2014年4月18日金曜日
キリンの長い首とオカピの短い首
伝説的に曰く
キリンの首は長く、頭まで血を送るには血圧が高い必要がある。一方、首を下げると、高い血圧に、さらに血の重さも加わる。そこで、キリンの首の血管には、脳にそのような圧力が加わることを防ぐ弁があるという。この仕組みがなければキリンの長い首はありえない。
∧∧
(‥ )でもキリンの仲間には
\‐ 首が短くてもこの弁を
持つものがいるという
(‥ )だから、首が長くなる前から
首が長く進化できるように
なっていたのである
これは進化の謎だ
自然淘汰説は間違いだ
進化論は間違いだ
そういう意見だね
ああ、しばしば言われることではある。
しかし、考えてみればキリンのように異様に長いだけでなく、高い首を持つ動物は珍しい。
というか、そもそも他にいない。
∧∧
(‥ )化石種を見ても、哺乳類で
\‐ 首をあれだけ極端に
伸ばした動物はいないですよね
(‥ )大概は、ゴリラみたいに
上半身全体を起こした
姿勢になって
腕を使って枝を引き寄せる
そういうのだよね
あるいは体自体を
巨大化させて高い場所に
頭を届かせる動物に
なるんだよな
でっかいラクダのような種族もいるが、彼らの首の姿勢はやっぱりラクダだ。キリンみたいに首だけを、しかもあれほど高くした姿勢の動物というのは、ちょっと思いつかない。確かに哺乳類以外まで範疇を広げると、恐竜の竜脚類のように首が異様に長い植物食動物がいる。しかし、あれも首だけを高くもたげたものではない。彼らの首はむしろゾウの鼻のようなもので、あちこちに動かす造りである。
∧∧
( ‥)それを考えると
特異な血管の弁を
持っていたから極端に首が
伸ばせた、という
結果論でしかないのかも
しれない
( ‥)その場合、キリンは
‐□ 祖先が特異な弁を
持っていたから、
あんな異様な姿に
進化できたというだけの
話になるんだよね
*これはいわゆる前適応という説明だ。つまり、祖先が持っていた適応が、後で別のことに流用される、というものである。この場合、それがその目的で使われる前にあった(ように見える)のは単なる結果論でしかない。
**例えば、人間はキーボードを自在に叩ける。しかし、キーボードを持たないサルも同じことができる。霊長類の手は、人間がキーボードを叩くようになるために、あらかじめ進化したようではないか! という解釈は結果論でしかなく、まっとうな理屈ではない、という意味。
ところでしかし、では、そもそもキリンが血管に持つというその弁はなぜ進化したのか?
∧∧
(‥ )オカピさんは一応、他の
\‐ 反芻類と比べると首が長いと
(‥ )孫引きでしかないが
オカピの頸静脈は
キリンのものと
良く似ているそうだが
他の血管はキリンほどの
複雑さは欠いているそうだ
*リンク先のpdfファイル2ページ目
右列第4段落目を見よ=>www.science.smith.edu/msi/pdf/i0076-3519-422-01-0001.pdf
解剖の報告とか読んでいないからなんとも言えないけども、しかし、これを見る以上では
∧∧
( ‥)これ、単純に、
首が何らかの理由で長くなった
その過程で、
血の重みで血流がどうかなる
ことを防ぐ器官が
ある程度、発達した
そこからさらに首が伸びた
キリンではその仕組みが
さらに発達した
それだけの話なんですかね?
( ‥)人間も静脈には弁が
‐□ あるわけだよね?
それを考えれば
普通に、自然淘汰で
じょじょに進化した
それだけの話になりそう
だけどね
まあ、いずれにせよ、調べるべきことなのだけども、はっきりしているのは、冒頭の疑問はやはり単なる都市伝説の域を出ないのではないか? ということである。
∧∧
(‥ )キリンさんの長い首は
\‐ 性淘汰だって意見も
あるんだよね
(‥ )意外と正しいかも
知れないけどね
∧∧
( ‥)なんでそう思います?
(‥ )あんな変な生き物、
地球の長い歴史でも
見た事ないだろ?
キリンのようなちんちくりんな動物は地球の歴史上で他に見当たらない。それを考えると、あの姿は合理的なものではない、と考えることもできる
∧∧
( ‥)長い首を可能ならしめる進化が
その過程自体はありきたりで
じょじょに調整されながら
進行したものであっても
(‥ )進化を進める淘汰圧、
進化の原動力自体は
自然淘汰のような
合理的な要請ではなかった
のかもしれない
そう考えた方が合理的かもしれない。
*注:自然淘汰のような合理的な要請ではない:自然淘汰のように性能や結果の優劣が問われるのではなく、もてる、もてないに基づく性淘汰はその意味では合理性に欠ける。あのちんちくりんな姿は性淘汰の結果かもしれないよ、と言われると、むしろ違和感がない、という意味。一応、注釈しておくと、性淘汰はダーウィンが考えたもの。