2014年12月18日木曜日
不都合を悪魔化し、陰謀論とする
政権交代が起きた時、その目玉の一つとなり、話題を呼んだのは事業仕分けであった。
次々に質問をあびせる政治家たちの姿、そして、たじろいで返答に窮する官僚たちの姿を見て、国民は喝采を送った。
∧∧
( ‥)でもそれは茶番であった
( ‥)あれは各省庁に対して
‐□ 財務省が
”これは本当に必要なの?”
と問題提起を行う
それに対して各省庁が
書類で返答する
そのような書類と文面の
やり取りの間に
素人政治家が介在して
パフォーマンスした
それだけの話なんだよな
発言でさえも記述されて議事録として残されるように、本来、物事は書類と書類、文面と文面で行うものなのである。そうした書面のやり取りとやり取り、その隙間に本来まったく必要でない舞台を据え付けてショーにした。それだけのこと。
∧∧
(‥ )まあだから受けたのだよね
\‐
(‥ )みんなは
水戸黄門でも見ている
つもりだったのかもな
悪いお代官を
庶民派の権力者が
こらしめてくれる
そういう安易な世界観は
王道であり受ける
もちろん、端から見れば間抜けな話なのだ。書類と書類のやり取り。例えばそれは、私たちが仕事先との契約で行なうものでもあろう。そういう文面のやり取りにおいて、突然、パフォーマンスと演説を行なう人間がいたとしたら、それはただの痛い人間である。
∧∧
( ‥)でも受けた
( ‥)受けるからやった
‐□ だがそれだけでは
ないだろうな
彼らは信じていたのだ
あれを行なった彼らは、文面のやり取りで一歩ずつ、確認しながら前進する、そういう世界観を持っていなかったのだろう。そうではなく、官僚を言い負かすパフォーマンスを優先した。
彼らは、この世界はドラマの水戸黄門と同じだ、そう思っていたのかもしれない。
これにて一件落着!
∧∧
(‥ )するわけないよね
\‐
(‥ )誰かを超法規的に裁く
それ自体がすでに大問題だが
後任はどうするの?
着任までどのぐらい時間が
あるわけ?
その間
行政はどうなっちゃうの
執行する人の権限は
どうするわけ?
一件落着なんかするわけ
ないのだよな
追って沙汰があろう。言うのはいいけど、それは丸投げというのだ。
しかし、かような世界観。つまり、
役人は悪い事をしていて、役人を倒せば問題は自動的、かつすみやかに全部解決できる。
この世界観は非常に強固なものだ。
こういう世界観が流布するのには無理もない側面もあるが、恨み言を抜きでごく単純に真面目に言えば、部外者には行政のやっていることは全部把握できない、そして把握できない部分に”役人が悪いことをしている”、そういう”陰謀論”を押し込んだ結果だと見るべきなんだろう。
∧∧
( ‥)あなたたちはすぐに
陰謀論を採用する
(‥ )悪いことの原因は悪だ
悪をたくらむ者の正体は
これこれだ
これが陰謀論だけども
実は擬人化でもある
神話を見れば分かるように
現象を擬人化して
これにすがるとは
古典的な手法であり
伝統的な理解なのだ
自分にとって都合の悪いことを悪と言う。悪という抽象的な概念を擬人化すれば、それは悪魔となり、擬人化された悪に知性があると仮定すると、悪魔はたくらみをもつようになる。そこには計画がある。これが陰謀論。
∧∧
(‥ )でも陰謀論と
\‐ 悪の擬人化には
致命的な欠陥がある
(‥ )自分にとっての不利益
これは大雑把で恣意的で
自分本位で主観的な
カテゴリーでしかない
以上をひとつの実体とする
これが擬人化
それにひとつの知能と意思を
もたせる
これが陰謀論
自分の不利益を悪とみなし、それをひとつの実体と仮定して、さらに知能と意思と計画を持たせる。
∧∧
( ‥)これって自分の知らない物事や
世の中の仕組み、要望、要請
必然や必要など
これらを全部
中身の見えぬ箱に
適当に放り込んで
蓋をしてしまうことと
同じである
( ‥)そうしてそこに
‐□ ”悪”と”たくらみ”と
書くわけだよ
これでは現実を操作することなどできないだろう。妖精が動かすエンジン、という想定では車を整備するなど出来ぬは道理。
∧∧
(‥ )でもこういう世界観だと
\‐ 物事は容易に革新できるはず
そう考えるであろう
(‥ )世界を革新出来る
そう熱心に吹聴する人間
あるいは反対に
革新できない世界に
絶望し
そうして世界を呪う人間
彼らの世界観とは
こういうものではないのか?
彼らの行動と理解と絶望と、世の中を呪詛する呪いの言葉とは、そういう考えを反映したものではないのか?