2013年7月3日水曜日
偉大で凍り付いた才能
先日、片付けものをしていたら古い絵が出てきた。
∧∧
(‥ )あなたの仕事の初期の絵
□– ですね
(‥ )ああ、へただな、
なってないね。
まるで駄目だな。
もちろん、こういう感想は仕事をやっていれば誰でも当たり前なんだけども。それより意外だったのが。
∧∧
( ‥)こちらは当時、一緒に仕事を
–□ していた人のイラストですね
原画ではなく、コピーですが
(‥ )んんんんんんん....
こんな絵だったか。
彼はおそろしく絵がうまかった。
∧∧
( ‥)当時のあなたは彼を見て
すげー、と思っていた
ものですよ
( ‥)それ自体は同じだ
–□ 今見てもすげーと
思うからね。
これを彼は
さらっと描く。
病的なほどに
天性の才能だよね。
ここまで描ける奴は
そうはいない。
ただ、改めて見て、んんんん...と思ったのは。
うまいのだけど、このイラスト、いつ、どんな場所で使うわけ? という疑問。
∧∧
(‥ )リアルイラストでしょ
□–
(‥ )というかね、
コントラストが
弱いのだよな。
あと、少し無駄に
描き込みすぎだと思う
その一方では肝心な背景に
草一本ないのはどうかな
∧∧
(‥ )もう少し、幾本かだけでも
□– 線をしっかり描けと?
(‥ )人間の認識って漫画を
読めば分かるけど、
かなり抽象的だよね?
わずかあれだけの線で
色々なことが伝わる。
実はこれ、深刻な話でな。
言い換えれば、
いくら描き込んでも、
認識の琴線に触れるような
強い線がないと
もへーっとした印象に
なっちまう。
そういうことだろ?
うまいのになあ。恐るべき才能だと思うのだけども。
∧∧
(‥ )彼も仕事をこなせば
□– そういうことが
うまくやれるように
なったのですかね?
(‥ )仕事は数だよ。
無駄な部分をはぶき、
手抜きする所は抜き、
肝心な場所に
手数を集中投入する。
こういうことは
数をこなさないと
分からんもんだ。
だけど彼、仕事をほとんど
しなかったよね。
そして事実上、消えた。付き合いはすでに無いし、最後に見た絵はあいかわらずうまいが以前のものと同じだったと思う。まるで凍り付いたままのように。