2013年5月18日土曜日
冷静な彼は何を見ていただろう
∧∧
( ‥)なに?
( ‥)いやさ、こんな話が
あったじゃないか。
学生の登山部。たぶん、30年以上は前の話である。雪山登山で天候が悪化。部員の一名は衰弱が激しく、ついに死亡。もちろん持って下山などできない。やむなく、彼をとりあえず置いて、生き残りの部員で自力下山を目指す。
∧∧
( ‥)ああ、下山途中で生き残りの
部員に幻覚を見る者が出現
それが他の部員に次々に
伝染した、という話ね
( ‥)実話なんだよな。
雪に埋もれた笹の中に棺桶が見える。暖かい食事を用意しているだろう食堂が見える。家が見える。先発してルートを通る彼がロープウェイに乗っていく。止めてくれ! 僕たちを残していってしまう!!
∧∧
( ‥)一人が見え始め、
幻覚を報告し始める。
二人目が同じように
見え始める。
(‥ )幻覚だから、
疲れているから
何を言っているんだ
そう否定していた
三人目も、家が見える、
あたりから、
本当に見え始めて、
ああ、これは疲労が
限界なんだ、そう思った
そんな話だったよね。
なんでもリーダーだけは最後まで冷静で、幻覚を否定し、3人目までも幻覚が見えた...と報告した時点で、とにかく休もう、ビバークの準備をした、そんな話だったけども。
ああしかし、これを聞いてある人が曰く
リーダーも実は最初から幻覚が見えていたのではないか? ただ、すべての幻覚の下に、”これは幻覚だよ”、という注釈が見えていたのではないか、と
∧∧
( ‥)...だったらすごくいやだね
(‥ )死者が出ているわけで
冗談で言う話ではない
それは承知している。
だけどね、
リーダー以外の全員が
見えている状況で
リーダーのみ冷静であった
だが、それは必ずしも
”見えていない”ことを
意味するわけではない。
この指摘は重要だよね
少なくとも言えるのは、見えているそれが事実かどうか? それは相互的に、あるいは経験的に判断されることであって、見えるもの、それ自体は事実そのものではない。そういうことではあるだろう。