2014年3月10日月曜日
あの運動エネルギーは人によって使用方法が違う
夜の電車を眺めていたのであった
∧∧ 人のまばらな急行
( ‥)
‐( ‥)乗客がいない回送
夜がふけるとそんな
ものだよね
電車の質量と速度。あの膨大な運動エネルギーを人生の人為的な最後として使う人がいる。
∧∧ よく止まるからね
( ‥)
‐( ‥)止まると駅は騒然とし
ネットは励起する
それでもさ
現場はどうやら
むしろ静かなんだよな
まあ、はねとばされた人がキヨスクに飛び込んでくるなんてこともあるわけだけど、あの強大な運動エネルギーの前では人体なぞ、どうとでもないものなのか、列車に乗っていると運転士以外は接触に気づかない。確か、その時もそうだった。「あー」という運転士の声を聞いた記憶があるが、なにかが、がんっ、と当たるとか、そういう音を聞いた覚えはない。
∧∧ 現場周辺は異常に気づかない
( ‥)
‐( ‥)この前は電車の中で、
ではなく
現場を見たけども
たまたま歩いていたら現場に遭遇しただけで、周囲に野次馬もいない。周辺の人家の誰一人、異常に気づいていないのだ。状況を知っているのは慌ただしく事後処理を行う職員、運転士、警察、そしてどうも青ざめているらしい目撃者だけ。
誰一人いやしない。
∧∧ 電車はひたすら稼働する
( ‥)
‐( ‥)そりゃあ、遅延されて
スケジュールを
ひっくり返された人から
すればたまったものじゃ
ないからね
誰もが文句を言い、いらつくのは当然なのだ。当たり前だろう?
∧∧ とはいえ? 思います?
( ‥)
‐( ‥)なんか布団みたいだなー
と思ったけども
ありゃあ布団をかぶせた
わけだよね?
にじんだ赤いしみには一瞬、躊躇したが、とはいえ、腕は見えた。多分、布団であろう白とほとんど変わらない。マネキンのようでいて、しかし硬質感がない、これは一体なんだろう? という奇妙な質感。男性なのか女性なのか、それも分からない。
∧∧ 無惨だと?
( ‥)
‐( ‥)なにもこんな姿に
なることはないだろう
そうは思うよな
しかし、そう言われたとて、彼らにしてみれば、では、あなたはなぜ助けてくれなかったのか? と問うかもしれぬ
∧∧ できることはないよね
(‥ )
‐( ‥)関係ないからねえ
輝かしく光を放って次々に運行する。遠くから見るとまるでちっちゃな模型のようだ。ある人にとってあれは憧れであり、ある人には夢の実現であり、ある人には責務であり、ある人にとってはスケジュールであり
∧∧ あるいは終わりの手段である
(‥ )
‐( ‥)人間の利害ってのは
一致しないものだね
同じ事故に遭遇しても
∧∧ 利害は異なると
( ‥)
‐( ‥)そりゃあ異なる感想を
持つよな
必然だよね
ある人にとってそれは責務であり、あるいは実務であり、青ざめる衝撃であり、うんざりする現実であり、あるいはスケジュールの破綻でありイライラの元である。
あの運動エネルギーは人によって捉え方も使用方法もまるで違う。