2017年11月24日金曜日
誤字誤字木目
原稿を仕上げた後、それが本になるには校正をしなければならぬ。
まず原稿を実際の本の形式で組んで、それを印刷したゲラが出る。最初なので初校ゲラ。
∧∧
(‥ )それを読んで間違いや
\‐ 誤字脱字などを探して
赤で書き込んで
それを出版社に返す
印刷した紙でやる場合も
あるし
データでやる場合もある
(‥ )俺の場合
両方だけどね
ともあれ、こうした赤字の直しを踏まえて直して再校ゲラが出る。それを再び見て、誤字脱字、間違いなどがないか、改めて調べ直す。
∧∧
(‥ )著者や翻訳者
\‐ あるいは監修者や編集者
社内の校閲者や
社外の校閲者
何人も何回も読むのに
それでも間違いはどこかに
ひそんでるよねえ
(‥ )人間は文章を読む時
実は今読んでる文章の
さらに先も読んで
次にこう書いてあるから
今のここには
こう書いてあるはずだ
そういう風に
推論をまじえて
読み込んでるからな
要するに、人間はネタバレを読むから文章を正しく読めるのだ、とも言える。
しかしこれ、弊害がある。誤字脱字を脳内で補正して正しく読んでしまう場合があるのだ。だから何度も読んだのに誤字脱字に気がつかないということが起こりうる。
とはいえ先ほどのものは奇妙であった。
読んでいる時、
モクメンシャチホコ
という誤字が目に飛び込んできた。後ろから読み始めて、本の冒頭の目次までたどり着いた時のことである。人間は原稿を前から後ろに読むが、このせいで疲れて後ろの方にある誤字を見落としてしまうことがある。だから一回前から読んだら、今度は後ろから読むのだ。
∧∧
(‥ )そうして見つけた誤字
\‐ モクメンではなくモクメですな
シャチホコガの仲間で
翅に木目模様がある
つまり
モクメシャチホコが正しい
( ‥)目次に間違いがあるなら
‐/ 他のページはどうかな?
モクメシャチホコを紹介するページに間違いはなかった。だが、巻末の一覧表に間違いがあった。ここもモクメンシャチホコになっている。
よしでは赤を入れてデータ化して送信しよう。一覧表の間違いを直してデータ化し、次に目次の修正に取りかかる。
そうして目次を読み直すと、そこには
モクメシャチホコ
そうあるだけで、誤字などどこにもなかった。
∧∧
( ‥)...誤字確かに見たよね?
(‥ )ああ見たよ
はっきりと見た
モクメンだった
だが改めて見直すと、誤字などどこにもない。あるのは、誤字が他にあるはずだとおもって探して見つけた、巻末の誤字だけである。
∧∧
(‥ )なんだったんだ?
\‐
(‥ )正しい綴りを
読み間違えて
誤字だと思い込んだ
他にもないかと探したら
本物の誤字を見つけた
それだけのこと
なんだろうけどな
だがもしかしたら、脳は、
そういえばさっきモクメンシャチホコという誤字をモクメシャチホコと正しく読んでしまったよな…
そんなことを考えていたのかもしれない。それが意識下から上がってきた結果かもしれぬ。
∧∧
(‥ )なんだかなあ
\‐
(‥ )脳は仕組みだからな
仕組みのくせを
意識してないと
間違いを見落とすよね
モクメの後にシが続くのもよくないかもしれぬ。モクメシがモクメンに見えるし、モクメンをモクメシとちゃんと読んでしまうことも起こりえよう。
もちろん、ゲラはpdfファイルなので検索もかけている。しかしpdfファイルは時として検索がうまくいかない場合があり、そのために誤字を見落とす場合がある。検索をかけた上で目でも確認しなければいけない。
そしてpdfファイルと同様、脳も仕組みだ。ここにはそれぞれのくせがあり、そこに落とし穴がひそんでいる。