2012年8月8日水曜日
知的生物の進化の果て
*の一部続き
H.G.ウエルズ。「宇宙戦争」では進化の過程により、内臓が退化し、事実上、頭脳と感覚器、操作に必要な指だけで成り立つ存在となった純粋知性体たる火星人を描き、「タイムマシン」ではイギリスの労働者階級と貴族階級がまったくの別種に、しかもどちらも知性が退行した生物となっている世界を描いた。
∧∧
(‥ )使わない器官は退化し
\– 使う器官は発達する
用不用説を用いた
世界観なんですよね
(‥ )ダーウィンも用不用説を
取り入れているって
一般には信じられているから
ウエルズの進化観が
おかしいのはむしろ当たり前
なんだろうけど
*ダーウィンが用不用説や獲得形質を認めたのは、実際には集団遺伝学とメンデル遺伝が無い時代における苦肉の問題解決とみるべきだと思う。そこが彼の異様なところで時代に先んじた部分ではなかろうか。そういう意味合いではウエルズの進化観は根本的におかしいし、あるいは一般人が思い描く誤解そのままだと言える。(以前書いたものはこっち=>* )
∧∧
( ‥)考えてみれば
タイムマシンでも性淘汰は
ぜんぜん考慮されていない
のですよね
(‥ )人間の知能って性淘汰の結果
かもよって仮説や理論から
見れば、安楽な生活している
貴族の子孫が頭弱くなって
いるってのは奇妙な結論
だよね。
彼氏、彼女にもてようと、人は頭を総動員する。そのことを考えると
∧∧
( ‥)貴族の子孫が知性を退化
させているっておかしな
話ですよねえ。もてるために
今からは想像できないような
高度で奇妙で、複雑で
トンチンカンにも見える
会話力やアプローチ術を
持っていてもおかしく
ないでしょう
( ‥)性淘汰でなくても、人間は
–□ 集団内部の駆け引きで知性を
発達させている、という見方
もある。そういう仮説から
考えてもおかしな設定よな
というか当時の英国における貴族社会自体、あらゆる駆け引き、策謀、会話術があっただろうことを考えてもおかしな世界観だと言える。そもそも貴族社会の趣味の延長がエスカレートしていくうちに色々な科学と成果が花開いたことを考えてもおかしい。
やっぱウエルズはばりばりの用不用説論者、というか一般的な誤った進化観の持ち主だったということなのか?
∧∧
(‥ )でもそれだけでなくて
\– ドラマとして強烈で劇的だ
そういう設定と舞台装置でも
あるのでしょうね
(‥ )実際、宇宙戦争とタイムマシンは
知的生物の進化の果てとして
まったく逆のヴィジョンを示して
いるわけだしね。
かたや、純粋知性体となり、機械を事実上の肉体として自在に駆り立てる侵略者、かたや固定された社会制度の中、ただただ与えられた状況をこなすだけで知性すら失い、快楽と迷宮の園にすむ退化したおとぎの末裔たち