2015年4月30日木曜日
吸血鬼とは儚い認識論的な夢
∧∧
( ‥)例えばの話
(‥ )吸血鬼ってさ
認識論的な存在なのな
吸血鬼。その由来は不明瞭なれど、現代における一般的なイメージはこうである。人の血を吸い、血を吸うことで仲間を増やし、コウモリなどに変身し、不死身で再生能力を持つ。
不死身で再生能力を持つ。
∧∧
(‥ )体が細胞の集合体である
\‐ ことを考えれば
これはありえないね
(‥ )不死身で再生能力を持ち
破損した箇所を急激に
修復できる
そんなことしたら
ガン細胞がすぐに出現して
あっという間に体が
ガンに食いつぶされて
吸血鬼としての存在が
自壊するよね
体を修復する細胞分裂の過程で、どうしてもエラーが生じる。そのエラーからたったひとつで良い、ガン細胞が生じれば、それが急激に他を圧倒して、個体としての存在が崩壊してしまう。
細胞の寿命を制限し、不死化を阻止し、分裂回数や分裂できる細胞を限定することで、これを阻止しようとしている人間でさえ、遅かれ早かれガンに犯される。
それを考えれば、不死身であり再生する吸血鬼、そんなもの、あっという間にガンが生じてしまうのだろう。
もちろん吸血鬼は妖怪で、体が細胞で出来ているとかそういう存在ではないのだ、そう言うことはできるが。
∧∧
( ‥)それこそ
吸血鬼が
人間の認識論に基づいた
存在である証拠
(‥ )人間が自分の体と細胞の
関係に気づいたのは
かなり最近だからね
吸血鬼ってそれ以前の
”存在”だからなあ
吸血鬼は人間が細胞を認識し、さらに細胞のガン化を理解する、そのずっと以前に考えだされた。それゆえにたぶん、吸血鬼そのものがまごうことなきたった一個の存在である、そう設定されているのだろう。
∧∧
( ‥)つまり吸血鬼は
細胞の集合体だとは
考えられていない
( ‥)最近のSFやホラーだと
‐□ 作者も読者も細胞という
概念を知っているから
吸血鬼も細胞を
持っていたり
するのだけどね
だがその場合でも、皆の考えはこうではないか? 細胞はあくまでも部品だ。細胞は一糸乱れぬ統率をとれた行動をする、細胞はあくまでも部分である。ほとんどの人はこのように考えているであろう。
だがこの認識は正しくない。
∧∧
(‥ )実際には
\‐ 細胞はお互いに相互作用を
行なうけども
実態はあくまでも
ばらばらの個別
部分であるが部品ではない
(‥ )そして細胞は
自己複製の際に
どうしてもミスをする
ミスから生まれた
変異の中で
有利なものは数を増やし
子孫を増やし
増殖能力を高める方向へと
進化し始める
そうしてガンが生じる。これゆえ、吸血鬼など存在できるわけがない。
いや、そもそも吸血鬼は人間の夢が詰まった存在であった。
人の夢、不老不死と無敵の再生能力。
∧∧
( ‥)でも悲しいかな
生物が死を設定したのも
再生能力が限られているのも
細胞のガン化や個体の崩壊を
先延ばしにするための策
多分そう
(‥ )それを考えるとさ
死ぬ力と再生能力の制限は
現実と折り合って
我々が得た
解答なんだよな
でもその解答を拒否して
不老不死と再生能力を
空想の産物に与えた
それが吸血鬼
吸血鬼とはなんと儚い夢物語か。
生物が進化の過程で得た選択肢ではなく、生物が選べなかった破滅の選択肢を与えられた存在、それが吸血鬼。