2014年6月7日土曜日
暗い森という善と明るい森という悪
以前、こんなことがあった、近所の公園とその森を歩いていた時のことである。
カメラを抱えたおっさん、あれは女の子を撮影するのか鳥を撮影するのかという違いはあるが、いわゆる悪い意味でカメラ小僧なんだけども、おっさんたちが話し合い、嘆いているのである。
すっかり樹が切られて、この森も明るくなってしまった
これでは動物なんかすめないよ
∧∧
( ‥)暗い森の方が豊かな森だ
そういうイメージが
あるわけだよね
( ‥)なんていうかな
‐□ 自然は人間に
傷つけられている
だから森は放置すれば
豊かになるはずだ
そういう発想だよね
つまり自然は善、人間は悪、という単純な白黒理論、あるいは勧善懲悪理論とでも言えば良いか。
いや、しかし、暗い森の底には、一部のシダとかアオキとか、そんなものしか生えないよなあ。それでもあの公園は、適度に間伐される以前の状態でもまだ明るかった方なのだ。関東で極相に到達したシラカシの森なんかはもっと暗い。
∧∧
(‥ )今、あの公園は時々
\‐ シラカシとかそういう樹を
伐採しているけども
なんでもぶった切って
丸裸にしているわけじゃ
ないですからね
(‥ )むしろ大失敗したのは
池の泥をさらって、
それだけならともかく
池の縁を石組みで固めた
ことかもね
あれ以来、カイツブリが
こなくなったからな
大丈夫かこれ? という部分は確かにある。しかし、何の手入れもされていなかった森の樹々を少しずつ間引いているのは正しいことなんだろう。以前よりも森はずっと明るくなって、色々なシダや様々な植物が見られるようになった。
それにしても、暗い森の方が良いに決まっている、というのは、どういうわけか様々な場面で見ることだ。
例えばナウシカやモノノケ姫にもそういう側面がある。あれらも、どういうわけか暗い森が豊かで良い、ということになっている。ナウシカの原作には極相林という言葉が出てくるのだが、そっから先の理解が現実とずれているらしい。
∧∧
( ‥)放置して極相に
到達すれば良いって
わけじゃないんですけどね
( ‥)放置すれば勝ち組だけに
‐□ なってしまうからな
現実で笑ってしまう話というと、時々、火入れをして保たれていた草原。そこにはその地元近辺においては珍しい、絶滅危惧種の植物が生えていた。そこで行政は火入れを禁止したのだが...
∧∧
( ‥)はい、絶滅危惧種は
それで絶滅
(‥ )当たり前だよね
人が手入れして
勝ち組を阻止するから
その危惧種は存続していた
わけなんだから
近所の公園のススキの原を刈った後、当初そこはタンポポだらけであった。やがてススキが戻る。そうこうしているうちに樹木も生えてくる。そうやって次々にそこにいる生物が交代していく。この草原は毎年草刈りをしているけども、あれを止めたら、すみやかに雑木林になり、そうして最後はシラカシの暗く、下生えの生えない森になっていくはずだ。
この場合、タンポポを絶滅危惧種に見立てれば良い。人がススキを徹底的に刈り続けないとタンポポはその場から姿を消すのである。
そして雑木林から極相であるシラカシの森になれば、そこにはクヌギもコナラもないことになる。当然、カブトムシもいないし、シュンランとかそういう花も消える。
∧∧
(‥ )生物の多様性とやらを
\‐ 維持したければ
全部ではないにしても
手を入れ続けないと
いけない
(‥ )少なくとも生物には
破壊の後に
いち早く入り込むことで
生活する連中がいる
タンポポなんかは
典型的な例だけど
僕らが目にして
喜ぶ生物は
しばしばそういう種族だ
そういうことを
忘れちゃいかんよなあ
どういうわけか自然が好きな人は、人が関与しないと無条件に自然は豊かになる、そう思い込んでいるらしい。だからおかしなもんで、森を遷移するがままに放置して雑木林が消え、カブトムシなどが消えていくと、生物種が減った! 減った! なにか自然によからぬことが起きているのだ! と保護活動家が大騒ぎすることもあるそうだ。
∧∧
(‥ )そういえば先日も見たよね
\‐ モノノケ姫は
暗い恐ろしい森が消えて
あかるい草原になる
これは安易で自然破壊な
演出じゃないのか?
という映画評論
(‥ )あの最後はそもそも
神のいる森は死んだ
そういう演出だから
その批評は
本末転倒なんだけども
でも、ここで
考えてみようじゃないか
暗い森が続く日本と、アフリカのサバンナと、動物が大きくて多いのはどっち?
どちらがより豊かだと言えるだろうか。
∧∧
( ‥)実際、森って
食べるところ少ないからね
(‥ )大部分が木材になって
いるからなあ
事実、氷河期が終わって日本が深い森に覆われた後、それまでいたトラやヘラジカは絶滅したのであった。
*2014.11.04追記:もう少し詳しい話は5ヶ月後の以下へ続く=>hilihiliのhilihili: うっそうと森が茂ったことで絶滅する