2013年8月25日日曜日
精神論は物書きのごまかし
hilihiliのhilihili: 滅びゆく世界の続き
∧∧
(‥ )ローマ帝国の西半分の放棄
\‐ これって究極的には
3世紀後半の
ディオクレティアヌス帝に
よる四分統治が起源ですかね
(‥ )この人、最後の
キリスト教大迫害を
したから、すごく悪く
書かれているんだよな
四分統治。実際にはあくまでひとつの帝国で指導者が4人いる体制だったから、四帝統治と表現する人もいるけども。
ともあれ、どこで読んだか、宮廷が四つに増えたから財政がさらに苦しくなった。そういうことを言った人もいたっぽい。
∧∧
( ‥)? でも宮廷って
今で言えば内閣と官僚を
兼ねたものですよね
(‥ )問題を抱える帝国を
統治するには必要な措置に
見えるけども、そこんとこ
具体的な資料は残って
いるのかね?
時々思うけども、いつの時代も王様とその取り巻きは、放漫財政を行った、欲深い浪費を行った、そう批判されるものだけど。
∧∧
(‥ )今の時代よりもそれは
\‐ やりやすかったし、
派手に横流しや着服が
行われたのは確かなの
でしょうけどね。
(‥ )もっと後の、
ビザンチン時代に
あったよね。
皇后がその特権を利用して
貿易を牛耳って不当に
蓄財をしているのを
知った皇帝がマジ切れして
皇后の輸送船を破壊する話
これは、少なくともある時点からはローマ帝国において、国家のトップに立つものはそんなことをしてはいけないし、国家は皇帝、皇后、皇室の私物ではない、という意識があった、ということだけども、言い換えれば、やっちゃいけないことをする人はやはりいた、そういうことでもある。
∧∧
( ‥)でも、別に不正するために
皇帝や皇后という役職が
あるわけじゃないですし
(‥ )ディオクレティアヌス帝に
話を戻せばさ、
統治者を4人、
宮廷を4つ
スタッフを4組作る
それは別に不正のためじゃ
ないよな。
不正と蓄財をするのが目的ならば、例えばの話、自分一人でスタッフを4倍にして、でも世間的には16倍の予算が必要です、といって金をかき集めればいい。わざわざ統治者の数を自分以外に増やす必要などない。
∧∧
(‥ )どうしてもそれが必要だった
\‐ そういうことですよね
(‥ )帝国の初期に対して
後期は運営スタッフの
数が増えるってことは
処理すべき案件が増えた
ということだよね
∧∧
( ‥)行政サービスが増えた
というわけですかね?
軍隊の維持費はしばしば
やり玉に上げられますよね
(‥ )蛮族は国境外から略奪に
侵入してくるから
それを撃退したり、
あるいは国境外に逃げた
蛮族に報復したり、
そういうことをずっと
やっていたみたい。
そういう状況なので、軍団の性質も仕組みも、元首制(つまり帝政の初期)の頃とはずいぶん違ったものになっていたそうだ。個々の部隊の規模が小さくなって国境線に張り付いていたらしい。そして当然、防衛のために軍隊を維持する以上、そりゃあ金もかかるだろう。そしてこれは現代で言う行政サービスに他ならない。それに軍隊のやることはそれだけじゃなかったみたいだし。
∧∧
(‥ )それを考えると運営スタッフが
\‐ 増えたり、財政が厳しくなる
のは当然でしょうね
(‥ )それを踏まえてなんとなく
「ローマ帝国の没落」
チェインバース編を
読み直したら
歴史家アンミアヌスの
指摘が目に入ったよ
曰く、378年、ゴート族との戦いでローマ軍は大敗、ヴァレンス帝戦死。この時代の歴史家アンミアヌスはローマ衰退の原因は道徳的退廃だと述べたそうだ。
もちろん、この見解を引用したチェインバースは、軍事的敗北と不道徳は関係ないっしょ と否定的に指摘しているのだけど。
*ちなみに「古代ローマの戦い」の著者であるゴルズワーシーも、この敗北は軍団の質的低下を示すものではない、とpp231でコメント。
**ただし、軍団の性質が変化していたので、相互支援の経験がなかったことも指摘している=>pp205
***詳細や原論文、一次資料などはまだ未読。
****ついでにいうとヴァレンス帝が大敗したからといって、ローマ帝国(この場合は東ローマ帝国)の国境線が一気に後退したとか、国が瓦解したとか、そういうことが起こったわけでもない
∧∧
(‥ )人間って、うまくいかないと
\‐ すぐに道徳的に退廃した、とか
初期の理想を失った、とか
言い立てますよね
(‥ )そしてリーダーが
運営スタッフを増やして
対応しようとすると、
今度は
宮廷を4つも増やした、
散財だ、散財だ
って言うのな。
∧∧
( ‥)結局、物書きって運営経験が
ないから、言う事、書く事、
精神論で、
しばしばハチャメチャだよね
( ‥)政権交代すればなにもかも
‐□ うまくいきますみたいな
煽りをかきたてて
大失敗したのも
つい最近の話だしなあ
それを考えれば、どう運営して、どれだけ金がかかるのか? それを知る事、これこそが物書きにとって大事だということなんだろう。
確かに、精神論は実のところ、ごまかしでしかないのだ。金の計算をしなくても文章をどんどん埋められる、という点において、それは物書きにありがちなごまかしでしかない。
∧∧
(‥ )でもそこを越えるのも
\‐ また難しいのですよね
(‥ )そうなんだよねえ。
疲れちゃうよねえ。