2017年5月21日日曜日
地球の長い夏休み
映画開始わずか5秒、白血病で死んだ主人公が目をさますと、そこは干上がった海の脇に座礁し放棄された巨大木造戦艦”賃貸アパート104号”の中だった。そこにいたのは自称天才医師である看護婦と、自分は退役した電脳戦艦だと主張する軍曹であった。
干涸びた海に広がる塩の浜辺。そこにそそぐ小川の脇には木々が生え、狂ったように蝉が鳴く。気候はとっくにいかれてしまい、衰亡した地球は果てしなく長い暑い夏休みに突入していたのだ。
そして始まる3人の奇怪な共同生活。復活医療の後遺症で訳が分からん薬を呑み続けるはめになった主人公は、唯一生き残った食料製造機の前で皆と面白くなさそうな顔で食卓を囲む日々。
( ‥)...という話を書くと
−/ 今の駄目な
日本映画に
なるそうですよ
∧∧
( ‥)駄目な日本映画では
暴行を受けた人が
童謡を歌わないと
いけないらしいぞ
3人で食卓を囲んでいた朝、突如、アイスホッケーの仮面をかぶった殺人鬼が、
リア充はどこだー!
と叫んで乱入してきたので、クロスカウンターでとどめを刺した看護婦が、ここにそんな奴はいねえよと、ぷーぷーと息を荒くしながら
お姉さん豚は芝刈り機、お母さん豚は溶鉱炉、と数え歌を歌いながら殺人鬼を殴り続ける。
∧∧
(‥ )なんだっけ?
\− その数え歌
(‥ )なんかあったぜ
自分の帰宅に驚いて
高層マンションの窓枠に
ぶらさがって隠れていた
間男の指を
数え歌と一緒に
窓枠から1本1本
引きはがす旦那の漫画
今や3人+1人。4人の知識を照らし合わせた主人公は、干上がり残った海の向こう、未だリア充が住む町があることに気がついて船出を計画する。
悪戦苦闘のすえ、ついに出航する104号。
船を操れる喜びに歓喜する軍曹、どんな患者がいるのかしらと妄想する看護婦、まだ見ぬリア充を水平線越しにじっと睨みつける殺人鬼、そして世界に戦いを挑まんとする主人公。4人の思いを乗せて船は進む。すなわち地球の長く暑い夏休み。