2019年12月3日火曜日
民主制が堕落して独裁制は茶番
銀河英雄伝説。独裁制の銀河帝国と共和制の同盟が150年にわたり戦争を続ける膠着した世界。しかし帝国に英雄が現れたことで状況は一気に動き始める。
英雄は帝位を簒奪し、腐敗した貴族を一掃し、救世主となる。
一方の同盟は衆愚政治家を選出したばかりに何もかもが後手、悪手に回る。そして同盟は悪の共和国として正義の帝国に敗れ、宇宙から消える。
∧∧
(‥ )これはいわば悲劇
\− だからこそ
銀河英雄伝説は名作に
なったのであると
(‥ )そして実はこの物語で
民主制が破れるのは
これで2度目なんだよな
そもそも最初にあったのは民主制の銀河連邦であった。しかし、連邦の政治は腐敗し、そこに現れた英雄へ人々は全権を与えた。英雄は独裁者となり、暴君となり、皇帝を僭称し、反対する共和派をことごとく粛清した。こうして成立したのが銀河帝国であり、そこから離反した人々が作ったのが同盟。
こうして民主制の腐敗から始まった物語は、腐敗した民主制の滅びとして終わるのである。
ああ、あの時、ちゃんと考えて投票していれば...
∧∧
(‥ )だから銀河英雄伝説は
\− 民主制と選挙の大事さを説く
名作になっている
だけどもこれ
言い換えれば茶番でも
あるんだよね
これは単なる精神論だ
(‥ )名作ってのは
茶番でなければ
ならぬものよ
人々は現実の重圧に疲れており、そこから解放してくれるものが名作であり、現実からの解放を目指す以上、名作はどうしても現実の否定となり、ゆえに茶番となる。
とはいえ、茶番な部分をはぎ取って、次のように問いかけることができよう。
民主制から独裁制になることはありうるのか?
∧∧
( ‥)そんなの普通に起こるべ
ワイマール共和国から
ナチスドイツへ
共和制ローマから
帝政ローマへ
( ‥)問題はその条件だ
−/
ワイマール共和国からナチスドイツへ。あの変化はわかりやすい。皆が望んだからだ。
∧∧
(‥ )当時のドイツって
\− 統一されてまもなくて
統一しきれないまま
WW1の戦況不利な状況で
内乱が起きて
敗北したからね
そのあげくの天文学的な
賠償金請求やルール占領だ
あの結末を知れば
強い指導者が必要だ! と
そりゃ皆さん
考えるでしょうよ
(‥ )問題は独裁制を
急に作ったことでな
日本とか、イギリスでは独裁制の歴史が長いので、独裁者が好き勝手できないようになっている。これはどんな国でも言えることだ。独裁をサポートする仕組みが整うにつれて、権力が制限される。例えばの話、専制君主の権化のように考えられているオスマン帝国のスルタンも、帝国の後期において好き勝手にできなかったし、改革もうまくいかなかった。全権委任されていないからである。
∧∧
( ‥)でもドイツはいきなり
素人のヒトラーさんに
全権委任しちゃったからね
あれ致命的だよね
軍隊の指揮権まで与えた結果
連合軍とソ連の双方に
二正面作戦を展開しちゃうしね
さすが素人
自殺行為ですな
( ‥)まあ結果はどうあれ
−/ 皆が望めば独裁制が
誕生することは
分かるよね
ローマ帝国の場合はまた状況が違うけども、皆が望んだ点では同じだろう。
共和制ローマにおいて大統領(執政官)に選ばれるには、戦勝する必要がある。言ってみれば、戦争が選挙なのだ。戦争に勝てば選挙に勝ったと同じ。
∧∧
(‥ )問題は本来なら
\− 外征のはずの戦争が
内乱になっちゃった
ことでね
(‥ )選挙シーズンが決まってる
わけでもないから
年中戦争ときたもんだ
困ったよねえ
解決は単純であった。
選挙があるから戦争になるのなら、独裁制にして選挙をなくせば良いじゃない。
∧∧
( ‥)ローマの帝政も皆が望んだ
結果であるね
( ‥)だから皆が望めば
−/ 民主制から帝政に
なるんだよな
ドイツ第三帝国は未熟な国家がまとまろうとして独裁制になった。
ローマ帝国は戦争という選挙をなくすために独裁制になった。
∧∧
(‥ )これを考えると堕落して
\− 独裁制になったという例は
見当たらないのでは?
銀河英雄伝説おかしくね?
観念論すぎね?
(‥ )だから銀河英雄伝説は
茶番になるし
名作になるんだろ?
実際、この状況はどうにもならないから民主制から独裁制になるしかない... 皆がそう決断せざるをえない世界の物語。このような物語は、現実的ではあるが名作ではないだろう。