2016年9月19日月曜日
見よ! 10の23乗の奇跡!!
先日見た話に曰く
人間が誕生する確率は箱の中に時計の部品を入れて、その箱を蹴飛ばしたら時計が組み上がるぐらいの奇跡。
∧∧
(‥ )これ元ネタなんでしたっけ?
\−
(‥ )天文学者フレッドホイルが
生物が発生する確率は
飛行機の部品が竜巻で
巻き上げられて
組み立てられるぐらい
可能性が低い
みたいなことを
いったあたりじゃねえか?
似たようなもので、時計があれば時計を作った制作者がいるはず。しかるに生物は時計のごとき精巧な仕組みなのだから、生物を作った制作者、すなわち神がいるはずだ、という主張もある。
多分、その辺りの例え話がごちゃまぜになって、冒頭のような主張が産まれたのだろう。
だが実際にはこれ、例え話が不適切なのだ。機械論で考えてはいけない部分で機械論を使っている。
∧∧
( ‥)もっと正確にいうと
(‥ )機械と生物はどちらも
機械論で記述できるけど
両者はサイズが
全然違うから
同じサイズで考えると
理解が破綻するよ
ということだな
生物は分子から出来ていて、化学反応で生きている。ではより簡単な化学反応で以上の例え話にひそむ問題点を考えてみよう。
例えば水素を試験管に満たし、それに火をつける。すると水素は空気中の酸素と結合して爆発し、水になる。
∧∧
( ‥)水素と酸素を機械の部品
例えばボルトとナットで
考える
(‥ )水素というボルトが
酸素というナットに
ぴたっ! と
はまって水になる
まさに奇跡!!
ましてやその数ときたらどうだ。2グラムの水素は1モルであり、22.4リットルの体積を持ち、その分子の個数は6.02×10の23乗個。
∧∧
(‥ )10の10乗が100億だから
\− 10の23乗個と言えば
100億を100億倍して
さらにそれを1000倍した
個数ですなあ
(‥ )まあ試験管の中の水素は
もっと少ないけどね
試験管の容積が
10ミリリットルなら
それは100分の1リットル
つまり22.4リットルの
1000分の1に近似
とはいえ、10の23乗を1000分の1にしても、それは10の20乗個。
つまり、試験管の中の水素分子の数が100億個の100億倍ばかりあることは明白。
∧∧
( ‥)100億の100億倍の
水素分子のすべてが
酸素分子にぴったりはまる
この奇跡!!
(‥ )問題はさ
この奇跡が必ず起こる
ことなんだよな
どこの実験室でも
再現できてしまうし
義務教育を受けている
奴ならほぼ全員体験してる
奇跡にしちゃあずいぶん
安っぽいよねえ
なぜ100億の100億倍個ものボルトがほとんど同数と言って良い、これまた100億の100億倍個もあるナットにぴったりはまるような奇跡が何度も、しかも必ず起こるのか?
∧∧
( ‥)そりゃ水素と酸素の
化学反応を
ボルトとナットという
大きな部品に例えたから
現実の理解に
破綻が起きただけである
(‥ )同じ理由で
生物の誕生は
ジェット機の部品が
竜巻で組み立てられる
ぐらいありえない
とか
人間の誕生は部品の入った
箱を蹴飛ばしたら
時計が組み上がる確率と
同じぐらいの奇跡だ!
とか
そういう例え話も
単なる誤謬なんよね
間違った例え話で物事を解説すれば当然のことは当然には起こらないことになってしまう。
だが実際には当然のように起こっておる。
間違った例え話で物事を理解した時、当然のように起こっている出来事は奇跡になってしまうだろう。
ではなぜ例え話は誤っていたのか?
熱を与えればブラウン運動を起こして勝手にあちこち動きまわり、出会えば電子のやり取りで組み上がる極微の分子
そして
分子よりはるかに巨大で自分では動かず、所定の向きと回転や配置でないと組み立てられない機械の部品
この両者はサイズが違うから振る舞いも全然違う。こうしたサイズによる振る舞いの違いを考慮しないで一緒くたにしたのが間違いなのだ。
∧∧
(‥ )要するに生物や人間の誕生を
\− 機械の部品に例えて
奇跡だと主張する人は
サイズの違いを無視した
間違った例え話をすることで
現実を否定しているだけ
なのであると
否定された現実は
それゆえに
奇跡になってしまう
(‥ )それと同時にな
これが分かりやすい!
ということなのだ
∧∧
(‥ )ああ以上のような間違った
\− 例え話で
人間は奇跡だとか
生物は奇跡だとか言うと
みんな”分かって”くれる
わけだね
(‥ )物書き連中とか
賢しい連中とかは
よくこういうことして
自分も他人も
騙しやがるのさ
あいつらたちが悪いぜ