2014年11月30日日曜日
明滅する電子人間
サーバーに自分の”意識”を移植する。
∧∧
(‥ )ようするに電子計算機に
\‐ 人間を模倣させるのみならず
自分個人を模倣させる
そういう行為ですけども
(‥ )それが電子人間
そして
金属や半導体の回路で
物事を演算する
電子人間の思考速度は
電気の速度
つまり光速となる
単純に考えればそうであろう。ところが、機械の製造や機械の運用、増設やメンテナンスは光速よりもずっと遅い。
∧∧
( ‥)そもそも自己増殖と
自己複製ができない機械は
蛋白質で出来た有機人間
つまり蛋白人間に
頼る必要がある
当然
蛋白人間のエネルギー源である
光合成と呼吸と
化学反応の速度に
制限されることになる
( ‥)電子人間とは
‐□ 植物の中に動物である
人間の心が宿ったような
状況なわけだな
勘違いでなければ、これは大変な困難なのではなかろうか。
例えば、電子人間は蛋白人間と会話できるのだろうか?
自分の何倍も思考速度が遅い生物と会話するにはどうすれば良い?
例えば、状況に応じて思考速度や認識の速度を落とすとか?
∧∧
(‥ )1秒間に240回の動作が
\‐ 出来るのであれば
24回まで落として
残りの216回分の動作は
停止することにする
(‥ )いわば思考と動作の
明滅であるね
でも蛋白人間には
1秒24回の動作でも
十分なめらかに見える
一方、216回分を停止して過ごした電子人間にも問題はない。明滅した1秒間24動作は、電子人間からすればあまりに無駄で遅い。この場合、電子人間とその動作の速度は本来の10分の1にまで落ちている。だが主観的には連続しており、電子人間にとっても自分の動作はなめらかだ。
∧∧
( ‥)例えば思考できる植物を
サーバーにする
人間の意識をそこに移植する
有機体のサーバーなので
思考速度は人間であった時と
同じだが
動作が植物である
この場合も
サーバー上の人間は
休眠と覚醒を交互に行い
それを極端な比率にすれば
植物の成長の速度で
移動するような
非常にのろい動作も
主観的には
気にならないだろう
(‥ )まあ、それと同じことを
電子人間が
やりだすのじゃ
ないかなあ
とはいえ、これはこれで色々な問題を引き起こすのだろう。
例えば極端で非常に単純な状況を考えてみる。
その未来の地球には、あいも変わらず都市があり、農地があり、道路があり、そこをトラックが盛んに走っている。大勢の人も道を歩いている。一見すると現在とよく似ている世界だ。
だが違いもある。これらの人々は全部、電子人間の端末だ。
電子人間たちは蛋白質で出来た端末を使い、サーバーを維持し、サーバーを維持するための工場を、その工場を維持するための工場と物流網と、それらを維持するための工場と鉱山を運営している。蛋白質の端末を維持するための農地があるし、食料生産工場もある。端末たちは食べ、飲み、そして排泄をしてシャワーを浴びる。服も着るし、それに必要な仕事も機械も工場も運営されている。
私は電子人間だが、この蛋白世界で働いている。光速で思考できる我々にとって、この仕事は永遠に思えるような長いものだが、私たちは自分の思考を明滅させることで、蛋白世界の速度に順応できている。端末を使って工場を整備している期間は、私の主観時間では”1日”だ。だがしかし、電子人間の世界に戻ると、その間に”1000年”が過ぎている 。
もちろん、蛋白世界の仕事の合間にも、ちょくちょく私は電子の世界へ戻る。それは蛋白世界ではほんのわずかな時間、100分の1秒程度になるはずだが、その間、私は電子世界に感覚を移して、友人たちと語らう。もちろん家族とも会話をする。
だが、蛋白世界で作業する以上、私の時間は友人や家族たちとずれているのだ。蛋白世界における2時間後、娘は成長し、世代を繰り返して、もはや私が知っている娘ではなくなった。彼女は私が遺伝的な祖先だということを覚えてはいるが、私に関して知っている情報は、もうそのぐらいしか残っていない。
∧∧
(‥ )主観時間と客観時間に
\‐ あまりに極端な差があると
人々が時間の壁の向こうに
引き裂かれるってことが
起こりえますよね?
(‥ )電子人間の思考速度
蛋白世界の作業速度
電子人間の世代交代
電子人間の進化
電子人間の繁殖
実際どうなるのかは
よく分からんが
訳が分からなくなるのは
確実っぽいなあ
これはhilihiliのhilihili: 蛋白人間の幻覚はなめらかに動くの続き