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2022年5月19日木曜日

露軍はついに製鉄所には入れなかった

 
 ∧∧
(‥ )ロシアとウクライナは
\−  アゾフスタル製鉄所の
    ウ兵重傷者の搬出に
    16日同意
    その後、搬出したウ兵も
    武装解除に応じて
    投降してるね
 
  (‥ )でっ、17日には
      ウクライナ参謀本部が
      任務終了を表明
      その後も投稿するウ兵の
      画像が出てくるから
      これは基本的に降伏だね
 
 もちろん、降伏に賛成しない兵士もいるだろうし、なお立てこもる兵士もいれば、遊兵とかゲリラになる兵士もいるだろう。
 
 とはいえ、それらは以上の話からとりあえず除外する。少なくとも大きな戦闘はこれで終了。あるいはひと段落。つまりは17日までの行動が露軍の最大進出先となる。
 
 17日の動画にはこういうものがある。


 
 ∧∧
(‥ )製鉄所の
\−  北東部にある施設だね
    作業場に見えるけど
    近くにダムがあって
    貯水みたいな構造も
    見えるけど
    浄水場なのかな?
 
  (‥ )わからんけど
      この施設
      裏道につながるんだわ
 
 この裏道はウ軍がたてこもる製鉄所の脇を通る大通り。それに並行する道であった。露軍はこの道を通って製鉄所近辺の会社へと向かう。
 
 

 
 向かう先はKomunal'nykという会社で、googleでは公共事業請負業者とある(画像には除雪車のように見えるものがあるが、港町のマリウポリでそんな積雪があるのだろうか? 調べた限り、積雪量はたいしたことないようだが...)。
 
 17日の動画には破壊された施設と残骸が写っている。市街戦が激しくなると建物の破壊は進行し、衛星写真と見比べて位置を同定することも難しい。ただ、13日に投稿されたドローンによる空撮がこの近辺を撮影していた。そこから考えると、動画に写った残骸は、このKomunal'nykの敷地のものらしい。
 
 多分、以上の画像の建物は画面左4分の3がほぼ完全につぶれている。一番左にある軒先のように突き出した部分は鉄骨で、かろうじて残り、片隅がまだ持ち上がった状態でいる。中央部分は崩れ去って、柱だけが残っている。つまり空間の多い部分だったわけで、多分、倉庫だったのではないか? そして建物の右、4分の1だけが原型をとどめた。ここは階段とか、事務所とか、そういう内部構造があって頑強だったのかもしれない。
 
 画像と同定に不確実さは残るが、動画の前後と露軍の目的地、さらに13日動画に映された破壊状況。これらを考えると以上の同定で良いと思う。
 
 そしてこれが17日動画の目的地。



  
 ∧∧
(‥ )これはわかりやすいね
\−  Komunal'nykだわ
 
  (‥ )露軍はそこから
      大通り向かいの
      製鉄所を撮影し
      攻撃しているんだわ
 
 露軍は大通りではなく、裏道を使った。この道は見ての通り、塀や樹木、建物など遮蔽物がいくつもある通りだった。つまり、製鉄所からの攻撃を避けるために、露軍はここを通るのである。
 
 そして露軍は通りの反対、製鉄所に隣接するMarkokhimの敷地に侵入する。この侵入は13日、ウ軍によって撃退された(*17日の動画は実は13日以前撮影の可能性が少しある)。




 ∧∧
(‥ )でも動画からすると
\−  一旦退いた露軍は再び前進
    ここを占拠したみたいね
 
  (‥ )さらに100mぐらい
      前進したみたいだ
 



 これは16日の動画。おそらく露軍のドローンが製鉄所内にいるウ兵を撮影したもの。ウ兵は露兵に気づいて応戦しているようで、露兵は製鉄所の境である線路の向こう側にいるようだ。
 
