2017年5月29日月曜日
つまり我々の自信と矜持はすべてが空っぽの上っ面
∧∧
(‥ )今や世界の
\− スタジオジブリが
アニメーターを
月収20万で募集したと
話題になって
国内のみならず
海外まで含めて
ふざけるな安過ぎ
これは犯罪だと
批判殺到
(‥ )でもこれ
読んでみれば
20万以上って話なのな
=>宮崎駿 新作長編アニメーション映画制作のためのスタッフ(新人)募集 - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI
∧∧
(‥ )20万からスタート
\− というだけの話でしたか
それに
新人育成を前提にしていると
書いてありますし
まだ何かとも
分からぬ才能相手だと
初期設定は
こんなもんですかね
(‥ )20万という額面だけを
聞いて
脊髄反射的に
皆が叫びよる
技術職を馬鹿にしている
日本とアニメ業界の
病巣ガー
なるほどこりゃ愉快だな
人間の中身が見えよる
愉快愉快
∧∧
(‥ )まあ単純にありきたりな
\− 話ですなあ
皆さん誰でも
自分には才能がある
今の給与は自分の才能に対して
安すぎる
そういう不平不満を
抱えているから
皆さん
脊髄反射で即座に怒り出す
(‥ )よいよい
人間とはそんなもんだ
そうでなくちゃいかんよ
とはいえだ、ここにはいつもの問題がある。誰もが自分の境遇に不満を抱えており、自分は正当に評価されていないと怒り狂っているが
∧∧
( ‥)でも誰も経済は理解して
いないのである
( ‥)月々20万を稼ぐとは
−/ 非常に大変なことでな
実のところその苦労は
俺にもさっぱり
まったく分からん
物書きでありイラストレーターでもある自分に分かるのは…、例えばごく単純にイラストレーターとしての立場だけで考えれば、月々20万をかせぐには、一ヶ月に20枚の絵を描き、それを1枚1万円で売らねばならないし、売るための販路を確保しなければいけない。
∧∧
( ‥)無理だな
(‥ )無理だよね
でもこの無理なことがなぜ
まがいなりにも
実現できていると思う?
∧∧
( ‥)なぜだ?
(‥ )さっぱり分からん
輸送費、印刷代、各種行程における必要経費、なにより関わったライター、イラストレーター、編集者、事務員、デザイナーなどの人件費。俺はこれを実現せしめたか?
∧∧
(‥ )そんな内訳を知っているのは
\− 経理の人間だけでしょうな
(‥ )それだけじゃない
俺の本が売れなかったら
俺の絵は赤字だ
しかし金は支払われている。
そりゃそうだ、働いたんだから。
でも売れなければ稼げなかったわけで、稼げなかったのに稼ぎが出ておる。
∧∧
( ‥)どこから金が出た?
(‥ )他の黒字の本かも
しれないし
出版社によっては
出版業以外の収益の
場合もあるし
ことによっては
金の発生が
書類上の現象だって
こともありうる
この全容はさっぱり分からない。もちろん分かる必要なんぞないのだ。
よく言われるであろう? 日本ではバイトにまで経営者意識を持たせようとするが、それは間違いだ。経営を考えるのが経営者の責務であり、そのために高い給与をもらっている。そうであるのだからお前達が責務を果たせ。労働者がそんなことを考える責務も義務も義理もないし、そもそもそれに応じた金をもらってなどいないと。
これ自体は正論だ。働いて金をもらった、それだけで十分だし、それで正当だろう?
∧∧
(‥ )ただし、それが正論であろうが
\− 経営者意識を持とうが
持たなかろうが
労働の対価が
権利だろうが
正当だろうが
なんだろうが
全員が経済の仕組みに
支配されている
(‥ )権利だの対価だの
正当だの義務だのなんだの
そんなものは
上っ面の話なのだ
我々は経営者だろうが
労働者であろうが
誰であろうが
この仕組みに
支配されていて
仕組み上不可能なことは
不可能なんだよ
だが我々はこれを忘れる。というか自覚すらしていない。
別に労働者がどうだとか技術職がどうだとか、それに限った話ではない。成功した経営者から政治家、国家官僚から家庭の主婦、年金生活者やサラリーマン、経済学者に至るまで、これがまったく理解できていない。
∧∧
( ‥)そりゃ理解できんでしょ
(‥ )見たことないからな
こんなの理解も実感も
できやせんよ
∧∧
(‥ )でもこれに支配されている
\−
(‥ )自分たちを支配するものを
理解できていない
理解できていないが
自分は世界を
分かったつもりでいる
これは極めて危険なのだ
我々が何かしら抱いている確信や成功体験。この才能があったから俺はこれまで生きて来れた。この自信。生き抜いてきたからには俺には才能があり、努力があり、ここには正統性があるという確信。
僕らが抱いているこうした確信。これ全部、嘘っぱちではなかったか?
∧∧
( ‥)そして嘘っぱちな自信を
みなぎらせて
俺は十分報われていないと
不満を抱き
脊髄反射的に的外れな
怒りの声を上げているだけ
ではなかったか?
(‥ )俺たちが正当に手にしたと
確信している
この才能この技術
これら全部
ただの幻想ではなかったか?
もちろん幻想でも良いのだ。幻想で何が悪い? 人間は幻想を抱いて墓場まで歩むものである。幻想を抱くこと自体はどうでもよろしい。
問題は、我々のこの自信と幻想を支えてきた仕組みは、我々の幻想がどうなろうとまったく意に介さない。この無情なる現実である。
∧∧
( ‥)だから仕組みは僕らの自信を
なんの躊躇も無く
ある日突然踏みつぶすのである
(‥ )我々の成功も自信も確信も
すべて空っぽの上っ面で
僕らがいつも抱いている
怒りと不満と矜持も
これら全部ある日突然
壊れるのではないか?
ある日突然、仕組みはこう告げるのだ。お前に払う金はないと。なぜ? と言っても、権利がと叫んでも、仕組みは無情に答えるのみである。これが事実で現実である。お前達が抱いていたのはただの幻であり、お前の怒りにも叫びにも、誰も答えられなくなると。