2016年4月10日日曜日
電気的な吸血鬼はいかにおばさんキャラであるべきか
SFっていうのは科学のフィクションだ、と銘打っているけども、実際には黒魔術を基本としている。
∧∧
(‥ )ヴァン・ヴォクトさんの小説
\‐ 「宇宙船ビーグル号」に登場する
ガス状生物アナビスは
死に逝く生物の神経から
放出される電気を食べて
生きている
(‥ )これ
あからさまに
吸血鬼だよね
あるいは海外のwikiなどでは事実上、銀河サイズのウィル・オ・ザ・ウィスプであると書かれている。
=>The Voyage of the Space Beagle - Wikipedia, the free encyclopedia
この文章を書いた人が誰かは知らぬが、いわんとすることは分かる。確かにアナビスはウィル・オ・ザ・ウィスプ、瘴気の怪物そのものであろう。沼などの上で輝く鬼火で、人を誘い込んでは殺す西欧の怪異。
∧∧
( ‥)ある日、沼から生まれた
ささやかなガス体である
アナビスは風のように舞って
生き物を殺し
その魂を電気的に食らって
ついには銀河サイズに成長し
獲物が多い星を作るため
知的生物の都市の上に
ジャングルを
テレポートさせて押しつぶし
その銀河すべての知的生物を
根絶やしにしてしまう
(‥ )まさに銀河サイズの
ウィル・オ・ザ・ウィスプ
だからというわけではないが、アナビスのあり方は科学ではいささか正当化できない。イオンの電位差で生じている神経と魂を、ガスの帯電に変換するのはいささか無理だろうし、そもそもガスのような無秩序な存在では、生物のような複雑な構造は作れまい。
∧∧
(‥ )とはいえ銀河サイズの鬼火が
\‐ 魂を電気的に食らうと
設定した時
それは脅威の敵となって
主人公達に立ちふさがり
物語を進め始めるのである
(‥ )SFが実際のところは
スケールの大きな
怪異譚である証拠でもあるね
そしてこれ、読み手である我々の世界観が反映された結果でもある。
∧∧
( ‥)魂を食べれば電気的な魂は
その身を存続できるだろう
そういう単純な世界観
(‥ )吸血鬼が血を吸う一方で
不滅の存在だというのも
そういう世界観の反映
なのだろうな
魂が電気的なものである。そういう認識が誕生する以前、血に霊性があると信じられていた。血を使う儀式はしばしばあるし、スッポンの血を飲むような回春術もあるし、そもそも血を失うと人が死ぬことは良く知られた事実なのである。
∧∧
(‥ )血が魂の通貨であると
\‐ 考えられている証拠ですなあ
(‥ )だから血を吸う吸血鬼は
不滅の存在だし
電気的な魂を食らう
電気的な存在も
実際には
現代版の吸血鬼だと
考えるべきだよね
そしてこれが我々の認識である以上、物語もここから逸脱するわけにはいかない、ということになる。
∧∧
( ‥)どんなに筋が通らなくても
電気的な吸血鬼は
動物を殺してその電気を
己に注ぎ込みながら
ぷはー この一杯のために
生きてるねえー
と言わねばならぬのである
(‥ )ちょっとお馬鹿で
見た目は若いのに
おばさんキャラで
あることが
望ましそうだよね