そういえば、昨日は妙な夢を見た。ここは地獄です。そう誰かが言うのだが、いやいや、どう見たってこれは普通の夏ですよ。そういうありがちな暑い光景の中をただひたすら歩くのである。空は青く、太陽光線は強烈でまばゆかった。建物は虚ろで白く、アスファルトは焼きついていて、空気が陽炎で揺れている。それでもただの普通の夏だ。おかしなことがあるとすれば、どこへいっても、それが車道であっても建物の中であっても、人がどこにでも、ただしまばらにいるということだった。そして誰も彼も適当に歩いていて、目的は無いようだった。人工物は例外無くあちこちが壊れていて、人の有り様はどこへいっても同じであり、風景自体は変るがいずれの場所も雰囲気は同じだ。そして車は走っていなかった。暑くて苦しい、という感覚はあるが、それ以外には何も感じないまま、ただ歩く。
∧∧
(‥ )あなたは夢の中では
\‐ いつも歩いているか
電車に乗っているよね
(‥ )どこへいけば良いのか
分からないのかな?
まあ、夢の世界で行く場所があるのだとしたら、それはそれで奇妙ではある。
ああ、そういえば、蝉の声は聞こえなかったな。そんな、苦しいだけの静かな世界