭部隊、第一親衛戦車団は全滅を通り越して文字通りの消滅。首都攻略に向かった地上軍に至ってはそもそもその半分が首都に到達できず撤退するという有様。露軍は150km以上の進軍能力を持っていなかったのである。
 
 戦車を大量に損耗し、兵士の損失は半年で9万。全軍の実に半分を失った。それでもなお大砲と砲弾は腐る程ある。両軍とも戦闘車両が不足し、大砲で押すという第一次世界大戦のような戦況で露軍は優位を見せ、じりじりと前進する。

 そして8月。ついに露軍はバフムートとその周辺に到達した。
 
 露軍が制圧した北のリマン、そして南の海岸地帯。バフムートはその間にある。北のリマンと南の海岸地帯から挟み撃ちにすれば、バフムートとその周辺一帯のウ軍は壊滅。あるいは撤退に追い込めるはずであった。
 
 
 ∧∧
( ‥)...のだがその矢先の9月
    諸国からもらった戦車と
    訓練を終えた部隊で
    ウ軍が一気に反撃
    リマンを含め
    ルハンスク州を一気に奪還
    バフムート攻略は
    無意味になってしまうのである
 
  (‥ )ところが
      バフムートの露軍は
      あきらめんのだな
 
 というか、バフムート攻略はロシア正規軍ではなく、大金持ちプリゴジンが経営する軍事会社ワグナーが担当している。そして、全般的に負けが見えて押されていくロシア正規軍に対し、ひとりバフムート担当のワグナーだけが気を吐き、じりじりと前進しているのであった。
 
 少なくとも、一見は。
 
 ∧∧
( ‥)実際はさ
    徴兵した囚人部隊とか
    同意された素人兵隊を
    次々突撃させているんだよな
 
  (‥ )いやもう無残な光景が
      次々に展開されててな
 
 これはどうみても素人ですよね? という露兵たちが戦闘車両の支援もないままにその身一つで前進し、ウ軍の砲撃で次々に吹き飛ばされていく。ウ軍の塹壕と機関銃手の前には、いくつも死体が転がる有様。
 
 ∧∧
(‥ )でもさー
\−  これはこれで有効な
    手段なんだよねー
    
 
  (‥ )60年代の
      植民地独立戦争とかでは
      独立武装勢力が
      少年兵とかを突撃させて
      相手が疲弊したところで
      熟練兵を突撃させて
      陣取りしてたからな
 
 問題は、何千人だかの囚人兵だの召集兵だのでは、ちょーっと数が足りない。相手は陣地ではなく、ひとつの都市なのだ。万単位で突撃させないと攻略なんかできないだろう。
 
 こういうわけで無駄に命を消耗する露軍とワグナーとプーチンは馬鹿だアホだと言われるのである。
 
 ∧∧
( ‥)でもあれだろ?
    突撃肉弾戦で
    対空機銃の水平撃ちでも
    追い付かずに
    ウ軍が後退すると
    ワグナーは前進と
    戦果を強調できるし
    プーチンのおっちゃんに
    自慢できるんだろ?
 
  (‥ )戦争の目的ってさ
      勝利だけじゃなくて
      昇進の手段でもあるからな
      嘘でもなんでも
      前進できました
      という実績が大事なんだわ
 
 プリゴジンだのワグナーだの。所詮は正規軍ではない成り上がりものなのだ。今の主君にアピールして可能な限り出世して甘い汁を吸う。それが政治であり、それを戦争の目的とすることは普通にあることだ。突撃して次々に死んでいく露兵も囚人兵も召集兵も、それは投資なのである。投資と見返りは別の通貨であり、囚人兵が消費されることは別におかしな話ではない。
 
 ちなみに10月27日におけるバフムートとその近辺の状況


 
 ∧∧
(‥ )戦線はほとんど
\−  変化ないんだよね
    そもそも露軍は後方2km
    ぐらいから突撃してて
    前進といっても
    生きて進んで死んだ場所が
    到達地点です
    私が確保しました!
    みたいな主張でしょ
 
  (‥ )でもあれよ
      そういう実績があるから
      前進しました!
     (嘘ではない)
      と宣伝できるわけよ
 
 実際、露軍や親露派は、バフムートではウ軍を押してる、むしろ勝ってる。いや、市内に入った! と宣伝しているのであった。何事も実績だ。
 
 
    
     

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