2015年12月31日木曜日
気づかぬままに降りていく
二日前のことである。散歩で坂道を歩いていると、前方50メートルあまりのところをよたよた登っていく男がいた。ひょろ長い背丈、上下ジャージの姿。
途中で小柄なおばさんと会話している。
ああこのあたりの人か。見た事ないな。
彼を追い抜き様に会話が耳に入った
それなら、まっすぐいって大きな道路に出たら右に曲がって...
家族じゃないね
∧∧ 道を聞いてるんだ
(‥ )
‐( ‥)道順からすると
目的地はほぼ同じだな
それにしても
ひょろ長い
兄ちゃんだったな
背丈は自分よりも高い。歳も若いだろう。多分、30代中頃。しかし坂を登るのがいかにも大儀そうだった。体力の低下が激しいのだ。
自分も他人ことを言えたものではない。30代後半になって妙に体が疲れるなあ...と思って走ってみたら、1キロ走れなかったことに驚いたのだから
あなたもあわてて
∧∧ 運動し始めたからね
( ‥)
‐( ‥)若ければ
運動しなくても
体力の低下はゆるやかで
運動すればすぐに戻る
だが35歳を過ぎると
低下は急激
回復は絶望的
状況を食い止めるのが
精一杯よ
坂を登り切り、右へ曲がり、ひょこひょこ道を歩く。本道から外れ、散歩がてら脇道に入ろうと振り返ると100メートルばかり後ろに、そのひょろ長い兄ちゃんの姿が小さく見えた。
この脇道って
本道に比べると
100メートルぐらい
∧∧ 長いんだよね
( ‥)
‐( ‥)目的地はほぼ同じ
つまり
彼と俺の歩速が同じなら
俺がこの脇道から出た時
ちょうど
鉢合わせするわけだ
だが、遠目に見ても、坂を登り切った兄ちゃんはふらふらしているように見えた。多分、こっちの方が少し速いだろう。鉢合わせではなく、こちらがやや先行するはずだ。
10分弱ほど木立のある脇道をうねうねと歩いて抜けて、大きな本道に戻ると、どんぴしゃり。50メートルほど後ろをよたよた歩いておる。
目的地もここまでは
∧∧ 同じですね
( ‥)
‐( ‥)俺たちゃ
もう少し先にいくけどな
建物に入っていく兄ちゃんを見ると思う。
自分より年上で、そうして過去10年の間に次々に消えていった人たちを。
だいたいあのぐらいの
∧∧ 歳から駄目になる
(‥ )
‐( ‥)階段上がると
膝が痛いとか
言い出したりしてな
体力が無くなると資料を読まない、調べない、考えない、確かめない、そして描かない、書かない。
いや、描けなくなるし、書けなくなるのだ。当然、仕事はできず、仕事の量は減り、依頼の量も減り....
∧∧
( ‥)あなたよりも年上だから
あなたよりも先に
退場していっただけで
年齢からすれば
ちょうど今のあなたぐらい
(‥ )フリーは40代で
脱落をするわけだな
そしてその原因は
体力の低下
もちろん会社員も
組織に守られているだけで
低下自体は同様だろうね
あの彼も、今が長い下り坂の始まりなのだ。みんな自分が若いと勘違いして、気づかぬままに降りていく。
∧∧
( ‥)でっ?
今のあなたはどうなんだい?
( - -)ゴリラめんどくせー
‐□ 疲れたよ