2013年6月9日日曜日
シノニムはシノニムのホモニムだった
∧∧
(‥ )この学名、ギリシャ語を
\– 複合しているのに、
eでつなげてますね
(‥ )時々あるよな、
語幹+oにしていない
学名。
*単純に言うと複数のギリシャ語を複合して学名を作る場合、語幹+oに別の単語を接合する(先頭の語幹の終わりがoの場合や接頭辞である場合などは必要ない)。
ところが
∧∧
(‥ )あれ???
\– 同じお魚さんの学名なのに
語幹+oになっているのが
あるんだけど??
(‥ )妙だね。1924年と
□– 1979年の文献だと
oだなあ。
1993年以降だと
eになってる。
いわゆる同物異名、シノニム:Synonymか?
∧∧
( ‥)例えばoでつなげる学名を
作ったけども、
同じ綴りの学名がもうあって
命名の先取権に基づき、
綴りをeに換えて
調整したとか?
( ‥)んんー、語幹+oの場合の
–□ 学名が他にあるのは
確認できたよ。
ただし、これ自体も
シノニムだね。
∧∧
(‥ )本来は寄生性のコペポーダに
\– つけられた新属だけども
既存の属と同様とみなされ
シノニムにされたのですね
(‥ )シノニムにされて消えた
□– もう使われない学名。
だが学名としては
適格なのだな。
国際動物命名規約の
10.6だよね。
10.6 適格性に及ぼす無効性の影響 一時適格だった学名は、それが新参異名、新参同名、不当な修正名、不必要な代用名もしくは抑制名として無効であったとしても、適格であり続ける。
国際動物命名規約 第4版 日本語版
これでいいわけだよね。
なんか絶滅哺乳類の学名でも、この寄生性コペポーダのシノニムとだぶって消えた/あるいはそれゆえに綴りを換えたものがある模様(語の頭にDisをつけてる)。
∧∧
( ‥)同様にこのお魚さんも、
語幹+oの学名が
無効になったので、
語幹+eに換えたわけ?
( ‥)それがさ、探してたら
–□ oの綴りの学名を
errorと表示した
文献が出てきてだな
原記載は1791年。それから第2標本が見つかるまで100年以上かかった魚だ。errorの表記があるo綴りの学名は1801年に使用されたらしい。
*ここまでは”甲殻類のそのシノニム”に優先権があるので、それゆえ魚の学名の綴りがoからeに変えられた、と考えて話を進めてきていたが、実はこの”error”、および学名の使用と記載の年代を考えると、そうではないらしい。以下を参照。
∧∧
( ‥)んんー? すると
間違った綴りの学名が
シノニムとして
広まっちゃって、しかも
それがコペポーダの
シノニムとホモニムだった
そういうこと??
( ‥)もしそうならややこしい
–□ 状況だなあ。
そしておそらくは推論するに”この状況”が正しいのだろう。なぜって”寄生性の甲殻類のシノニム”は1878年のものだ。だから仮に1791年に先の魚が記載された時、この学名がo綴りだったら、時代的に先行する魚の学名に先取権がある。すると今でもo綴りが使われるはずだ。だがそうではない。だとすると本来の学名は確かにe綴りだったのではないか?
また、”errorだとされるo綴りの学名”はどうも1801年に使用されているらしい。そうだとすると使用された状況次第でこれは甲殻類の学名よりも、学名として先取権がある(状況次第なんだけど)。しかし、そもそも本来の(おそらくは)正しいe綴りの方が先取権があるので、o綴りの魚の学名はシノニムとして消えることになる。
一方、この魚の誤表記は”甲殻類のシノニム”に対して学名として先取権を(状況次第で)持つので、”甲殻類のシノニム”が”異物同名:ホモニム”として消えることになる。だが、そもそも”甲殻類のシノニム”は既存の属のシノニムなんだから、学名がかぶるうんぬん以前に消えることになる。
*状況次第で持つ:学名の発表に適切とされる媒体で誤表記したりすると、それは正当な学名になるんじゃないの、という意味。
***2013.06.09.AM05:28に追記:以上*以後の一文は多分間違っていて、これは”不正な後綴り”になるらしい。つまり適格な学名ではなくて、ゆえにシノニムにはならない様子=>hilihiliのhilihili: 不正な後綴りがもし正当なら、それはシノニムのホモニムだった
**綴りが間違っているから、文法的におかしいから、とかそういう理由で学名が変更されたり捨てられることはない。
∧∧
(‥ )...これ、今回の本では
\– どうします?
(‥ )説明がめんどくせえしなあ
今回は古い参考図書には
語幹+o綴りのものが
ありますよ、程度の
指摘にして、
詳細は省くべき
だと思うけども、
それを書くにも確認が
必要だよね。やれやれだな