2013年6月5日水曜日
すべての人に良き旅を
( ‥)先日な、ある人に
言われたのだ
∧∧
( ‥)ああ、あれ?
お前のような特異な仕事をしている人間は他人と一緒にいるべきではない。相手次第によっては脳が鈍くなる。仕事が出来なくなるぞ。
∧∧
( ‥)別にあなたに限ったこと
ではない、とも言えますけど
事実でしょうね。
(‥ )人間、誰しも一緒にいる
相手や会話から影響を
受ける。影響次第で
良くも悪くもなる。
当然のことであるし、
この仕事に限ったこと
ではない。だが、
深刻な事実だろうな
そこで思い出した。先日、しばし滞在した先ではNHKのラジオがずーっとかかっていた。
∧∧
( ‥)あなたはそれが妙に
癇に障ったと。
( ‥)あれさ、何の意味があるの?
芸人ががなりたてている。僕に注目して。
パーソナリティーが話題を振っている。私の采配を見てよ。
アナウンサーが小話をしている。私のアドリブを聞いてね。
落語家が芸を披露している。これが伝えられた技です。
(‥ )これ、何?
これ、どうすればいいの?
∧∧
( ‥)何って...あなた、それも
分からなくなったのですか?
地方を尋ねてご当地の自慢とアピールをする番組があったらしい。
ここはパワースポットで歩くだけで元気が出ます。
このこだわりの野菜。これは健康に良く、色々な病気に効きますよ。
(‥ )なあ、なんだ? この
ゴミかす情報は?
∧∧
(‥ )人間は基本的にトンデモで、
\– 科学と因果関係の推論が
苦手だってことでしょ?
あるいは疑似科学こそ、
人の理解であり、
心理の琴線に触れるって
ことでしょうね
確かに言われた通りであった。
最低限、人と一緒にいるべきでないことは分かった。
最低限、人と話をすることは無駄だということは分かった。
人間から搾り取っても何も得るものはない。
ならば探せ。
∧∧
( ‥)でも、一人旅でも駄目、
なんですよね
( ‥)ある人はその道の
エキスパートだった
ずっとその道を歩いてきて、その道筋では無敵だった。だが無敵なだけだった。いや、無敵だと思い込んでいただけだった。実は本人は認めていないが、致命的な間違いがあるのだ。
それだけでない。世界はそもそも”その道”だけじゃない。やがて変化が周囲から押し寄せるようになった。彼はそれに対抗している。彼には自信があるようだった。なぜって、道筋の基礎の基礎を彼ほど極めた人はほとんどいないから。少なくとも、本人はそう思い込んでいる。これは半分は正しいだろうが、
∧∧
( ‥)半分は単なる勘違い。
( ‥)彼はね、細かく知っている
”だけ”なんだ。
個々の勝利を積み重ねても
大局は負けだということが
あるように、小賢しい勝利を
いくらもぎとっても、
無駄なことがある。
負けを挽回し切れない
賭け事みたいなもんだな。
彼はずっと一人旅だったからね。そう評した人がいたけども、確かにそうなんだろう。彼はもはや知っているだけの崩れゆく老いた残骸になりかかっている。
∧∧
( ‥)あなたはどうします?
( ‥)そうねえ、先を走る人の
背中を見やりながら、
一人旅、かな。
前衛は彼らにまかせよう。そうなのだ。座標と標高さえ分かるなら自分の位置は三次元的に把握できる。前衛を視界に収めることが出来ていれば、相対的な位置も進むべき道も未踏の丘も把握できる。座標も標高の計測の基準も彼らに合わせて同じものにすれば良い。
∧∧
( ‥)反対に、座標と標高を
俺様メートル、俺様座標で
計測するだけで、しかも
そこに規則性がない場合。
(‥ )賢しい人間ってさ、
そういうことすんだよな。
これで良い、あれでいい、
臨機応変、柔軟に
適当なのは良いけども、
規則性がないと
尺からメートルに
換算することが
出来ないのと同じで
既存の知識に対して
自分の座標を
合わせられない。
そうなると遭難は
必然だよ。
∧∧
( ‥)そして、それが
彼の一人旅でしたか
( ‥)多分ね。さて、自分は
–□ どう進もうかな
すべての人に良き旅を。