 そしてこのまま17日の降伏へと続くのである。
 
 ∧∧
( ‥)つまりあれだ
    露軍はついに
    製鉄所内部に
    入れなかったわけだ
 
  ( ‥) 南のボタ山には
    −/ 入っているし
       そこでボタ山に陣取る
       ウ軍と交戦もしている
       みたいなんだけどね
 
 もちろん、ボタ山も製鉄所の施設ではある。しかし心理的にここが”製鉄所内部でございます!”と主張できるかというと、それは難しい。実際、露軍もこれをもって製鉄所侵入でございますとは言わなかった。
 
 なるほど、厳密に正確にいうと、露軍は製鉄所への内部侵入を一応はしている。製鉄所中央に到達した露軍は、5日に突入したから。
 
 ∧∧
(‥ )でも即座に撃退されたろ
\−
 
  (‥ )だからあれだな
      玄関までは入った
      それだけなのだな 
 
 つまり、露軍はついに製鉄所内部には入れなかった。事実上そうであった。
 
 ∧∧
(‥ )でもウ軍参謀本部は
\−  戦闘任務終了を告げたよね
    なんで?
    まだ戦えるだろ
 
  (‥ )任務終了とは
      交戦の価値が下落した
      ということだべ
 
 確かにもし、1万の軍勢がいまだにマリウポリにいて製鉄所にとりついていたら、交戦の価値はある。もし2万の露軍を釘付けにしていたら玉砕しても価値があるだろう。
 
 しかし、マリウポリの露軍は5月に入った時点で大部分が北へ移動していった。マリウポリには2000程度しか残っていないという推論もある。

 実際、5月以降、露軍の攻撃は滞り、裏道沿いに製鉄所北へ回り込んだり、ボタ山に登って交戦する程度であった。火力にまさるはずの戦闘車両で前進するというやり方を露軍はしなかった。多分、戦闘車両があまり残っていないのでそれができなかったのではないか? 実際、5月以降の露軍動画には戦闘車両がほぼ登場しなくなってしまう。最近登場したのはウ軍から鹵獲したBTR-4であったくらいだし。
 
 ∧∧
(‥ )つまりマリウポリの戦場は
\−  もう製鉄所でもないし
    市街地でもなく
    北方の防衛線か
 
  (‥ )それを考えれば
      ウ軍参謀本部が
      任務終了を告げるのは
      理解しやすいだろう
 
 もちろん投降が正しい判断かはわからない。ロシアはマリウポリのウ兵はネオナチだと熱心にプロパガンダしたので、彼らを正規兵ではなくテロリストとして扱おうとしているともいうし、処刑を提案する議員もいる。
 
 とはいえ、人間の判断は黒字、赤字を見定めた結果であること。それを踏まえればウ軍の判断には合理性があったのだろう。例えば以上のような。あるいはもっと別の理由が。
 
 ∧∧
(‥ )でもあれだろ
\−  マリウポリの露兵の状況は
    苦しいままだよな
 
  (‥ )逆包囲はなくなったけど
      やってくるウ軍から
      逃げるか包囲されるか
      玉砕するまで戦うか
      降伏するか
      最終的な選択肢は
      変わってないからな
      


 主戦場が北の戦線なら西側の援助で突破力を獲得したウ軍はいずれ戦線を南へ押し下げてマリウポリにまでやってくる。

 
 もしその時まで製鉄所にウ軍がいたら、それは逆包囲になった。現状、その選択肢は失われたようだが、その先の選択肢はあいかわらず同じままだ。
 
 
 プーチン大統領は露軍に死守を命じるだろう。つまり、再び市街戦が起こるし、露軍は玉砕するか降伏するか、相変わらずそのどちらかの選択肢しか選べない。そしてこれがマリウポリと製鉄所市街戦の最終的な決着ということになる。
 
 ∧∧
(‥ )各国の軍事援助は
\−  ようやく届き始めたばかり
    ウ軍が突破力を持つのは
    これからだから...
 
 
  (‥ )第二次マリウポリ市街戦は
      夏頃かな?

  
 
 
 *以下追記:以上の動画情報をまとめると、マリウポリ東岸市街地、5月における露軍の前進は次のようになる。








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