2015年10月30日金曜日
宇宙人のデザイン
仕事のために宇宙人のカットを描くことになった。
そのことを人に話した時、
∧∧
( ‥)あなたはこう言った
宇宙生物なんて
進化の歴史が
地球の生物とは
全然違うのだから
本当だったら
想像できるわけがない
(‥ )相手の人は
そりゃそうだろうね
と答えたよ
その時は当然のこととして何も思わなかったが、今にして思えば、これ、かなり物をよく分かっている人の返答だ。
*ちなみに返答の相手は学校の司書であり、あるいは大学の教授であった。
∧∧
(‥ )一般的には
\‐ なんだかんだいって
宇宙人は人間と
似ているだろうし
宇宙生物も
地球の生物と
良く似ていると
思ってますからね
(‥ )違う世界だから
動物も人も違うだろうとは
考えるのだけどな
”進化の歴史が違うのだから
想像のしようがない”
そういう発想は
一般にはないよね
人間は古くより、既知の世界の外側に奇怪な異国があると考えた。そこには一つ目の人々や、首がなく腹に顔を持つ部族、あるいは獣の頭を持つ人間がいる。そういう想像と噂話をまことしやかに信じたのである。
これはめくるめくイマジネーションではある。
だがしかし、同時にこれは、異国だから異人だろう、というかなり単純な推論であるし、その想像は簡単なコラージュの域を出ない。
∧∧
( ‥)実際には
生物は歴史で形作られる
(‥ )例えば人間の耳は
2回の大量絶滅の木霊だな
1回目はペルム紀末期の時。この時、哺乳類の系統は大打撃を受け、続く三畳紀の間に地上の支配権は爬虫類のものとなった。哺乳類の系統は夜世界の動物となり、外耳を発達させた。
2回目は白亜紀末期の時。この時、陸海空の支配者であった爬虫類は大打撃を受け、鳥以外の恐竜は滅び、地球は哺乳類のものになった。
∧∧
( ‥)そうして
あなたたち猿は
本来は夜間仕様である
外耳を持ったまま
昼の世界に進出し
外耳を退化させた
( ‥)人間の耳だけでも
‐/ これだけの歴史が
隠されているのだ
それを考えると、他の星の生物を想像するなど不可能であること明白。
耳たぶのような小さな何気ない器官でさえもこれだけの歴史がある。生物はかように歴史の集積である。そして歴史の集積を再現できない以上、他の星の生物など、あてずっぽうに想像することすらできない。
SF作家が一生懸命考えた宇宙人、デザイナーが必死に考えだしたモンスター、これらのいずれもが歴史というものがまったくない薄っぺらな代物になるのは当然。
そしてこれが人の想像の限界なのだ。
ゆえに、宇宙人を描くことなどまったくの不可能ごと。
∧∧
( ‥)でも仕事としては
やらねばならぬ
(‥ )こういう時に
何が出来るか?
想像できないんだよ
だから描けません
御免ねー
...では駄目だよね
読み手が求めるのは宇宙人の具体的な姿なのだ。ではどうする?
∧∧
(‥ )まあ答えは簡単だね
\‐
(‥ )同じ条件を満たしている
デザインでも
起源が違うと全然違う姿に
なっちゃうよ
そのことが分かる
デザインであればよろしい
知的生物は重い脳を支えるために二本足で立つだろうし、ものを操作する二本の腕を持ち、距離感を掴めるように二つの目が正面を向くはずだ。
これは作家ウェルズも主張したことでもある。これゆえ宇宙人は人間と似ているはずだ。そう考える人もいる。
∧∧
( ‥)そんなことあるわけ
ないじゃん
(‥ )二本足、二本腕、二つの目
この条件を満たしているが
人間とまるで違うデザインは
無数にありうるからな
そのことが読者に分かる宇宙人を描けば、それで目的は達成される。