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2022年5月3日火曜日

2日で50m 1日に25m 建物ひとつ

   
 4月29日の動画から。

 市街戦続く都市マリウポリ。アゾフスタル製鉄所の近く。建物を制圧しようと走るロシア兵。しかし一人が撃たれて、まるで座り込むように倒れ、そして動かない。
 
 仲間が助けようと動かぬ彼を引きづるも、彼もまた撃たれたらしく、倒れてうめくような動作をする。支援のためにBTRがかけつけ、機関砲を連射する。


 
 ∧∧
(‥ )場所はアゾフスタル製鉄所
\−  から北へ170m
    いったところだね
    製鉄所正面は22日
    ロシア軍が占拠したけども
 
  (‥ )たぶん
      奪い返されたのだろうな
 
 露兵が制圧しようとした建物は、製鉄所正面よりも前(東側)にある。奥の製鉄所を露軍が制圧しているままで、突出した建物をウ軍が確保したままというのは不思議であるし、仮にそうだとしても、北から乗り込もうとするのは奇妙であろう。
 
 ∧∧
( ‥)南の奥にある製鉄所から
    乗り込めば
    ウ軍の背後を
    襲えるからな
  
  (‥ )でもしない
      ということは
      製鉄所正面は
      一度失ったのだろうよ
 
 以上を加味して製鉄所付近の状況を描くとこうなると思われた。


 
 22日に製鉄所正面を露軍が確保。カディロフ隊が占拠をアピール(多分、この方面の顕著な前進はカディロフの成果ではなく、ロシア正規軍とドネツク部隊の成果だと思うのだけども...)。
 
 ∧∧
(‥ )しかし翌23日
\−  ウ軍の攻撃で
    製鉄所正面に置かれていた
    露軍の戦闘車両が損傷
 
  (‥ )まあ製鉄所にこもった
      ウ軍本陣から
      300mしか
      離れてないからな
      こんな場所に
      車両置き場を作るのは
      ちょっと無謀だったね
 
 さて、露兵が撃たれる29日の動画は、朝におそらくはBTRによる攻撃が始まり、そして夕方に制圧に向かって露兵突入。そして撃たれるという流れになっている。
 
 その翌日、30日の動画より抜粋。



 場所は同じ。影の向きからするとBMPが朝に砲撃。正午にBTRが、そしておそらくは雨になって..同じ日なら夕方であろうか、自走榴弾砲Gvozdika(グヴォズジーカ)が砲撃する。
 
 ∧∧
(‥ )29日のBTR?の砲撃より
\−  砲撃場所が前進してる
    前進は100m
    とはいえ29日の救助時に
    進んだ距離からすれば
    50m前進かな
 
  (‥ )砲撃場所からすると
      29日に露兵が撃たれた
      建物を制圧した
      らしいのよね
 
 つまり2日間に露軍は50m前進、1日あたり25m
 
 ∧∧
(‥ )今まで見積もってきた
\−  露軍の前進速度
    10日あたり
    300mぐらいに
    極めて近い数字だね
 
  (‥ )これがマリウポリの
      市街戦における
      平常運転ってことだろ
 
 製鉄所正面から製鉄所内部まで300mぐらいあるから、10日もあれば、つまり5月10日ぐらいには製鉄所内部に突入できることになる。
 
 ∧∧
( ‥)順調だったらの話な
    というか
    そんな一箇所の突入で
    大丈夫か?
 
  (‥ )危険だろうね
      背後を打たれる
      可能性があるからな
 
 1日30mの前進とは、全線に渡って30mの前進が起こる、というわけではない。少なくとも無条件にそうではない。30mの前進は30mの円が進むようなものであった。

 だから敵地の全面を30mの円で塗りつぶすとなれば、当然、長い時間がかかる。
 
 それなら全面制圧をやめて、一箇所でもいいから突撃する。そういう手もある。実際、今の露軍はそうしているらしい。
 
 ∧∧
(‥ )でもそれは電撃戦だよね
\−  ロシア伝統の
    縦深戦術ではないな
 
  (‥ )そもそもマリウポリの
      露軍って1万人程度しか
      いないから
      縦深戦術なんて無理だべ
 
 全線同時にがむしゃらに、損害を無視して前進せよ。第一次が前進したら第二次が続け!

 ...なんて無理な話だろう。
 
 しかし、実のところ動画に写った地図からすると、マリウポリ東岸市街地の露軍はそれを計画したようである。だが現実は違った。製鉄所正面には到達したが、北部と南部の戦線がそれについてきていない。戦火の分布や動画の投稿場所からすると南部では背後にウ軍が回り込みそうで、露軍がそれを阻止しようとしているようにも見えた。
 
 ∧∧
(‥ )北部だとそこそこ
\−  成果を上げているように
    見えるんだけどね
    南部が厳しいねえ
 
  (‥ )おまけに攻囲軍の一部が
      北西に向かったとか
      言われるからな
      人数まで少なくなった
 
 止むを得ない処置には違いない。1万人程度で要塞都市を攻略するのが、そもそも無茶であった。

 なるほど、ただの一都市に全軍20万から1万を割くのは、むしろ多いくらいだ。しかし、それでも十分にはほど遠い。とはいえ、これ以上の戦力をマリウポリに追加投入するのも、それはそれで無謀。
 
 ∧∧
(‥ )北をあきらめて
\−  東に5万の軍勢を
    再配置したけど
    露軍の前進は微弱だしね
    現状でさえ全線が膠着に近い
    マリウポリに追加するなど
    ぜいたくすぎる選択肢
 
  (‥ )それにウ軍がじりじり
      マリウポリに迫ってるからな
 
 まあ迫っているというのは言い過ぎかもしれない。マリウポリの北西にいるウ軍は何週間もほとんど前進できずにいる...らしい。とはいえ、マリウピリから60km北でウ軍戦車が撃破された、つまりはそこまで来ているという話もある。ほとんど未確認に近い話なのであるが。
 
 ∧∧
( ‥)だからむしろ
    マリウポリ攻囲軍の一部を
    北西のウ軍へ振り向けたいし
    事実そうした
 
  (‥ )でもそうするとよ
      マリウポリの陥落が
      さらに遠のくのよな
 
 1日30m前進なら、全線同時に前進できたとしても、3kmの長さがあるアゾフスタル製鉄所を攻略するのに100日が必要であった。現状、ただでさえそんな状況なのに、攻囲軍の一部を割いて、北の戦線に回さねばならぬとは。
 
 ∧∧
(‥ )とはいえ
\−  回さないと
    欧米の援助で
    突破力を持った
    ウ軍に進軍を許し
    逆包囲されかねず
 
  (‥ )さりとて回せば
      回したで
      攻略が遅れて
      やはり逆包囲されかねない
 
 おまけに身内にあまり働かない部隊がいる。彼らときたら、多分、いざとなったら友軍を見捨てて逃げるであろう。この疑惑、おそらくマリウポリの露軍の多くが抱いているはずだ。実際、カディロフ部隊は働いてくれない、という愚痴が出ているぐらいだから。
 
 ∧∧
(‥ )やっぱマリウポリの
\−  露軍って絶望的だよな
 
  (‥ )割と絶望的なんだよな
      あの人たち
 
 
 ちなみに、29日に撃たれて倒れた露兵。リュックの色からすると民生品を使っていた。
 
 ∧∧
(‥ )あいかわらず
\−  補給もだめか
 
  (‥ )割と絶望的なんよな
 
 
  
 

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